あまりデスゲームは好きじゃないんですが、つい見てしまいました…
正直なところ、ニュースで騒がれているほどおもしろく感じなかったものの(もっとハマる韓ドラ多し)、ベールに隠されている特別出演もあり、なんてぜいたくに名優をキャスティングしたんだ!と驚き。
そして、賛否両論ある韓国での反応を見ているうちに、隠されたヒントが実はいろいろあったことに気づき、それがわかると一転、急におもしろくなりました!
伏線とかに弱くて…
この記事では、『イカゲーム』を見終わったからこそわかる伏線や、監督インタビューによる制作秘話をふまえて解説&考察していきます。
ネタバレなので、ドラマを見てから読んでね!
米テレビ界の最高の栄誉とされるエミー賞で、英語以外の言語による作品が受賞するのは初めて。
- 主演男優賞:イ・ジョンジェ
- 監督賞:ファン・ドンヒョク
- ゲスト賞:イ・ユミ
- 視覚効果賞
- スタントパフォーマンス賞
- プロダクションデザイン賞
456という数字の意味
主人公のギフンが競馬場で当てたのが456万ウォン、ギフンの番号も456番、ゲームの参加者は456人、そして賞金も456億ウォン。
なぜ456という数字なんでしょう?
飛び石ゲームの時、参加者が番号を選んだシーンを覚えていますか?
真っ先に選ばれた数字は真ん中の数字で、普通の人の心理として最初や最後を避け、大多数に埋もれて安心できる真ん中を選ぶことが多いと説明されていましたよね。
1桁の数字の真ん中は「123 456 789」
これは普通の人々やその心理を代弁してくれる数字であり、
黒幕であり成功した最上流階級である「1」を持つおじいちゃんに対し、ギフンが崖っぷち生活をしている最底辺であるように、一番最後でもあるのが「456」でした…。
実はこれ、韓国で最も多かった解説なんですが、脚本も書いた監督としては、そこまでの意図はなかったそう…(残念ㅜㅜ)
「最初、私が10年前にこの脚本を書いた時は、1,000人が参加し、100億ウォンをかけて競争する内容だった。でも10年過ぎたら、100億ウォンが少なく感じて賞金を上げた。
歴代ロト当選金の中で最も大きな金額を調べてみると、草創期の400億受けとった方が最も大きかった。それよりも少し上げて、一人当り1億ウォンぐらいで設定した。
誰かの解釈を見ると、1と10の中間だという分析が出ていたけど、解析してくれた方の創造性がすごい。(笑)」
出典:“오징어게임 시즌2? 힘들어서 당분간은…” 황동혁 감독 인터뷰
それでも韓国での解説を見たら、「なるほど~」って思っちゃいますよね。
いろいろ解釈する楽しみもあるよね
実は壁に全て答えがあった
あ~、なんで気づかなかったんだろう!
あれほど参加者が必死に知ろうとしていたゲームの内容は、全て壁にヒントが描かれていたんです。
参加者が多い時はベットに隠れて見えませんでしたが、人が少なくなるにつれ、壁に描かれている絵が見えてきます。(写真下)
特に最後3人だけ残った時には、ベットがないのでよく見えます。
一見、模様のようですが、今までやってきたゲームが全て、まるでオリンピックの競技のようにピクトグラムで絵に描かれているんです。
全然気づかなかった…
監督曰く、競争している間はお互いを見合っているので壁は見られない。でも競争が終わってスペースができたら、その壁に全て隠されていたんだ―と、ぞっとする戦慄を感じられるんじゃないかと思ったそう。
誰かが気づいて協力しあっていたら、変わってたはず
今だからわかる黒幕のヒント
今思えば、いかにも弱そうなおじいちゃんがよりによって1番かよ!と思ったのは私だけじゃないはず。
どの俳優も演技がとてもよかったんですが、中でもおじいちゃん、イルナムのボケがかった自然な演技にはだまされました。
1番目のゲーム「だるまさんがころんだ」では、みんなが恐れおののいている中、一人真っ先に飛び出して楽しそうにゲームをしていたのがイルナム。
その後、ゲームを存続するかどうかの投票をしますが、なぜか投票順序は逆の456番から、結果を左右する最後の投票は1番のイルナムでした。
ここでイルナムは×を選択し、一旦ゲームは中断、それぞれの日常生活に戻ります。
最終回でイルナムが話しているように「ゲームを強要したことはない」というのは事実で、むしろ外に戻っても地獄が待っていることを感じさせるために一旦ゲームを中断させたと考えられます。
外に出てから偶然?コンビニの前でギフンとイルナムは再会しますが、おじいちゃんはこう言います。
「ここがもっと地獄だ。」
結局、ほとんどの人が自発的にまた戻りゲーム再開。
