韓国で老若男女が熱狂したドラマ『財閥家の末息子』。
その魅力の一つは、ある財閥がモデルになっていたり、実際にあった時事ニュース、トレンドなどが組み込まれてドラマが展開していくこと。
知らずに見てもおもしろんですが、「あ、あの時の…」とか「あのエピソードだ!」とかわかるとさらにおもしろいんです!
では、どんな企業、人物がモチーフとなったのか解説していきます。
わかるとおもしろいよ!
『財閥家の末息子』登場人物のモチーフ
チン・ヤンチョル(スニャングループ会長)
相手を見透かす目つきと一分の隙も許さない強靭な姿。 精米所で始まり、スニャンを財界1位に押し上げた。彼の「3心(欲心、疑心、変心)」のおかげで。今、彼にはスニャンを引っ張っていってくれる後継者が必要だが、自分の息子娘には満足することができない。
創業者として慶尚道の方言を使い、櫛で整えられた髪にメガネをかけて書道を趣味にしているなど、全体的な姿はサムスン創業者のイ・ビョンチョルのイメージと重なるところが多く、そこへサムスン2代目会長や現代グループ創業者のエピソードが混ざっています。
イ・ビョンチョル(サムスン創業者)
- 慶尚南道出身(慶尚道の方言)
- 美術品の収集
→ドラマ:家のあちこちに陶磁器、展示室あり - 書道が趣味
→ドラマ:ときどき書道している - ホテル新羅の調理部長に寿司について、この会場は「夕方にはお酒を添えてつまみで食べるので(320粒より少ない)280粒が適当だ」と話した
→ドラマ2話:寿司を食べながら、「寿司1つにご飯粒はいくつだ?」と聞く場面 - 1980年代から「自動車と電子は融合される」と、本格的に自動車産業進出TFチームを作った
→ドラマ:「自動車は電子だ」という演説 - 子供たちの学力にコンプレックスがあり、ライバルである現代のチョン・ジュヨン会長の子供たちに負けていたが、次の後継者であるイ・ゴンヒ会長の息子、イ・ジェヨンがソウル大に入学することで一族の学歴コンプレックスに終止符を打った
→ドラマ:ドジュンがチン会長にソウル大法学部首席入学というプレゼントをした
イ・ゴンヒ(サムスン2代目会長)
- イ・ビョンチョルの三男
- 1995年北京発言「我が国の政治は4流、官僚と行政組織は3流、企業は2流だ」
→ドラマ:極度に政治を嫌悪 - 半導体産業進出のために私財をかけ、韓国半導体を買収→経営危機になり、イ・ビョンチョルがサムスン電子に韓国半導体を買収させた
→ドラマ:チン・ヤンチョル会長が周囲の反対を押し切って半導体産業を推進 - 「自動車事業について誰よりも勉強した」と発言するほど自動車事業に愛着があった
→ドラマ:チン・ヤンチョル会長が自動車産業に愛着を持っていた
チョン・ジュヨン(現代グループ創業者)
- 家の統制を重視し、一ヶ月に数回、自宅に一族を呼んで朝食を共にした
→ドラマ:チン会長一家は毎週食事を共にした - 強力なカリスマで一家を統率し、弟や息子たちが反抗することはなかった
- 1992年大統領選挙時、チョン・ジュヨン候補について回った失禁のデマ(演説していた途中、失禁をしたため、隣にいた補佐たちが突然「チョン・ジュヨン万歳! 」と叫び、シャンパンを急に開けて候補のズボンをぬらしたというデマ。高齢イメージを強調するために反対派が作ったと思われる)
→ドラマ12話:チン・ヤンチョル会長がエレベーターの中で失禁し、ドジュンが掃除のバケツを蹴ってズボンをぬらす
その他
- ドラマ15話:チン・ヤンチョル追悼1周期記念式場でのチン・ヤンチョル略歴を見ると、全体的に精米所から始まったイ・ビョンチョルの生涯にチョン・ジュヨンの建設会社草創期の略歴が混ざっている
- ときどき出てくる「事業報国」という漢字標語は、実際に財閥創業者がよく使った「〇〇報国」のオマージュ
- 配達車1台で仁川で精米所を始めたという部分は、サムスン商会よりは韓進グループ創業主のチョ・ジュンフンの韓進商社創立エピソードに近く、所有した配達車のおかげで事業が大きくなり、また事業が大きくなるにつれて自動車が増え、スニャングループとスニャン自動車の基礎となったという設定は、業種が異なるだけで韓進グループが運送特化財閥に成長した背景と似ている
- スニャングループの一族同士で戦う様子は、イ・ビョンチョル会長の息子三兄弟の戦いや、ロッテ創業主シン・ギョッコ(重光武雄)会長の息子であるシン・ドンジュ(重光宏之)、ドンビン(昭夫)兄弟の戦い、現代グループの「王子の乱」も連想される
韓国の財閥の中の財閥、代表的な創業者をまとめた感じ?
