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『パラサイト 半地下の家族』白黒版を見た感想:名実ともに古典映画の風格

『パラサイト 半地下の家族』白黒版を見た感想:名実ともに古典映画の風格

最初は「白黒にしただけで内容変わらないんじゃ…」なんて正直思ったんですが、やっぱり感じ方が違いましたね。

映画の内容についてはもうすでに他の記事で書いていますので、この記事では『パラサイト 半地下の家族』白黒版を見た正直な感想カラー版との感じ方の違いについてお伝えします!

この記事を書いた人

韓国在住10年。ほぼ毎日韓国ドラマ、映画三昧です。特に作品性が高く、メタファーや伏線、隠れネタがあるものが大好物。映画をテーマに卒論執筆、映画・ドラマのエキストラ経験あり。

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『パラサイト 半地下の家族』白黒版の感想

予告編でも感じられますが、白黒になっただけで、一気に古典作品になったようで、また別の作品みたいです。

正直、もう4~5回はこの映画を見ているので、内容的にはよく知っているんですが、何か別の普遍的な人間模様を見ている感じです。

『パラサイト 半地下の家族』白黒版スチールカット
出典:NAVER:기생충
パンダ夫人

時代や国など背景がわからなくなる感じ?

まるで未来の古典作品

映画を見ながら黒澤明監督や今村昌平監督を思い出しました。

ふりしきる雨のせいなのか、人間くさくて、どこか可笑しさがある人間模様のせいなのか、私が巨匠といわれる監督たちについて詳しいわけではないんですが、昔見たイメージと結びついたようです。

『パラサイト 半地下の家族』白黒版スチールカット
出典:NAVER:기생충

白黒だとカラー情報が入ってこないので、あまり背景には目がいかず、代わりに「水」、「雨」、「涙」のようなエレメントが引き立ち、

コントラストがはっきりしている人の顔に目がいくので、人の表情、感情がよくわかります

パンダ夫人

こんなに目に涙をためてたんだ…とか、カラーで見た時よりも表情にひきつけられたよ

『パラサイト 半地下の家族』白黒版スチールカット
出典:NAVER:기생충

今も昔も変わらない人間の生きざまを見せてくれるような、そんな客観的な視点。

『パラサイト 半地下の家族』の北米配給会社NEONの発表によると、白黒の映画は、ポン監督の長年の夢であった。(省略)

ポン監督はロッテルダム映画祭の上映会の後、観客との対話で「黒澤明、ジャン・ルノワール、ジョン・フォード、アルフレッド・ヒッチコックのような巨匠が白黒映画を作った時期があった」と言い、「私たちの世代は、古典映画を白黒だと思った」と述べた。彼は「私の映画を白黒にしたら、古典映画になるんじゃないかというくだらない考えが浮かんだ」と付け加えた。

出典:봉준호 감독이 ‘기생충’ 흑백판 만든 건 냄새 때문?

ポン・ジュノ監督の夢、じゅうぶん叶ったんじゃないでしょうか。

この映画を見ていて、白黒映画の巨匠たちと名実ともに肩を並べた感がありました。

パンダ夫人

歴史に残る作品だしね~

臭いの表現はイマイチ?

ポン・ジュノ監督が白黒版を作った理由、カラー版との違いについては、こちらの記事に書きました。

>>『パラサイト 半地下の家族』白黒版を公開する理由:なぜ今モノクロか?

