韓国版『スマホを落としただけなのに』にチョン・ウヒがキャスティングされたと聞き、これは普通のリメイクじゃないなと思ったとおり、ヒロインが強い!
それに、同じテーマでも具体的なストーリーは違うので、日本版を知っている人でも別の作品として楽しめます。
私も実際に日本版と韓国版を続けて見比べてみたので、
- 日本版と韓国版の違い
- 韓国版:監督の制作秘話、韓国での評価
を感想をふまえてお伝えします!
ネタバレがあるので、見てない人は概略だけにしてね!
『スマホを落としただけなのに』日本版と韓国版の概略
「スマホを落としただけで、連続殺人事件に巻き込まれる―」
その大きな流れは同じでも、日本版と韓国版でアプローチの仕方から全体的な印象・内容が違います。
日本版:原作小説の要素を凝縮
公開 / 時間 | 2018 / 116分 |
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原題 | スマホを落としただけなのに |
監督 | 中田 秀夫 |
出演 | 北川景子、千葉雄大、成田凌、田中圭、原田泰造 |
日本版は、第15回『このミステリーがすごい! 』大賞の「隠し玉(編集部推薦)」になった小説を映画化したもの。
基本的に、この小説の内容をギュッとまとめて映画化されているので、本題の事件を中心にしつつも、恋愛や情事、過去のトラウマ、隠されていた主人公の秘密など、様々な要素が詰めこまれています。
いろんな事実を知っていくおもしろさがある一方、2時間で消化するにはやや散漫ぎみなところも。
韓国版と比較して言うと、日本版はドラマみたいな雰囲気かも…。
サスペンスだけど、恋愛ドラマっぽい?
韓国版:焦点を絞り現実味アップ
公開 / 時間 / 年齢制限 | 2023 / 117分 / 16+ |
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原題 | 스마트폰을 떨어뜨렸을 뿐인데(スマホを落としただけなのに) |
監督 | キム・テジュン |
出演 | チョン・ウヒ、イム・シワン、キム・ヒウォン、パク・ホサン |
韓国版は日本版にあった要素をそぎ落とし、スマホを落としただけで危機に陥る恐ろしさにフォーカスされています。
日本版の(そもそも原作小説にあった)恋愛要素やトラウマや、、、そうした要素はスパッと削られていてシンプル。
それゆえ、いたって普通の主人公の日常に、じわじわ犯人が迫ってくる様子がリアルで怖い、いかにもサスペンス・スリラー映画。
日本版より実際に使っているアプリやサービスが多く登場し、演出もスマホに監視されてる感がより強い。
ただ、韓国映画としては、もう一つパンチが欲しかったところ。
実力派キャストの演技がよかったなあ
↓ ここからネタバレあります ↓
日本版と韓国版の主な違い
前述したとおり、大筋以外は全く違うストーリーになっているため、ここではポイントとなる主な違いを取り上げます。
犯人の見せ方、犯人像
なんといっても一番の違いは、「犯人をいつ見せるか」。
日本版は犯人は終盤になるまでわからないんですが、韓国版では犯人が最初から登場します。
最初からわかったらおもしろくないって?
いやいや、それがどうやってターゲットに近づいていくのか、冷静沈着な手口や性格までよく描写されていて、表情がわかるだけに怖いんです…。
日本の殺人犯は、幼い頃の母親のトラウマから「長い黒髪の女性をターゲット」に犯行を重ね、本人も長い黒髪のウィッグをつけるなど、かなり異常。
演技も目をむき出したり、猟奇的な行動が多く、いかにもサイコパスというショー的な印象でした。
これはこれで演技を絶賛してる人も多いよね
韓国の殺人犯は、普通の人、いや、爽やかな好青年、イケメンなのです。
その顔がサッと無表情に変わる瞬間や、冷たい笑みを浮かべるその表情が怖く、ヒロインを狙った理由も、ただ「スマホを拾ったから」というだけ。
まさに「スマホを落としただけなのに」という主題どおりで、韓国版の方が実際にありそうで怖い…。
イム・シワンは最近、映画『非常宣言』とか悪役の演技もすごいなあ
事件のはじまり
日本版では、彼氏がタクシーにスマホを置き忘れたのがきっかけで、北川景子演じるヒロイン(麻美)が狙われますが、
韓国版では、友だちと飲んだ後に乗ったバスにスマホを落としたナミ本人が狙われます。
スマホ忘れないように気をつけよう
人間関係
日本版では、麻美(北川景子)と富田(田中圭)の恋人関係が中心で、犯人は主に2人の関係を壊すようなメールや写真を送りつけます。
韓国版では、犯人がナミの周辺の人間を一人ずつ連絡がとれないように消していくので、ナミの父親、親友、職場と操作していきます。
韓国版は父親や刑事など、主要キャストも中堅の俳優がどっしり脇を固めてるね
ヒロインの行動力と結末
日本のヒロインは受動的(普通そうなんだけど)で、犯人に監禁されているところへ彼氏が追跡アプリで救出、警察が来て一件落着。
リメイクではチョン・ウヒがキャスティング、「これは大人しく黙っているはずがない」と思ったんですよね。
なぜって、映画『哭声/コクソン』や『悪の偶像』のチョン・ウヒは、その目だけでも狂気を感じるほどで、演技の圧力がすごいんです。