チン・ヨンギ(スニャングループ副会長・長男)
チン・ヤンチョル会長の長男で、公式な後継者であるが、何度も無能な姿を見せて父の不信を買っている。残念ながら、チン・ヤンチョルの優れた事業感覚と鋭さは受け継がれなかったようで、足りない自分に代わって息子を前に立てて会長の目に留めようとする人物。
スニャングループの公式な後継者でありながら、父である会長の不信を買っている姿は、サムスン創業者の長男、次男の姿と重なるところが多いです。
イ・メンヒ(サムスン創業者の長男)
- イ・ビョンチョル会長の長男、CJグループ名誉会長
- 1960年代のサムスングループの公式後継者として17の系列会社役員職を兼ねた人物だったが、彼が引き受けた会社は全体的に経営実績が良くなかった
- 弟イ・チャンヒが大統領府へ父を告発した事件に関与したのではという疑惑から、父に睨まれて後継者候補から除名された
イ・チャンヒ(サムスン創業者の次男)
- 1966年、サッカリン密輸事件で収監、父は会長職を辞任
→ドラマ7話:チン・ヨンギが父チン・ヤンチョルの代わりに監獄暮らしをした話 - 1969年、経営に復帰した父イ・ビョンチョルについて大統領府へ告発、父に見放されて後継者候補から完全に追放された
ドラマより厳しい…
チン・ドンギ(スニャン火災保険代表・次男)
計算が早く、機転と悪知恵の大家。チン・ヤンチョルの事業家マインドと母の頭の回転を受け継いだが、長男ではなく次男として生まれたため、スニャンは受け継ぐことができない。それで、無能な兄を引きずり下ろし王座に上がる機会を虎視眈々と狙う人物。
会長の次男でありながら、トップに立つ機会をうかがう様子はサムスン創業者の次男のイメージと重なり、経営に占いの解釈を参考にしている様子は、ハンボグループをはじめ、多くの財閥総帥の逸話が含まれています。
イ・チャンヒ(サムスン創業者の次男)
- イ・ビョンチョル会長の次男
- 1969年、朴正煕大統領へ父イ・ビョンチョルを追い出さなければならないと告発、父に見放されて後継者候補から完全に追放された
チョン・テス(ハンボグループ創業者)
- ハンボグループの重大事を占い師の言葉に過度に依存した逸話が多い(土の気運が良い、土地に関連する事業をしろという助言に基づき、江南に銀馬アパートを建て大儲け、次に「鉄・金属がいい」という助言によって鉄鋼業に飛び込んでグループ全体が没落:この「ハンボ鉄鋼工業」はドラマでは「ハンド製鉄」として登場)
→ドラマ:チン・ドンギが占いの解釈に合わせて投資を決心したり撤回する
その他
- 数多くの財閥総帥が占い師を近くに置いて助言を受けたという財界の逸話
→ドラマ:チン・ドンギが重要なことを運勢や占いを利用して解釈する - イ・ビョンチョル会長が重用していた占い師がペク・ウンハク氏
→ドラマ:チン・ドンギの前で占いの解釈をする側近がペク常務
ドラマだと思ってたら、占い師は本当だったんだ!
