さっそく公開された『イカゲーム2』、「えっ、ここで終わり??」と、物足りなさを感じませんでしたか?
私もそれなりに楽しんだものの、消化不良な部分が多くて監督インタビューを漁っていたら、想像以上にたくさんの伏線が仕掛けられていて、さらなる社会風刺も盛り込まれていたんです!
具体的にわかると、ホント監督すごい!
監督は多くのインタビューで「シーズン3は2よりも良い」「全て回収される」と話しているので、シーズン3が待ちきれません。
それでは、監督インタビュー(韓・米メディア)をもとに『イカゲーム2』を解説・考察していきます。

ネタバレ記事なので、見てから読んでね


OX 投票シーンが風刺するもの


シーズン2では、各ラウンド後にゲームを続けるかどうかの投票が義務付けられ、投票シーンが多くなりましたよね。
今、韓国社会だけでなく、全世界が宗教、イデオロギー、背景、性別、人種によって分裂や葛藤、憎悪といったものが起こり、ますます激化しているように見えます。 そういったことをシーズン2でもっと象徴的に表現したいと思って、OとXに分かれた集団がどのように分かれ、どのように憎しみ、対立し、葛藤するかを描いてみました。
驚くべきは、そうした状況がシーズン2の公開時にさらに顕著になり、ドラマでの投票が現実になっていることです。
ご存知のとおり、韓国では2024年12月3日の夜、尹錫悦大統領が突然の戒厳令を宣言、その後国会で大統領を弾劾するかどうかの投票がまるで『イカゲーム2』の投票そのもの!(いやそれ以上かも)
投票は無記名でありながら、可決には与党から8人の造反が必要であり、「あと何人、あと何人」と議員の行動や応じない議員の名前を連呼したりする様子が報道され、全国民が見守る中で行われました。


そもそも戒厳令も与党と野党の激しい政争からきていますが、この記事を書いている今現在も「与党 vs 野党」だけでなく、大統領の逮捕状執行を巡り「合同捜査本部 vs 警護庁」が、そして官邸付近では「弾劾賛成 vs 反対」する市民たちが目と鼻の先で対立、衝突しています。
ファン監督は「風刺しようとしたのが逆に現実になった。そうならないように作ったのに残念で悲しい」と言い、先だってトランプ大統領が再選する選挙前に米メディアのインタビューでもこう話しています。
このような分断が進むと、あたかも絶対に越えられない線が引かれているかのように思えてしまいます。世界の指導者たちがこうした壁や分断を作り出し、結果として、自分たちと考えの異なる人々は絶対に許されることのない敵だと感じさせるようになっているのです。
出典:‘Squid Game’ Returns With A Vengeance: Creator Hwang Dong-Hyuk & Star Lee Jung-Jae Reveal Why
アメリカでも大統領選で分断が深刻化しているという報道が記憶に新しいですが、韓国でもアメリカでも、最終的には国民たちが「OかXか」だけで分断しているのです。
『イカゲーム2』では、参加者が「OかXか」でお互いを敵視し、憎悪し、殺し合うまでになってしまいました。
ただ、ギフンだけは違います。
今こうなっているのは、お互いに殺し合うシステムを作った上の奴らのせいだと。
一回の投票ですべてを決定するこの方法が果たして正しいのか?
他の方法はないのか?
多数派は常に正しいのか?
監督はギフンをこの時代のドン・キホーテに重ね、民主主義社会へ問いかけています。



シーズン1のOX選挙では「緑 vs 赤」だったけど、2では「青 vs 赤」になって風刺がきいてるね
登場人物にまかれた伏線
シーズン1でカメオ出演だったコン・ユ演じるスカウトマン、イ・ビョンホン演じるフロントマン/001/イノの描写が増え、インパクトあり納得させる演技はとてもよかったですよね。
とはいえ、シーズン2では新しい顔ぶれが多数登場、主役級の俳優が多かったにもかかわらず、まだ軽い紹介といった印象で、本格的な人間ドラマはシーズン3で始まるのが予想されます。
知り合いが多い理由
シーズン1にもいましたが、シーズン2はやたらと近い関係、知り合いが多いと思いませんか?


