ほぼ毎日韓ドラを見ている私がハマったドラマ、泣けたドラマ、おすすめドラマは多々ありますが、
中でも「うわ~、これよくドラマにできたな…」とか「これよく撮ったなあ…」と衝撃を受けた社会派ドラマを紹介します。
社会派ドラマといっても、ヒューマンドラマ的な雰囲気ではなく、闇を深くえぐっているドラマに厳選しています。
どれもかなり重いので、心に余裕がある時にご覧ください。
『ある日~真実のベール』
公開 / 公開日 | coupang play / 2021.11.27. |
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話数 / 年齢制限 | 8話 / 16+ |
原題 | 어느 날(ある日) |
監督 / 脚本 | イ・ミョンウ / クォン・スンギュ |
キャスト | キム・スヒョン、チャ・スンウォン、キム・ソンギュ、イ・ソル、キム・ホンパ、キム・シンロク、ヤン・ギョンウォン |
簡単なあらすじ | 車に乗せるべきではなかった。家に入らなければよかった。逃げるべきじゃなかった。でも、あなただったらそうできただろうか? たった一晩で平凡な大学生だったキム・ヒョンス(キム・スヒョン)は、殺人事件の容疑者になってしまう。 そんな彼に三流弁護士シン・ジュンハン(チャ・スンウォン)が手を差し伸べる― |
冤罪をテーマにした本格社会派ドラマ。
警察、検察、弁護士、マスコミ…みんな自分の利益・功労が一番で、何が真実なのかなんて本当は考えていないんじゃないかと思うほど、それぞれの立場で勝手にストーリーを作っていく。
事件の中心にいるヒョンスの話には誰も耳をかさずに。
とにかく暗い、重い、やるせない…
キム・スヒョン演じる主人公がどんどん闇に堕ちていく―
効果音的なBGMがほとんどで、そこへ演技派俳優たちの迫真の演技が加わるとまるでドキュメンタリーのようなリアルさ。
なんといってもキム・スヒョンの演技がすごすぎる!!!
小鹿のようにおびえる姿や、大声で泣き叫ぶのはリアルすぎて泣けてくるし、精神的に追い詰められてもう自分でもよくわからなくなってくる錯乱状態、刑務所生活で生き残るために彼自身が変わっていく様子には目を奪われるはず。
救いはチャ・スンウォン演じる弁護士(唯一の笑いを提供)と刑務所で彼に目をかけてくれたキム・ソンギュ。
もしかしたら、彼のように冤罪で捕まっている人もいるかもしれず―
たとえ後から無実が証明されたとしても、もう前の自分には戻れない。
見るのが辛すぎてやめようかと思ったものの、決着を見るまで、本当の犯人を知るまではやめられず、結局一気見してしまった作品。
『D.P.-脱走兵追跡官-』
公開 / 公開日 | Netflix / 2021.08.27. |
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話数 / 年齢制限 | シーズン1・2 ともに6話 / 16+ |
原題 | D.P. |
監督 / 脚本 | ハン・ジュニ / キム・ボトン、ハン・ジュニ |
キャスト | チョン・ヘイン、ク・ギョファン、キム・ソンギュン、ソン・ソック、チョ・ヒョンチョル |
簡単なあらすじ | 脱走兵を捕まえる「軍務離脱逮捕組 D.P.」のジュノ(チョン・ヘイン)とホヨル(ク・ギョファン)が、様々な事情がある脱走兵を追いかけて、今まで知ることができなかった現実に直面していく… |
今までタブーとなっていた軍隊の闇を描いた作品。
私が韓国に来てからも何度か軍隊で事件があり、ニュースになっていたんですが、軍隊に行ったことがない人でもなんとなく感じ取れる軍隊のダークサイドをまざまざと見せられて、「もしかして旦那や知り合いにもそんなことがあったんじゃないか―」なんて思うといたたまれず…。
閉ざされた軍隊という組織の中で、長年続いてきたと思われる悪習、上下関係から”いじめや暴力”に発展、それが脱走兵、自殺や事件の元凶になっている―内容はダークで重く、深刻。
(みんなそうとは限らないですが、脱走兵の話なので中でも極端なケースが揃ってます)
日本人にはなじみのない軍隊の話ではあるものの、会社や学校などの組織や集団も同じことが言え、他人事ではなく考えさせられること間違いなし。
原作はウェブトゥーンですが、作家が実際にD.P.で脱走兵を捕まえていたというから、そのリアリティはまぎれもなく、監督が「どこまで見せるか」最後まで悩んだそう。
一方で、脱走兵の事情を探り、推理&追跡していくおもしろさや、D.P.コンビの掛け合い、テンポよく進んでいくストーリーに見始めたら一気見してしまう全6話。
泥臭く陰湿な内容があっても、ほどよく現代的なスタイリッシュさがあって、エンタメとしても成立しているのがすごい!