チン・ファヨン(スニャン百貨店代表・長女)
気まぐれで傲慢だが、父チン・ヤンチョルの前では気さくで愛嬌満点のかわいらしい娘。 娘という理由でスニャンの後継者になれないということがあってもいいのか? 無能で認められていない兄たちより、愛されている自分が後継者になる可能性が高いと考え、父に認められるために奮闘する人物。
チン・ヤンチョル会長の末娘としてスニャングループの流通業を担当し、強烈なアイメイクをしていることから、外見はサムスン創業者の娘、イ・ミョンヒのイメージと重なります。
イ・ミョンヒ(サムスン創業者の五女)
- イ・ビョンチョル会長の末娘(婚外子を除く)
- 新世界グループ会長
新世界百貨店とイーマートを主力に「流通業のゴッドマザー」として有名 - 強烈なアイメイクがトレードマーク
- ドラマとは違い経営上手だったそう
イ・インヒ(サムスン創業者の長女)
- イ・ビョンチョル会長の長女
- ハンソルグループ顧問
1979年ホテル新羅常任理事に選任、1983年に全州製紙顧問として推薦され、1991年サムスングループからの独立を宣言した翌年に「ハンソル製紙」に社名を変更、1993年に公正取引法上サムスンから系列分離され、独自経営を推進
→ドラマ8話:ホテルなど流通業部分をまとめて娘のチン・ファヨンに系列分離をした
仕事内容やメイクから、このモチーフはわかりやすかったみたい
チン・ソンジュン(スニャン会長の一番孫)
生まれてみたら、祖父がスニャングループの会長。 眼中人なしで傲慢、傍若無人。そんな彼にとってスニャンは、当然一番孫である自分のものだと考えた。思いやりも道徳性もない彼には一つの考えしかない。 スニャンは最初から自分のものであり、自分のものを他に奪われてなるものかと。
スニャン創業者の一番孫であること、秘密資金とかかわったことや、父親と祖父との関係など、サムスン創業者の一番孫と重なるところが多いです。
イ・ジェヒョン(サムスン創業者の一番孫)
- イ・ビョンチョル会長の一番孫(嫡孫)
- イ・メンヒ(会長の長男)の長男、CJグループ会長
- 秘密資金事件
→ドラマ1話:チン・ソンジュンがスニャンの秘密資金を取り戻そうとする
※2007年に浮上したサムスン秘密資金事件もあり - イ・ビョンチョル会長は長男を追い出しても、一番孫には第一製糖を相続させた
→ドラマ序盤:チン・ヤンチョル会長は長男を信頼できなくても一番孫のソンジュンをとても大事にした
チン・イェジュン(スニャン会長の一番孫・女)
チン・ドンギの一人娘。スニャン系列会社SYアパレルCEO。華やかな美貌、すごい家門、その徹底した計算高さに驚かされる。幼い頃から父親に九九を学んだという話があるくらい計算、理財、損得勘定に長けた人物。父チン・ドンギを助け、スニャンの王座を狙う。元夫との間に1男あり。
会長の孫であること、仕事内容、離婚歴など、サムスン創業者の女の孫たちの要素が混ざっています。
イ・ミギョン(サムスン会長の一番孫・女)
- イ・ビョンチョル会長の女の一番孫
- イ・メンヒ(会長の長男)の長女、CJグループ副会長
- 離婚
『パラサイト 半地下の家族』の責任プロデューサー(=投資者)だよ
イ・ブジン(サムスン2代目会長の長女)
- イ・ビョンチョル会長の孫
- イ・ゴンヒ(会長の三男)の長女、ホテル新羅代表取締役社長
- 離婚(1男あり)
イ・ソヒョン(サムスン2代目会長の次女)
- イ・ビョンチョル会長の孫
- イ・ゴンヒ(会長の三男)の次女
- サムスン物産ファッション部門担当
チン・ヒョンジュン(スニャン会長の孫・ドジュンの兄)
会長チン・ヤンチョルの三男チン・ユンギの長男。ドジュンの兄で、芸能企画会社代表。自由人で歌とダンスに狂っているが、プレイヤーとしての才能はない。流行ファッションや流行語は全てキャッチする。ドジュンの特別な事業感覚に感心するものの、お金を稼ぐことも承継戦いにも関心がない財閥3世。
特定の人物をモチーフにしたキャラクターではないようですが、この人物が回ごとソテジ、H.O.Tなど1990年代~2000年代当時ブームだった人気歌手のファッションと特有の行動を再現したので、同世代の視聴者たちの話題を集めました。