母親と息子、競馬仲間、元カレ元カノ、YouTuberと登録者、同じ職場など、偶然にしては多すぎますよね。
チョ・ユリとイム・シワンのキャラクターだけでなく、事前に関係を持つ他のキャラクターたちも、互いに知らないままゲームに参加させられています。「ゲームを作った者たちは、観客にエンターテインメント性を与えるために、意図的に彼らをゲームに登場させたのです」とファン監督はほのめかしています。
出典:‘Squid Game’ Returns: Inside Netflix’s Darker, Terrifyingly Relevant Season 2
つまり、ゲーム主催者はVIPを楽しませるため、わざと個人的な関係のある人たちを参加させ、究極の状況に追いやろうとしているのです。
そう考えるとシーズン3はどれだけのドラマが待っているでしょうか。
泣ける予感しかしません…
実在人物・事件をモチーフ


パク・ソンフン演じる120番のヒョンジュはトランスジェンダーでありながら、実は陸軍特殊戦司令部という特殊部隊にいた人物。(簡単に言えば超エリート軍人)
韓国人男性は兵役があるので、基本的にみんな銃は扱えるのですが、戦う時のヒョンジュの活躍はめざましかったですよね。
この人物について監督は、
「韓国ではトランスジェンダーの人々が偏見や差別に苦しむ事件がたくさん起きています」とファン監督は言う。このキャラクターは、性別適合手術を受けた後に軍から除隊され、自ら命を絶ったピョン・ヒス下士にインスパイアされています。「”ヒョンジュ”は、社会によって大きな傷を負いながらも、性別に関係なく人間としての内面的な美しさを持っているキャラクターです。」
出典:‘Squid Game’ Season 2: From Illness to 500-Person Shoots, Behind the Scenes of Netflix’s Mega-Hit
ヒョンジュは「だるまさんがころんだ」ゲームでギフンと一緒に人を助けたりと、人間性が感じられるキャラクター。
シーズン3でさらにそうした面が見られることになりそうです。


逆にカン・ハヌル演じる388番のデホは海兵隊出身でありながら、なぜ銃弾を取りに行って戻らなかったんでしょう?
海兵隊も特殊部隊なので誰でもなれるわけではなく、あの怯え方やパニック状態はおかしいんです。
これについて監督が直接語ったわけではないんですが、2011年に起きた江華島海兵隊銃乱射事件が関係していると思われます。
きっとシーズン3でなんらかの背景が明かされるでしょう。


また、シーズン2は1に比べて年齢層が若いと思いませんか?
MZ世代(20-30代)を描きたかったんです。シーズン1の時にはこんなことは考えもしませんでした。当時は、借金を抱えて追い詰められるのは年齢を重ねた人々だろうと思い、キャラクターの年齢層を構成しました。しかし、この数年で雰囲気が大きく変わりました。仮想通貨、オンライン賭博、薬物問題など、若い世代が直面する社会問題を扱ってみようと思ったのです。
その典型的キャラが、元BIGBANGのT.O.P(トップ)演じる230番ラッパーサノス、イム・シワン演じるコインで失敗したインフルエンサー333番ミョンギ。
トップのキャスティングは本人も薬で前科があるため、韓国でかなり論争になりました。
監督によると、サノス役は俳優が見つからずに苦労したそうですが、トップもオーディションを受け、一番合っていたとのこと。
韓国では『SHOW ME THE MONEY』というラッパーのオーディション番組がシーズン10まで続くほどヒップホップシーンが賑わいましたが、その出演者が薬で捕まったことなども役に反映されていて、実際に前科があるトップが演じることでまたメッセージ性が強くなるんじゃないでしょうか。
ちなみにビジュアル的には『アベンジャーズ』のサノスの色、インフィニティストーンに合わせて、髪やネイルの色が使われています。
シーズン2でトップはいなくなってしまいましたが、その影響は3まで及びそうです。(監督がなんとなく匂わせてた)
個人的な推測はサノスの金魚のフンだった124番のナムギュ。


この俳優さん(ノ・ジェウォン)が実力派のすごくいいバイプレイヤーなんですよ!
きっとシーズン3でなにかやらかしてくれると思います。
まだ隠れキャラがいる
まずはこの写真を見てください。


上段はドラマ『ミセン』の写真なんですが、『イカゲーム2』にも出演している俳優が多いねーという話ではなく笑、右から2番目の俳優さん、覚えてますか?
実はこの俳優さんだけでなく、他のドラマで見覚えある俳優さんも実は群衆の中に紛れていたんです。
OX投票で分裂し、口論になった時に「あれっ!?」っと思ったんですが、ドラマで見慣れた顔の俳優さんがエキストラに紛れていて、どう考えても端役になる俳優ではないので、シーズン3に何らかの役割があると思われます。