特に5~6話の疾走感と衝撃に加え、最終回はエンドロールの最後に決定的なシーンがあります(ドラマの設定である2014年に実際に軍隊で起きた事件を想起することに気づいたら、鳥肌)
そしてこの事件はシーズン2へ、さらに深くシリアスになっていきます。
シーズン2はさらに余韻が残る演出に加え、傍観している国に責任を問う骨太な内容で、「よくこれをドラマにできたな…」と感嘆せざるを得ない社会派ドラマの逸品。
- 第58回 百想芸術大賞 TV部門 作品賞(ドラマ)
- 第58回 百想芸術大賞 TV部門 助演男優賞(チョ・ヒョンチョル)
- 第58回 百想芸術大賞 TV部門 新人演技賞(ク・ギョファン)
『人間レッスン』
公開 / 公開日 | Netflix / 2020.04.29. |
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話数 / 年齢制限 | 10話 / 16+ |
原題 | 인간수업(人間授業) |
監督 / 脚本 | キム・ジンミン / ジン・ハンセ |
キャスト | キム・ドンヒ、パク・ジュヒョン、ナム・ユンス、チョン・ダビン |
簡単なあらすじ | 目立たないが優等生であるオ・ジス(キム・ドンヒ)の夢は、高校を卒業し、大学に行き、就職、結婚、普通に生きて普通に死ぬこと。そのために必要なお金は9000万ウォン。 両親が家を出て、1人で生きていくために必要なお金を闇の仕事で稼ぐジス。課外活動で一緒に行動することになったギュリ(パク・ジュヒョン)は、ジスの秘密を嗅ぎつける― |
未成年犯罪をテーマに、犯罪に手を染めた高校生の闇を描く作品。
スタイリッシュな演出と、テンポのよい展開で、どんどん引き込まれますが、進めば進むほど引くに引けなくなっていく…
フィクションとはいえ、少年犯罪をせざるを得ないような環境と、彼らの立場も援護したくなるような展開に見ていると胸が苦しくなること必至。
時々もどかしすぎてイライラしつつも、この先どうなるのか見届けるまではやめられず、一気見。
犯罪は悪いとはいえ、親に頼れない高校生はどうやって生きていけばいいのだろう?
先生や警察が手を差し出そうとしても、彼らは問題の根本的な解決にならないことを知っている。
いや、それでも誰かに頼ることができたら…
特にジス演じるキム・ドンヒのあどけない高校生の表情が印象的で、人気者のギュリを演じるパク・ジュヒョン、不良のギテを演じるナム・ユンスなど、若手俳優の演技が光ってます。
10代でも生きていくために早くも社会に放り出され、闇を知ってしまった彼らの行く末は…
毎回エンディングに「困難な状況の青少年を知っていたら、1人ではないと伝えてください。」というメッセージと共に韓国での相談先が書かれているんですが、これが本当に胸に刺さる。
(日本語字幕はちょっとニュアンスが違います)
ラストに映し出されるソウルの風景。この都会の中に、この世界のどこかに、同じように苦しんでいる少年少女がいるかもしれません。
- 第57回 百想芸術大賞 TV部門 女性新人演技賞(パク・ジュヒョン)
Netflix『未成年裁判』
こちらも少年犯罪を題材にしたドラマ。
主人公は「少年犯罪を嫌悪している」と公言する少年部の判事(キム・ヘス演)。実際に起きた事件をモチーフにしたものもあり、どの話も見るのが辛くなるほど重く、気が滅入るのに一気見…。
判事だけでなく、被害者、加害者、家庭環境など、多角的に描かれているので、複雑に絡んだ事件自体は全貌が明らかになるものの、少年犯罪への処罰や更生、被害者の癒えない傷など問題を投げかける作品。
- 第58回 百想芸術大賞 TV部門 脚本賞
『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』
公開 / 公開日 | Netflix / part1 2022.12.30. part2 2023.03.10. |
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話数 / 年齢制限 | 16話 / 16+ |
原題 | 더 글로리(ザ・グローリー) |
監督 / 脚本 | アン・ギルホ / キム・ウンスク |
キャスト | ソン・ヘギョ、イ・ドヒョン、イム・ジヨン、ヨム・ヘラン、パク・ソンフン、チョン・ソンイル、キム・ヒアラ、チャ・ジュヨン、キム・ゴンウ |
簡単なあらすじ | 高校時代、壮絶ないじめで魂まで壊されたムン・ドンウン(ソン・ヘギョ)は、加害者たちにまた会うことを誓い、長い歳月をかけて綿密な復讐の準備をしていた。 そして18年後、いじめのリーダー格だったお天気キャスターのパク・ヨンジン(イム・ジヨン)の前に姿を現す― |