また、財閥家出身で大衆文化に関心が多い部分は、暁星グループのチョ・ヒョンムンを連想させるという指摘もあり。
チョ・ヒョンムン(暁星グループ会長の次男)
- 暁星グループのチョ・ソクレ会長の次男
- 音楽に対する情熱が大きかった
- 高校の同級生とバンドを組み、キーボーディストとして活動
- (音楽活動をやめた後、ハーバード・ロースクールを卒業、暁星の経営に参加して一家の不正を告発)
その他
- 「メガヒット・エンターテイメント」の代表を務めているが、これはBTSを育てた「ビッグヒット・エンターテイメント」をモチーフにした芸能企画会社と見られる
ドジュンの兄は唯一笑える息抜きキャラだったなー
チン・ドジュン(スニャン会長の末孫)
チン・ヤンチョル会長の末の孫。ミラクル理事。明確な頭脳、執拗な勝負根性。 まるで未来についてすべてを知っているように見える非常な洞察力。 忠誠を尽くし、スニャン家に殺されたユン・ヒョヌが、1987年チン・ヤンチョル会長の孫ドジュンとして再び目覚めた。優れた頭脳で、チン・ヤンチョル会長一家の中で初めてであり唯一、ソウル大学に首席入学して会長から寵愛を受ける。
ソウル大学に入学して創業者の寵愛をうけたことや、後継者の継承序列から遠いという点で、現代グループ会長の六男やサムスン3代目会長と重なります。
特に、サムスン2代目会長が末息子、サムスン3代目会長も末の孫息子だったことも、このストーリーのモチーフになっていると思われます。
チョン・モンジュン(現代グループ会長の六男)
- 現代グループ会長チョン・ジュヨンの六男(継承序列から遠い)
- ソウル大学出身(父・現代会長が他の財閥の会長に会う時に自慢した)
→ドラマ:チン・ヤンチョル会長が他の財閥会長にドジュンがソウル大法学部首席入学を自慢
元FIFA副会長で日韓ワールドカップ開催を実現した人なんだって
イ・ジェヨン(サムスン3代目会長)
- イ・ビョンチョル会長の孫、イ・ゴンヒの長男
- サムスングループ本家のうち唯一ソウル大学に入学して祖父イ・ビョンチョル会長の寵愛を受けた
- 父であるイ・ゴンヒが会長の三男・末息子(婚外子を除く)、イ・ジェヨン本人も会長の末の孫息子(後継者になる可能性が低かったイ・ゴンヒが結局兄たちを抜いて後継者として浮上)
→ドラマ:後継者になる可能性がほとんどなかったドジュンが後継者として浮上
サムスン2代目、3代目の会長も末息子だったんだ
チェ・チャンジェ(チン・ファヨンの夫/婿養子)
チン・ファヨンの夫で、検察出身のソウル市長。忍耐心と穏やかなマナーのある親和性に長けたエリート。 スニャン家特有の傲慢さがないのは、田舎の貧しい家の出だから。他人がうらやましがるのと違い、彼はスニャン家のサービスマンであるだけ。政界入りするのが夢。
全体的なキャラクターは、平凡な家の出身で、財閥家の娘婿になったイム・ウジェ、キャリアではコ・ゴンをモチーフにしていると思われます。
コ・ゴン(第30・35代国務総理)
- 1998年、ソウル市長に当選
→ドラマ:1998年ソウル市長に当選 - 盧武鉉政権の時、内閣入り(国務総理)
→ドラマ:盧武鉉政権の時、内閣入り(法務大臣)
イム・ウジェ(イ・ブジンの元夫)
- イ・ブジン(サムスン2代目会長の長女)の元夫、前サムスン電気常任顧問
- 平凡な家の出身で財閥家の娘婿となるが、離婚
→ドラマ:貧しい家の出身で財閥家の娘婿となる(結婚継続)
元々はイ・ゴンヒ会長とイ・ブジンのボディーガードだったんだって
イ・ヘイン(チン・ドジュンの母)
チン・ヤンチョル会長の三男チン・ユンギ(婚外子)の妻で、ドジュンの母。スニャン家には似合わない純粋な魂の持ち主。かつては華やかなトップスター女優だったが、財閥家に嫁いだ。夫チン・ユンギはスニャンに関心を持つことさえせず、映画関係の仕事をしていること、また彼女との結婚でチン・ヤンチョル会長と疎遠になっている。
トップ女優から財閥家に嫁いだことで有名なコ・ヒョンジョン、また、ミスロッテ(原作ではミススニャン)からその財閥に嫁いだというところで、ソ・ミギョンと重なります。
コ・ヒョンジョン(女優・新世界グループ副会長の元妻)
- ミスコリア出身