それからイ・ジヌク演じる246番の画家ギョンソク。
最後に銃で撃たれた場面で終わりますが、こんな主役級がここで終わるわけがなく、シーズン3ではピンクガードのノウル(同じ遊園地で働いていた)に助けられて裏側で活躍するんじゃ…なんて勝手な予想。


そのノウルですが、シーズン2で運営側の様子を見せてくれる貴重な人物。
個人的に興味深く思っているのはその名前。
ノウルとは韓国語で「夕焼け」の意味。シーズン1に出てきたセビョクは「夜明け」の意味で、2人とも脱北者で姓がカン氏なんですよね。
名前から言って、ノウルとセビョクは何らかの関係性があるか、対比的な人物として設定されたと思われます。


ノウルの上司になる部隊長もパク・ヒスンが演じていて、この主役級の俳優がちょい役で終わるわけがなく…


サノスたちに絡まれてた125番のミンス。
この俳優さん(イ・ダウィ)もスパイスのある役が多く、みんな知ってるのだと『梨泰院クラス』で学生時代にいじめられ、後にセロイの右腕で活躍する役だったり。
シーズン3でなんらかの覚醒が期待できます。


忘れてはいけないのがウィ・ハジュン演じるジュノ。
シーズン3でついに兄イノがどうしてこうなったのか、いきさつを追求してくれるに違いありません。
それから彼を助けている船長。
オ·ダルスが演じていますが、今までクセのある役が多かったので、登場するなり「こりゃ、普通の船長じゃないよね」と思った人もいるはず。
案の定、最後不審な行動をしていましたよね。
韓ドラをたくさん見ている副作用でもありますが笑…(ホントは何も知らずに驚きたい)、こうしたキャラクターがシーズン3でどうなるか楽しみです。
シーズン3が期待できる理由
監督によると、もともと「シーズン2」と「シーズン3」は一つの話で、いろいろ盛り込んでいるうちにエピソードが多くなってしまい、仕方なく分けたとのこと。
何の回収もなく「シーズン2」が終わってしまうことを弱点として認識しつつも、分けるならこのストーリーの転換点しか考えられなかったと。
つまり、「シーズン3」はガラッと変わることが予想されます。


- 反乱が失敗し、親友チョンべが殺された後、ギフンはどう覚醒するのか?
- 同じ苦境を経験し、優勝したフロントマンとギフンはなぜ違う考えに至ったのか?
信念の対立と衝突
そして監督曰く、
「新しいゲームがまた登場しますが、少し衝撃的だと思います。 人間が行きつく底を見せたかったんです。人がどこまで行けるのか。感情的な衝撃がシーズン1、2よりはるかに強いシーンがあるので、心の準備をして見てほしいです。」
と、これはかなりヤバそうな予感…
ちなみに「シーズン3」は2に比べてCGが圧倒的に多いそう。
前述してきた登場人物たちの伏線も、
全ての人物の結末とこの話の結論、私が作品として伝えたかった全てのメッセージはシーズン3にほぼ全て入っています。
究極的な資本主義を『イカゲーム』に反映させ、現代社会を風刺するファン・ドンヒョク監督が、どんなメッセージを込めてどんな結末にしたのか?
これは「シーズン3」が待ち遠しくてたまりません。
最後に:『イカゲーム3』のヨンヒとチョルス
シーズン2の最後、エンディングクレジットに特典映像があったのに気づきましたか?
안녕, 철수.
— Netflix Korea|넷플릭스 코리아 (@NetflixKR) January 1, 2025
<오징어 게임> 시즌 2 절찬 스트리밍 중. 시즌 3는 2025년 곧 공개. 오직 넷플릭스에서.#오징어게임2 #SquidGame2 #오징어게임3 #SquidGame3 pic.twitter.com/Q8MzJUo32h
女の子は「だるまさんがころんだ」の人形、ヨンヒ。
そして新登場の男の子はチョルス。


なぜ名前がわかるのかって?
この2人は昔から韓国の国語の教科書に出てきた国民的名前なんです。
日本でいう太郎と花子みたいな感じ?


年度によって、服装や髪型は違いますが、名前はヨンヒとチョルス。
かわいい人形が恐ろしい武器になっちゃうんだから、怖さ増し増し…
子供の遊びで残虐なゲームをするアイロニカルな世界観にピッタリですね。



どんなゲームになるのか楽しみ