壮絶な校内暴力、いじめ描写で社会的に大きな反響をもたらした作品。
このドラマが公開されてから、少なくとも韓国ではいじめの暴露、告発が増え、被害者が声を上げる契機を作ったドラマともいえます。
ヘアアイロンでのいじめがあまりに話題になったため、個人的には見る前から辛すぎて見るに見られずに避けていた作品で、心の準備に1年以上かかりました…
(実はこのヘアアイロンのいじめと言うのが実際にあった事件(!!)に似てるというのも話題になり、このドラマに背中を押されて被害者がテレビ番組に出演しています)
ともかく、壮絶な暴力描写には目をそむけたくなりますが、いじめる方もいじめられる方も演技がすごすぎる!!リアリティがハンパないです。
見ているだけで憎たらしくなってくる悪役、とくにお天気キャスターを演じたイム・ジヨンは初めての悪役というのが信じられないほどハマってて、あの笑い方、目つき、高飛車な態度に舌を巻くほど。(しかもイ・ドヒョンと熱愛だなんて~)
とにかく主人公の高校時代が痛々しく、とことん暗く絶望的なのですが…、物語はその復讐を始めるところから一気に進んでいき、一体どうやって復讐するのか気になってしかたない。
復讐する方もされる方も、ノンストップで次の手が打たれるので、結局、見始めたら止められずに一気見…
脚本は『トッケビ』や『太陽の末裔』で有名なキム・ウンスク作家ですが、今までにない復讐ものでありながら、人物設定や描写、展開がやっぱりおもしろい。
壮絶ないじめに胸を痛めつつも、復讐にきっちり勧善懲悪を下す爽快感あり。
要素的にドロドロ、復讐系が好きな方はハマることまちがいなし。
- 第59回 百想芸術大賞 TV部門 作品賞(ドラマ)
- 第59回 百想芸術大賞 TV部門 最優秀女優賞(ソン・ヘギョ)
- 第59回 百想芸術大賞 TV部門 助演女優賞(イム・ジヨン)
『マスクガール』
公開 / 公開日 | Netflix / 2023.08.18. |
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話数 / 年齢制限 | 7話 / 16+ |
原題 | 마스크걸(マスクガール) |
監督 / 脚本 | キム・ヨンフン |
キャスト | イ・ハンビョル、ナナ、コ・ヒョンジョン、ヨム・ヘラン、アン・ジェホン |
簡単なあらすじ | ルックスにコンプレックスを持つ平凡な会社員のキム・モミ(イ・ハンビョル)は、毎晩マスクで顔を隠しネットでライブ配信している”マスクガール”だ。 が、ひょんなことから思わぬ事件に巻き込まれていく― |
外見至上主義(ルッキズム)が核心のテーマでありながら、いじめやネットさらし、宗教、DVなど昨今の問題もギュッと詰め込まれた作品。
オープニングのようにポップな感じでいくのかと思ったら、どんどん思いもよらない展開に…
韓国の外見重視は他の国よりも強く、中学から高校へ上がる時など、学校が変わるタイミングや就職のために二重整形するのはよく聞く話。
みんながそうではないですが、親も子供の外見に厳しいほうで、肌が荒れてるとか、服装とか、口を出すことが多く感じます。
そんな環境で育ち、外見のコンプレックスを持つ主人公の話が本筋にありながら、エピソードごとに主人公と視点が変わり、撮影スタイルやトーンも変わるのが見どころ。
スリラー、犯罪、ノワール、ブラックコメディ、復讐といろんなジャンルが混ざっていて、もうどうなるのか見当もつかない。
けっこうグロいし、暴力的なので見るのをやめようかとも思ったものの、怖いもの見たさで結末を見るまではやめられず一気見。
どの俳優も演技がすごいんですが、特に2話のチュ・オナムを演じたアン・ジェホンがすごい!
扮装に2時間かけたそうで、眉毛から上は「かつら」なんだそう。
ちょっとした仕草や「愛してる」などの日本語も彼のアドリブだそうで、本当に別人になってました。
原作のウェブ漫画とはけっこう内容が変わっているところがあるので、比べてみるのもおもしろいかも。
- 第60回 百想芸術大賞 TV部門 助演男優賞(アン・ジェホン)
- 第60回 百想芸術大賞 TV部門 助演女優賞(ヨム・ヘラン)
最後に:社会問題もエンタメにしてしまう韓国
韓国はドラマに限らず、映画でもそうですが、タブーや社会問題などの闇も深掘りして描写しつつ、エンタメとしても両立させてしまっているのがすごいですよね。
今後も名作が出たら更新、他のテーマでも記事にまとめていきますのでお楽しみに!