- 1995年、最高視聴率64.5%という大ヒットドラマ『砂時計』の主演女優、人気絶頂時にサムスン家に嫁ぐ(創業者の五女イ・ミョンヒの長男、チョン・ヨンジンと結婚、その後離婚)
→ドラマ:スニャン家に嫁ぐ(創業者の三男、チン・ユンギと結婚)
最近ではNetflix『マスクガール』にも出演してるよ
ソ・ミギョン(ロッテ創業者の3番目の妻)
- ロッテ創業主シン・ギョッコ(重光武雄)会長の3番目の妻
- 子役出身の女優
- 初代ミスロッテ
→原作:ミススニャン
モ・ヒョンミン(チン・ソンジュンの妻)
スニャン創業者の一番孫チン・ソンジュンの妻。ヒョンソン日報オーナーの長女。冷たくて理性的、良い家系で教育を受けた端正な態度。挑発的な言い方とためらいのない唐突な行動は、誰も自分を拒否できないという自信から。夫とは、スニャンの後継者ぐらいになれば自分と釣り合うと思っている。
モ・ヒョンミンはヒョンソン日報オーナーの娘であり、ギャラリーを運営したり、美術に関連した仕事をしていましたが、これはサムスン2代目会長と結婚したホン・ラヒと類似しているところが多いです。
ホン・ラヒ(サムスン2代目会長の妻)
- 中央日報社長 兼 東洋放送会長の娘
- サムスン2代目会長イ・ゴンヒの妻
→ドラマ:スニャン会長の一番孫の妻 - ソウル大学美術大学を出て、サムスン美術館「リウム」の館長を歴任
→ドラマ:ギャラリーを運営
イム・セリョン(サムスン3代目会長の元妻)
- イ・ジェヨン(サムスン3代目会長)の元妻
- 2人の子供あり
- スポーツカーに乗る
- 大象(テサン)グループ会長の長女、現在大象グループと大象ホールディングスの副会長
今は俳優のイ・ジョンジェ(『イカゲーム』主演)と交際してることで有名だよ
イ・ハンジェ(スニャングループ秘書室長・会長の右腕)
スニャングループ秘書室長、企画調整部本部長。「チン・ヤンチョル会長の右腕」と評価される人物であり、チン・ヨンギ副会長をはじめとするチン一家を飛び越えて実質的なナンバーツー。上の人の仕え方と下の人の扱い方をよく知っており、会長を深く尊敬しつつ、彼のせっかちで偏屈な性格さえ最高経営者の孤独だと理解してくれる二人といない同伴者。
ドラマ『ミセン』の2人がこうして絡んでるのもおもしろいね
会長の秘書室長として、実質的なナンバーツーであること、会社経営にも関与していることから、サムスン2代目会長の秘書室長イ・ハクスと重なるところが多いです。
また、ドラマでは役名が「イ・ハンジェ」となっていますが、原作小説では「イ・ハクジェ」となっており、イ・ハクスがモチーフになっていると言えるでしょう。
イ・ハクス
- サムスン2代目会長(イ・ゴンヒ)の会長秘書室長で実質的なナンバーツー
- イ・ゴンヒ会長の格別な信任のもと、系列会社の売却、ビッグディールを主導的に処理
→ドラマ:チン・ヤンチョル会長の信頼を受け、会社の大きな案件にも関与
チュ・ヨンイル(デヨングループ会長)
6.25戦争をきっかけに北朝鮮から下りてきて、裸一貫で財界序列1位のデヨングループを築いた。スニャングループのチン・ヤンチョルのライバルであり、グループの核心は自動車事業。
韓服を着て登場する場面から始まり、後ろに息子たちを連れて登場した姿、北朝鮮の方言、グループの核心が自動車事業ということで、当然現代(ヒョンデ)自動車のチョン・ジュヨンを想起させられます。
チョン・ジュヨン(現代グループ創業者)
- 現代グループの創業者
- 普段は韓服や会社のジャンパーを着ていた
→ドラマ:登場は韓服、会社のジャンパーを着ているシーンもあり - 故郷は現・北朝鮮、北朝鮮の方言を使う
- イ・ビョンチョル(サムスン)のライバル
- 裕福だったイ・ビョンチョルとは違い、どん底から這い上がった事業家として有名
(貧しい農家で生まれ、小学校だけ出た) - 息子が8人
→ドラマ:息子5人を従えて登場
韓国の人たちは、こういうモチーフになっている人たちがピピっとわかるみたい
『財閥家の末息子』企業・団体のモチーフ
スニャングループ
サムスングループ
- サムスングループは、サムスン物産を母体としてすでに1970年代、1980年代から家電・電子分野をリードしていた大企業