サイダーとゆで卵が足りなくなり、夜まさに闇の中での生死をかけた大乱闘が起きますが、いつの間にか一番高い所でイルナムが「もうやめろ」と叫んだところで、フロントマンがゲーム終了にします。
ここで黒幕だってわかったよ
警察官のファン・ジュノがフロントマンの部屋に忍び込んで、参加者リストを探している時、1999年度は確かに1番から名簿があったのに、現在である2020年のリストは2番から始まっています。(1番は黒幕であるイルナムだから)
お漏らしをしてしまったイルナムの腰にギフンが自分の上着を巻いてあげたので、イルナムはギフンに「この服を着てけ。この服がないと見下される」と1番の上着をあげました。
この言葉は、管理する側は1番は殺さないように優待していることの裏返しで、どちらにしてもイルナムがギフンを助けようとしたんでしょう。(結果そうなりましたが)
このビー玉ゲームをしている場所が、昔の街並みで、イルナムが昔住んでた近所だ、家だと喜んでいましたが、これはボケてたんじゃなくて、主催者ゆえに本当に再現したものだったんですね。
ビー玉ゲームで2人組を決める時に、一人あぶれたミニョがカクテキ(韓国での”みそっかす” 弱くてどこのチームにも入れない子供)扱いで生きていました。
これは誰からも相手として選ばれない可能性が高いイルナムのために作られた救援措置だと考えられます。
フロントマンがVIPの到着を知らせた時、金の猫の仮面をかぶった主催者の手が見えましたが、老人の手でしたよね。
わかって見れば、こんなにもたくさんイルナムがゆえに起きたことやヒントが多かったんですね。
理由がわかるとおもしろいね
今だからわかる大物俳優のヒント
1話でいきなりコン・ユが登場するなんて!
この特別出演にもビックリしましたが、まさかイ・ビョンホンまで登場するとは。
ずっとマスクをかぶっているフロントマン、最初から英語のセリフだったので、英語ができる俳優は誰かな?なんてふと思ったんですが、
韓国で英語を流暢に話す大物といえば第一人者がイ・ビョンホンなんです。
でもまさかここで出てくるとは思わず、ビックリ!!
でも今思えば、監督は大きなヒントくれてたんですよね。
ヒントはビー玉ゲームの時のこの2人の会話にありました。
お金を稼いでここを出たら何をしたいか聞いていた時、モヒートを知らないセビョクにジヨンが教えてあげたのが、「映画見てないの?イ・ビョンホンが出てるヤツ」
「モヒートへ行って、モルディブ一杯やろう」という笑いをさそうセリフは『インサイダーズ / 内部者たち(2015)』に実際にあるセリフ。
警察官ファン・ジュノが探している兄がフロントマンじゃないかというのは、うすうす気づいていた人もいたかと思いますが、さすがのイ・ビョンホン登場はサプライズだったはず。
ファン・ドンヒョク監督は元々映画監督で、『天命の城(2017)』ではイ・ビョンホン主演、『トガニ 幼き瞳の告発(2011)』ではコン・ユ主演だったので仲がいいそう。
2人ともそれぞれにお酒を飲みながら、気分がいい時にこっそりお願いしたそうです笑
シーズン2が楽しみ~
なぜギフンは赤い髪にした?
終盤、唐突に赤い髪にカラーしたギフン。
ちょっと奇抜すぎて何か意味があるのか気になった人も多いはず。
コン・ユ演じる募集係とメンコゲームをした時、メンコは赤と青だったし、イカゲームの会場では管理側が赤い制服、参加者が緑のジャージと色でわかりやすく分けられていました。
管理側がいつも赤なので、気持ちを切り替えたギフンが赤い髪にしたのは、攻撃にまわることを示唆するのか―
それとも、今までまるで無彩色だった現在の生活を捨て、ポップなゲームの世界、あのイカゲームの世界に住むことを示唆するのか―
なんて考えてみたんですが、監督インタビューによると、全く違う理由からでした。
「私はこの作品を書いて撮影しながら、しばらくギフンとして生きていた。作品をだいたい撮り終わる頃、こんなことを思った。
イルナムが死んでから、ギフンは自分自身を取り戻そうと正常に戻ろうと努力するけど、果たして正常に戻ることができるんだろうか。ゲームをする前の自分に?
私がギフンなら美容室で座って何を考えるだろうか。いつものギフンなら絶対にしないことをするんじゃないかと思った。ギフンが前とは違うギフンだからこそ。それじゃ、私ができる最もクレイジーなことは何だろうという考えで赤い髪にした。これはギフンの怒りのようなものである。」
出典:“오징어게임 시즌2? 힘들어서 당분간은…” 황동혁 감독 인터뷰
確かにあんなゲームに参加したらクレイジーになるよね
裏話:美術館のような空間のモチーフは?