そんな女優がキャスティングされたんだから、ただやられっぱなしなはずがありません。
終盤、警察の捜査に協力し、父親と共に殺されかかるも、最後の最後は犯人に向かっていくのです。
息子を殺された刑事でさえ、ためらって銃を撃てなかったのに、銃を持ったナミを見てヤバいと悟った犯人の表情が印象的でした。
※犯人は腹部を撃たれましたが、命に別状なし(ニュースでは警察が発砲したことに)
予想通りだったけど、もうひと盛り上がりあってもよかったかな…
もう一つの “なりすまし”
日本版も韓国版も、犯人がスマホを乗っ取り、なりすますことだけでなく、もう一つどんでん返しとなる”なりすまし”があります。
日本版では、犯人が麻美の過去を突き止め、結局麻美が自分で告白することになりますが、麻美という名前は自殺した元ルームメイトで、整形までして麻美として成り代わっていたのです。
一方、韓国版では、刑事が自分の息子オ・ジュニョンが犯人ではないかと疑って捜査するのですが、犯人は殺したオ・ジュニョンを殺人犯として仕立て上げていたのでした。
両方とも最後にわかるんだよね
エピローグ
日本版では、富田が麻美にプロポーズしたプラネタリウムで、2人が去った後、また別のカップルが席を立つのですが、スマホを落としていきます。
また新たな犯罪をにおわせる終わり方だよね
韓国版では、事件直後、救急車に乗っていく間も観衆にスマホで動画や写真を撮られ、ニュースが匿名でも、被害者のカフェを特定されて写真を隠し撮りされています。
犯人の監視が終わっても、誰かに見られている怖さを感じますね…
事件が終わったのに、終わってないみたいだよね
韓国版『スマホを落としただけなのに』制作秘話
ここからは韓国版について、監督インタビューからの裏話です。
渾身のイントロ部分
映画の冒頭、約3分は「どれだけスマホを使って生活しているか」を見せてくれますが、キム・テジュン監督はこのシーンが映画の50%だという思いで作ったそう。
アラームから始まって、天気、スケジュール、音楽、カカオトーク、blog、Instagram、バスアプリ、チケット購入、Twitter、Facebook、出前、電話、ゲーム、ニュース、YouTube、Netflix、部屋探し、コスメ口コミ、スマホ決済、地図、カメラ、メッセージ、ネットバンキング…
日本版ではいろいろ制約があったのか、架空のサービスになっていましたが、韓国版に出てくるものはほぼ実際に使われているアプリやサービス。
このイントロを見ている人が自分と似ている所を探さないと成功できないと思っていたそうで、なんとこのイントロ部分だけで100カット以上あるんだとか。
韓国に住んでる私はまさに「あ、〇〇だ」とほとんど私が使ってるアプリやサービスがたくさん出てくるので、心つかまれましたよね…
また、このシーンは観客本人が見ているスマホの感じが出るように、ナミを演じたチョン・ウヒが直接撮影したそうです。
夜、暗闇の中でスマホが勝手に遠隔操作されてるシーンもよかったな
プラムの意味は?
映画の冒頭が終わってすぐ、犯人の部屋に山のようにあるプラム、刑事が山で見つけたプラムの木、ナミの父親のカフェで作った自家製のプラムエイド。
これだけプラムが出てくるのは何か意味があるのかな?って思いますよね。
監督によると、
李下に冠を正さず
李の木の下で冠を被り直せば、李を盗むと疑われるということから、人などに疑われるような事はするなということ。
この言葉があるように、プラム(すもも)は誤解を象徴する木と考えたんだそう。
プラムとすももって同じなんだね
それで、刑事はプラム(すもも)の木の下で、自分の息子が犯人じゃないかという誤解が始まりました。
ナミの実家で採れたプラムエイドも、犯人がカフェの常連だという誤解が始まり、ナミと犯人が近づいていきます。
ちなみに山のプラム(皮は赤くて中は黄色)とナミの実家のプラム(皮も中も赤)とは別の種類で、それぞれの人物を表現したんだそう。
しかも、ラストシーンの犯人が黄色い服を着ていたのは、銃で撃たれて血が広がり、人間プラムにしたかったんだとか笑
そんな意味があったんだ!
韓国での評価
評価(10点満点): 6.88点
けっこう辛口です。
好評 |
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不評 |
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日本ではけっこう好評だったけど、韓国では辛口…
最後に:小説・日本版・韓国版、比較する楽しみ
『スマホを落としただけなのに』の日本版と韓国版を比較してみましたが、いかがでしたか?
このシリーズは、原作小説が3冊、
日本で映画化されたものが2本、
そして今回韓国でリメイクされた映画があります。
日本の映画はほぼ原作小説に基づいていますが、それでも少し違いがあり、日本版と韓国版の映画では全く違うものになっています。
ぜひ、それぞれ比べて楽しんでくださいね!
日本でまた映画の続編作るのかな?
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