- サムスン自動車として自動車産業に後発で足を踏み入れたが、1997年当時の自動車業界は現代(ヒョンデ)、大宇(デウ)が2強で、その後に起亜(キア)と双竜(サンヨン)が続いた
→ドラマ:自動車はスニャンが万年最下位で6位 - 1997年のIMF通貨危機が勃発、サムスンが起亜(キア)自動車を何とか買収して自動車産業を継続しようと努力したものの(キアは現代が買収)、結局、自動車部門をフランスのルノーに売却
→ドラマ:スニャンとデヨンがアジン自動車を買収しようとし、ドラマではスニャンが買収
アジン自動車
起亜(キア)自動車
- 起亜自動車は業界でよく売れている方だったが、1997年7月に不渡りとなり、1998年現代自動車に買収される
→ドラマ:不渡りとなりスニャンに買収される - 起亜グループ会長(キム・ソンホン)はエンジニアとして入社して会長にまで昇りつめた
→ドラマ5話:アジン自動車会長(ソン・ヒョンチャン)の逸話と一致
デヨングループ
現代グループ
- 現代グループは自動車をはじめとする重工業分野で頭角を見せた大企業として、1990年代財界序列1位となる
- 現代グループのロゴが今でも「現代」という漢文書道表記になっている
→ドラマ:デヨングループの執務室に社名である「大營」という書がかかっている - 1997年のIMF通貨危機当時、グループ経営状態は良くなかった
→ドラマ:ハンド製鉄の買収戦で資金難の描写
原作小説は現代(ヒョンデ)を反対にした「デヒョン」が会社名になってるよ
JIN FILM
ドジュンの父、チン・ユンギが作った映画輸入及び製作会社。映画『悪魔の陽の下に』『ホーム・アローン』『タイタニック』を輸入したり投資する。
ペクドゥデガン社、ファジン映画社
- 1990年代に主に芸術映画を輸入、製作
サムスン映像事業団、CJエンターテイメント
- 映画の輸入、製作、配給
- CJ:ケーブルテレビ局の運営、番組制作(OCN、tvN、Mnetなど)
→ドラマ:ケーブル映画チャンネルなどの言及
ヒョンソン日報
ヒョンソン日報はスニャングループと婚脈で連結されたメジャーメディアで、スニャングループと緊密な関係を結ぶ。
中央日報、朝鮮日報
- 法曹出身で内務部長官を歴任したホン・ジンギは、娘のホン・ラヒをイ・ビョンチョルサムスングループ会長の三男イ・ゴンヒと婚姻させて婚脈関係を形成し、その後はサムスングループ系列会社として中央日報と東洋放送を創立(その後サムスングループから系列分離)
→ドラマ:スニャン創業者の一番孫チン・ソンジュンとヒョンソン日報社主の長女が結婚 - 中央日報系列のテレビ局JTBC(中央東洋放送)
→ドラマ:『財閥家の末息子』を放送したのがJTBC - 朝鮮日報や東亜日報の社主ー家も様々な財閥家と多様な婚脈で絡み合っている
- 朝鮮日報の社主は方(パン)氏だが、韓国でこの漢字を伝える時には「モ(四角、方位、場所、方法)のパン」という
→ドラマ:ヒョンソン日報社主がモ氏
ミラクル インベストメント
チン・ドジュンの投資会社で盆唐(ブンダン)の土地240億で始まり、海外投資とアジン自動車、スニャン百貨店を買収して規模を育てた後、個人を対象としたミューチュアルファンドを手放し資産運用投資会社に生まれ変わった。
未来アセット資産運用
- パク・ヒョンジュ会長が個人投資会社で始まり、国内初のミューチュアルファンドと開放型ファンドを発売した
- 大宇証券を買収した
→ドラマ:スニャン証券を買収
現代証券
- 「バイミラクル ファンド」の直接的なモチーフとなった「バイコリア ファンド」を作ったのは現代グループ傘下の現代証券で、1999年の発売当時2ヶ月にもならず、5兆ウォンをかき集めた
→ドラマ10話:「バイミラクル ファンド」の広告は当時の「バイコリア ファンド」の広告を利用
ニューヨーク ミッドウェイ34番街 ドーナツ店
ドジュンの助力者オ・セヒョンが好きだった米国ドーナツ店で、ドジュンがチン会長に頼んで国内進出、フランチャイズ展開した。
クリスピークリームドーナツ
- シン・ドンビンロッテ会長が米国留学時代に好んだドーナツであり、2004年ロッテショッピングを通じて国内に導入
その他
モチーフとなっている(類似点のある)企業・団体をリストアップします。