出演した俳優たちがセットに入ると、写真を撮るのに忙しかったという、まるで現代美術館のような舞台。
衣装だけでなく、ゲーム空間も色とりどりな色を活用して「童心に帰ったようなファンタジーな空間」として演出されています。
実際にこれはすべてイルナムが設計したものではないか。自分が行って遊ぼう。本人が童心に帰りたい気持ちで作ったもので、色やセットも子供たちが好むように作った。
出典:황동혁 감독이 말하는 <오징어 게임>의 관람 포인트
すべり台やジャングルジムが巨大なのも、自分たちが子供の頃に感じたように作ったというのですが、さらに恐怖感アップ。
迷路のような階段
特に印象に残ったのは、まるでキッズカフェにいるようなポップで迷路のような階段。
この迷路式廊下や上下段差が強調されている立体の階段は、エッシャーの階段からアイデアを得たと聞き、納得!
また、ゲームルームと宿泊施設や管理者室などがめまぐるしく接続された空間全体の構造は「アリの巣」からヒントを得たとのこと。
奥深い内部に宿泊施設があり、迷路のような階段を追っていくと部屋やゲームルームが出てくる。
最初はボーイスカウトのようにしようと考えていたという管理側の制服も、アリのように一体に見えるようにジャンプスーツになり、首を隠すためにフードをつけ、仮面もアリにヒントを得た構造になったんだとか。
確かにアリっぽい!
監督曰く、管理側は赤の制服&仮面、ゲーム参加者は緑色のジャージ、2つのグループが団体服を着るために、色のコントラストに気を使い、それぞれ個性がでない群衆に見えるようにしたかったそう。
そのおかげで、あの階段をぞろぞろ歩いていく様子はまるでアリのように見えますよね。
巨大な宿泊施設
宿泊施設は倉庫型スーパーのコンセプトで、最上段の人が恐怖を感じるようなインパクトあるオブジェにしたかったとのこと。(さらにコロシアムや体育館の観客席のような形で段差をつけて積み上げた)
また、ゲームに負けた人たちはリボンのついた箱に入れられますが、美術監督によると、リボンをつけたのは、ゲームを設計した人の思考では「神のような立場で機会を与えてあげた」と考えるはずで、大きな機会をプレゼントしたし、死も焼却してあげるのも配慮だという考えからだそう。
あのリボン気になってたよ
こうした壮大なセットを作れたり、自由な演出ができるのもNetflixだからこそですが、
- ゲームが単純でわかりやすかったぶん、人間ドラマにフォーカスされたこと
- ビジュアル的にインパクト大、興味をそそる世界観だったこと
これが世界的に広く受け入れられた成功要因なのかもしれません。
ちなみにフロントマンの仮面は『スターウォーズ』のダース・ベイダーのオマージュだそうです。
モチーフがわかるとまたおもしろいね
最後に:シーズン2は年末、3は2025年公開予定
【追記】
- 2022/6/13『イカゲーム』のシーズン2の制作を公式に発表
- 2023/11/22からリアル版『イカゲーム:ザ・チャレンジ』配信
- 2024/8/1 『イカゲーム シーズン2,3』の配信日発表
- シーズン2:2024年12月26日配信
- シーズン3:2025年配信予定(最終章)
兄を探していた警官ファン・ジュノは今人気急上昇中のウィ・ハジュン。
彼がこのまま死ぬわけなく、兄であるフロントマン(=イ・ビョンホン)がどうしてこうなったのか突き止めるはず。
ギフンも飛行機に乗らず、ゲームに乗り込み、主催者側がどんな人たちなのか突き止めにいくはず。
一方、監督はシーズン2について具体的な計画はまだなく、考えただけで疲れると話しています笑。
シーズン1を撮るのも大変だった。全て書いて、制作して、演出する、一人でするプロセスが精神的、肉体的にとても大変で、しばらくシーズン2はすることができなそうだ。あまりにも多くの方々が楽しんでくれたので、しないと言ったら騒動になりそうだし。
頭の中に絵はいくつかあるんだが、実は今回『イカゲーム』を仕上げる過程で映画のアイデアを思いついた。それを先にすると思うし、シーズン2はNetflixと話してみて、する場合は映画の次の段階ではないかと思う。
出典:“오징어게임 시즌2? 힘들어서 당분간은…” 황동혁 감독 인터뷰
現在、監督は映画『KOクラブ』の草案の作業中だとのこと。
Netflix側もこれだけ世界中で盛り上がっているドラマをほっておくわけがないはずで、さらに資金調達してくれるんじゃないでしょうか。
(監督は)もしシーズン2を作るとなれば、一人ではしないだろう。作家陣と多様な経験のある監督たちと一緒にすることを考えたいと述べた。
出典:황동혁 감독, ‘오징어게임’ 시즌2 여부 질문에 “생각만해도…”
シーズン2はまだ少し時間がかかりそうですが、ファン監督だけでなく、作家や他の監督たちと案を練りながら制作したら、さらにおもしろくなりそうですね!
イ・ビョンホンやコン・ユもきっとまた出演するはず!
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