白黒版を作った理由として、下の3つをあげています。

  1. 臭いの表現
  2. 夢とオマージュ
  3. 新たな挑戦

1の「臭い」は映画で表現するのが難しいので、白黒で人物にフォーカスすることによって、臭いをより強く感じられるという仮説でした。

でも個人的には、白黒で「臭い」に関する感情はもちろん感じたものの、「臭い」自体はカラー版の方がもっと感じました…。

なぜなら半地下の家のリアルな作りこみや、高級住宅との対比など、美術がすごくよかったからです。

白黒だとあまり背景に目がいかないので、貧富の差もカラー版の方がもっと強く感じられましたね。

音、BGMが鋭く聞こえる

白黒で目から入ってくる情報が少ないため、ちょっとしたBGMの音もよく耳に入ってきました。

雨の日に社長家族が急に帰ってきて、テーブルの下でギテクたちが息をひそめてかくれている時、BGMはギテクの感情によくあっているのがわかったり、

今まで知らなかった地下シェルターへの入り口が開き、下へ降りていく時の『サイコ』のような音がこんなに耳につく音だったのに初めて気づきました。

カラー版ではそこまで意識していなかったんですが、白黒版ではまるで聞き耳をたてるように鋭く聞こえたのが不思議です。

パンダ夫人

感覚が鋭くなるのかな?

で、結局白黒版はどうだった?

もう何回も見ているため、最初に感じた衝撃はないですが、また別角度から見るおもしろさがあります

でも、初めて見る人にはやっぱりカラー版で、半地下の家のカビっぽい壁だったり、地下シェルターのどんよりとした灰色の空間だったり、そうしたディテールをもっと感じてほしいというのが本音。

パンダ夫人

美術がすごくよかったから、白黒だともったいない気もする…

とはいえ、そもそもこの白黒版はサイドBとして作られているものなので、見返す時、また違った見方をしたい時におすすめです!

パンダ夫人

これはこれでおもしろいよ!

『パラサイト 半地下の家族』白黒版と比べたい巨匠の作品

最近はほとんど白黒映画を見ることがなかったんですが、この映画のおかげで巨匠のおもしろい作品を知ることができました。

キム・ギヨン監督『下女(1960)』

ポン・ジュノ監督が尊敬する監督の1人として必ず出てくるのが、キム・ギヨン監督

『パラサイト 半地下の家族』も『下女』の影響を受けていると公言されていて、白黒ではありますが、ストーリーや構図など斬新で衝撃的です。

キム・ギヨン監督『下女』ポスター
出典:NAVER:하녀

ポン・ジュノ監督曰く「韓国映画界の『市民ケーン』のような作品だ」と話しているくらい韓国の監督たちに影響を与えている作品です。

パンダ夫人

『市民ケーン(1941・米)』はよく映画史上のベスト作品として高く評価されているよ!

すごくおもしろいので超おすすめです!!

今村昌平監督『復讐するは我にあり(1979)』

この映画は白黒ではないですが、ポン・ジュノ監督が世界的に権威ある映画雑誌 “Sight & Sound” にクリエイティブな影響を受けた映画として選んだ作品の一つ。

(キム・ギヨン監督の『下女(1960)』も入っていました)

この他にも、ポン・ジュノ監督が今までクリエイティブな影響を受けた映画として選んだ作品は、おもしろくて見ごたえがある作品ばかりなので、ぜひ見てみてくださいね!

パンダ夫人

サスペンス・スリラー系が好きな人には超おすすめ

最後に:『パラサイト 半地下の家族』白黒版、監督からのメッセージ

白黒版って少しとっつきにくい印象ですが、見てみると意外とおもしろかったです。

ポン・ジュノ監督も白黒版についてこう語っています。

私は今まで二度このバージョンを観ていますが、初めは寓話のように感じられ、まるで昔の物語を見ているかのような不思議な感覚になりました。二度目は、映画がより現実的で鋭く感じられ、まるで刃物で切りつけられるかのようでした。俳優たちの演技がさらに際立ち、より登場人物を中心に映画が展開しているようにも思えました。

観客のみなさんが、カラー版の鑑賞体験と比較しご自身の『パラサイト』モノクロ版の鑑賞方法を見つけてくれたら嬉しいです

出典:「パラサイト 半地下の家族」IMAX&モノクロバージョンの日本劇場公開が決定!

人それぞれ感じ方は違うと思いますが、アカデミー賞とカンヌ映画祭で最高賞を受賞したこの作品を、いろんな角度で楽しんでみてくださいね!

パンダ夫人

色だけでこれだけ感じ方が違うのも、おもしろい体験だったよ!

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