- スニャン物産 企画調整本部 未来資産管理チーム → サムスングループ未来戦略室
- スニャン流通グループ → 新世界グループ
- スニャン金融持株 → サムスン金融ネットワークス、韓国投資金融持株
- スニャンカード → LGカード
- ヨンジン半導体 → 韓国半導体、ウォンジン電子
- ハンド製鉄 → ハンボ鉄鋼工業
- ニューデータ テクノロジー → セロム技術
- 4989ホームショッピング → サムグショッピング
- POWER RECORD → TOWER RECORD
- Amazom.com → Amazon.com
場所
- 正心齋 → 承志園
- スニャン医療院 → サムスン医療院
- スニャン病院 → サムスンソウル病院
- ソウル近郊のレーシングサーキット→ 龍仁AMGエバーランドスピードウェイ
おまけ
- スニャン自動車の「アテナ」として登場 → 現代の「グレンジャーXG」
- スニャン自動車の「アポロ」として登場 → GM大宇の「マティス」
わかるとおもしろい時事ニュース
ドラマには、韓国の大統領選、9.11テロ、日韓ワールドカップ、オリンピックなど、実際にあった時事ニュースがたくさん含まれています。
その中でも、わかるとドラマがおもしろくなる韓国の時事ニュースを簡単に解説します。
1987年 KAL機爆発事故
北朝鮮の工作員、金賢姫(キム・ヒョンヒ)の大韓航空機爆破事件として覚えている人も多いかもしれません。
1987年11月29日,バグダッド発ソウル行き大韓航空機(乗客・乗員115人)が,ビルマ沖上空で爆発,失踪した事件。同年12月1日,事前に同便を降りていた日本旅券をもった男女2人がバーレーン警察に逮捕され,服毒自殺を図った。このうち生き残った金賢姫(キムヒョンヒ)(旅券名蜂谷真由美)が,朝鮮民主主義人民共和国の指示で同便に爆破工作を行ったことを自供した。翌1988年のソウルオリンピックをひかえて,大韓民国のイメージ・ダウンをねらったものと考えられている。
ドラマでは、小さいドジュンがチン・ヤンチョル会長がいつ帰ってくるか電話で聞いたところ、この飛行機に乗ることを知り、別便にするように伝えますよね。
イラクのバグダードを出発し、第一経由地アブダビ、最終経由地バンコク、目的地がソウルという飛行機で、チン会長はアブダビで降りたため無事でした。
実際の事件とは微妙に変えてあるところもあります。
実際の事件 | ドラマ | |
日時 | 1987/11/29 | 1987/10/29 |
便名 | KAL858 | CAL828 |
もし、ドラマでドジュンがチン会長を救っていなかったら―
チン会長のモチーフとなっているサムソンのイ・ビョンチョル会長が実際に亡くなった時期(1987/11/19)がちょうどこの頃なんですが、これは偶然なのか…
偶然だったとしても、なんかすごい
盆唐(ブンダン)の土地
一言でいうと、お金持ちが住むニュータウン。
ソウル郊外の城南(ソンナム)市にあり、1990年代初めに開発された「韓国で一番住みやすい街」とも言われています。
整備された高級アパートが立ち並び、高級デパート、カフェ通りが点在。ソウルの江南駅からのアクセスもよく、自然や教育施設も整っています。
ドジュンが会長のクイズに答えて買ってもらった土地だよね
1997年 IMF通貨危機
韓国ではこう呼ばれることが多いですが、1997年アジアの広範囲で「アジア通貨危機」が起こりました。
アジア通貨危機(アジアつうかきき、英語: Asian Financial Crisis)とは、1997年7月よりタイを中心に始まった、アジア各国の急激な通貨下落(減価)現象である。東アジア、東南アジアの各国経済に大きな悪影響を及ぼした。(一部省略)
これによってタイ・インドネシア・韓国は、その経済に大きな打撃を受けIMF管理に入った。
出典:アジア通貨危機
韓国の金融機関は、国内外から大量の借入金を調達し、これを企業や不動産などに投資していましたが、1997年1月のハンボ鉄鋼(ドラマでは「ハンド製鉄」)の不渡りを契機に、サンミグループの倒産、ジンロ、ハンラ、ヘテなど…次々と経営破綻し、大量の不良債権を抱えることに。
