正直なところ、このドラマを取り上げるのはやめようかと悩みました。
前よりはよくなったと言われるものの、今もなお問題になっている軍隊のダークサイドを描いているからです。
韓国在住の身としては、旦那や家族、知り合いも経験してきたことであり、目にする全ての韓国男子が通過しなければならない兵役の苦い部分、
うすうす知っていながらも、見ないようにしてきたことをあからさまに見せられて、胸がしめつけられるような感覚でした。
しかも、今も脱走兵はいるわけで。
でも、この長年の社会問題を正面からドラマにして、エンタメと両立しちゃってるのがすごい!
ということで、『D.P.-脱走兵追跡官-』を見た感想と見どころを、ネタバレなしでお伝えします。
かなりリアルだよ
『D.P.-脱走兵追跡官-』あらすじと作品情報
公開日 | Netflix 2021.08.27. |
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話数 / 年齢制限 | 6話 / 16+ |
原題 | D.P. |
監督 / 脚本 | ハン・ジュニ / キム・ボトン、ハン・ジュニ |
キャスト | チョン・ヘイン、ク・ギョファン、キム・ソンギュン、ソン・ソック、チョ・ヒョンチョル |
簡単なあらすじ | 脱走兵を捕まえる「軍務離脱逮捕組 D.P.」のジュノ(チョン・ヘイン)とホヨル(ク・ギョファン)が、様々な事情がある彼らを追いかけて、今まで知ることができなかった現実に直面していく… |
では、さっそく感想だよ!
『D.P.-脱走兵追跡官-』感想:ネタバレなし
全韓国男子の苦い追憶。兵役。
そんなノスタルジックな感性をまとって始まるオープニングがまるで短編映画のようで、いつもならスキップするのに毎回見てしまうほどに魅了されつつも、内容はダークで重く、深刻。
閉ざされた軍隊という組織の中で、長年続いてきたと思われる悪習、上下関係の洗礼を誰もが受けなければならず、それが酷いいじめや暴力、性的嫌がらせに発展、
それが脱走兵、自殺や事件の元凶になっている軍隊の闇を描いた作品。
もちろん脱走兵の話なので、中でも極端なケースではありますが、韓国人の旦那によると、多かれ少なかれそういうことはあるんだとか…。
軍隊で殴られたことがない人はいないよ
一方、脱走兵の事情を探り、推理&追跡していくおもしろさや、D.P.コンビの掛け合い、テンポよく進んでいくストーリーに見始めたら一気見したくなる全6話。
泥臭く陰湿な内容があっても、ほどよく現代的なスタイリッシュさがあって、エンタメとしても成立してます。
とくに5~6話の疾走感と衝撃がすごく、最終回はエンドロールの最後に決定的なシーンがあるので絶対見るべし!
しかもそれがドラマの設定である2014年に実際に軍隊で起きた事件を想起させることに気づいたら、誰もがただ事ではないと思うはず。(→シーズン2につながってます)
日本人にはなじみのない軍隊の話ではあるものの、会社や学校などの組織や集団も同じことが言え、他人事ではなく考えさせられる社会派ドラマの逸品。
次は見どころだよ~
見どころ解説
演技派の俳優たち
笑顔を封印したチョン・ヘイン(アン・ジュノ 二等兵役)
ソン・イェジンと共演したドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』の年下彼氏のイメージが強いチョン・ヘインも、『刑務所のルールブック』で演じた軍人役を思い出させる演技で好演。
表に出さなくても、いろんな感情を内に秘めた繊細な演技を見せてくれます。
暗さを吹き飛ばしてくれたク・ギョファン(ハン・ホヨル 上等兵役)
重く暗いテーマに飄々として笑いを提供してくれたのが、主人公の相棒役を演じたク・ギョファン。
最近は映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』や『キングダム:アシンの物語』で独特な存在感を発揮していましたが、このドラマでファンが急増。
なんともいえない彼の独特さに魅了されるはず。
周りを固めるカメレオン俳優たち
D.P.の2人をなんだかんだ言ってサポートしてくれる上司役を演じたのは、いつも味のある演技を見せてくれるキム・ソンギュン。
ドラマ『応答せよシリーズ』や『熱血司祭』、映画『悪いやつら』など、一度見たら忘れられなくなる俳優です。
その他、昨年除隊したコ・ギョンピョ(写真右下)が特別出演していたり、実はまだ軍隊に行っていないのが信じられない悪役を演じたシン・スンホ(写真中央上)など演技派が脇を固めています。
中でも5~6話の主人公ともいえる脱走兵を演じたチョ・ヒョンチョル(写真左上)は、演じながら役のために10kg痩せたとのことで、演技もまるで狂気!
左上から横へ『D.P.』、『サムジングループ英語TOEICクラス』、『ホテルデルーナ』、『アルハンブラ宮殿の思い出』、『コインロッカーの女』、『建築学概論』
これが全部同じ人だったなんて!
見ていながら全く気づきませんでした。
すごいカメレオン…
俳優が錯覚するほどのリアリティ
原作はキム・ボトン作家のウェブトゥーン(WEB漫画)『D☆P 犬の日』。
作家が実際にD.P.で脱走兵を捕まえていたというから、そのリアリティはまぎれもなく、
ウェブトゥーンを見て一発殴られたようだったという監督曰く、どこまで見せるか、リアリティとのバランスに最後まで悩んだそう。
演じる俳優たちも兵役を経験してきたので、かなりリアルにつくりこまれたセットにインタビューでは口をそろえて感嘆してました。
特に軍隊部屋はテレビの位置まで同じだったそうで、チョン・ヘインもとっさに昔の兵役時代のように自分の名前を言ってしまったとか。
それだけリアルだったんだね
最後に:『D.P. シーズン2』がさらにすごい!!!
約2年の時をかけて、D.P.のシーズン2が公開されました。
シーズン1で衝撃を受けた最終回がシーズン2へつながっていて、さらに重くシリアスな展開に…
特に、シーズン2の第3話「カーテンコール」の余韻がすごく、国民の義務とはいえ、こんなに苦しい軍隊にいなければいけないのか、やりたいこともできず、夢をくじかれる若者の心情が歌にこもっていて何度も聞いてしまいました…(ミュージカル『ヘドウィグ』のOSTで、演じたのはミュージカル俳優)
さらに終盤では、国を相手にまるでケンカを売っているんです!
国民に義務を課していながら、多くの事件が起きているこの状況をそのまま放置し傍観している国に責任を問う超骨太な内容に感嘆すること間違いなしです。
こんなタブー的なこともドラマにしちゃうのがすごい