さらに外資系金融機関が韓国から資金の引き上げをしたことにより、外貨準備高が急激に減少、韓国ウォンが急落して経済が難しくなり、1997年末に韓国はIMF(国際通貨基金)に支援を要請しました。
翌年の1998年までに2万あまりの企業が倒産し、130万人以上が失業したそう。
ドラマにあったアジン自動車(=キア自動車)の不渡りもこの時だよ
この国家一大事に韓国を救おうと、国民が自主的に自分の持っている金(ゴールド)を寄付する「金集め運動」がおきました。
金塊から置物、新婚夫婦の結婚指輪、ネックレス、子供のお祝いの指輪、金歯や牧師の十字架、金メダルまでなんて話もありました。
このようにして集まった金が約227トン。2011年韓国銀行の金保有量が39.4トンであったことと比較すると、どれほどの規模で集まったのか推測することができます。そうして集まった金はほとんど輸出されました。金を輸出して稼いだドルは22億ドルで、1997年11月基準で韓国の利用可能な外貨準備高であった20億ドルを上回る規模です。
出典:IMF通貨危機当時、韓国で金を集めていましたが
スニャン家の嫁たちも金製品を寄付するのをアピールしてたよね
ドットコムバブル
ドットコムバブル(dot-com bubble)は、インターネット関連分野が成長し、多くのIT関連ベンチャーが設立され、1995年~2000年にかけて株価が急速に上昇した状態のことで、2001年にバブルがはじけ、急落しました。
この現象はアメリカを中心に世界的に広がり、インターネットバブル、ITバブル、ドットコムブーム、TMTバブルとも呼ばれます。
NASDAQ(ナスダック)総合指数 / アメリカ
KOSDAQ(コスダック)総合指数 / 韓国
ドラマでは、チン・ファヨンを没落させた種目「ニューデータテクノロジー」が登場しますが、これは実際の種目で歴史的な記録を残した「セロム技術」だと推定されます。
セロム技術は1株2千ウォンもならない株価(額面500ウォン)がバブルで30万ウォンまで上がり、バブルがはじけて暴落しました。
(当時の新聞を見ると、普通のサラリーマンから億万長者へ変身した人たちが取材されています)
ドジュンはバブルがはじける直前で最大収益を上げたよね
LGカード事件(2002~2003年のカード大乱)
2000年代初頭、IMF通貨危機で縮小した国内消費を復活させるために、政府はクレジットカードの発行を奨励、カードに対する規制が大幅に緩和されました。
クレジットカードの現金サービス限度額が廃止され、クレジットカード領収書宝くじ制度を施行するなどした結果、クレジットカードの使用額は1998年に63兆6千億ウォンだったのが2002年には622兆9千億ウォンになり、10倍近く急増。
経済的な能力なしにカードを発行された多くの人々が借金を返済できず、約数百万人が信用不良の沼に陥り、当時業界1位だったLGカードは新韓金融グループに売却されました。
ドラマでは、この事態を知っているドジュンがチン・ドンギ社長にスニャンカードを売却、スニャンカードはLGカードと同じ危機に陥ったのでした…。
当時の広告やニュースもそのままドラマで使われているよ
最後に:「4-2」と呼ぶのも本当だった
かなり長くなってしまいましたが…、いかがでしたか?
まだ書ききれないんだけど…つかれた
原作小説を執筆した山景作家はインタビューで、「サムスン、現代などをモデルにしたのはあっているが、ドラマにはフィクションも多く混ざっている」と話しています。
それにしても、こうした現代史、人物を絡めてストーリーを作り上げた作家はすごい!!
そして最後に―
ソン・ジュンギが自分を「4-2」(四番目の息子の次男の意味)と呼んでいますが、実際にLGグループで職員がオーナー家族をそのように数字で呼ぶ場合があるそう。
親戚が多いうえに、行事などでの順番や席を決めるなど、職員の立場では誰が上なのか区別するのが難しいので、記者や外部関係者に説明するときも数字を多く利用するんだとか。
ちなみに今のサムスンでは、フラットなコミュニケーションのためにイ・ジェヨン会長を「Jay」(英語名)、「JY」(イニシャル)、「ジェヨン様」と呼んでいるそうです。
長文、読んでくださってありがとうございました~