昨年ヴェネツィア国際映画祭で初公開されたものの、コロナ禍のため2021年4月にNetflixでリリースされた作品。
韓国ノワール好きなら知らない人がいない『新しい世界』のパク・フンジョン監督の新作となれば見ないわけにはいきませぬ~!!!
覚悟はしていたけど、やっぱりものすごい出血量…
でもそれと対比するように美しい映像美で、久々に映画らしい空気感にシビれました。
では、『楽園の夜』の感想と見どころ、韓国情報をネタバレなしでお伝えします!
『新しい世界』とはまた違い、主人公に女性が出てくるのも見どころ
『楽園の夜』あらすじと作品情報
公開 / 時間 / 年齢制限 | 2021 / 131分 / R18+ |
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原題 | 낙원의 밤(楽園の夜) |
監督 | パク・フンジョン |
出演 | オム・テグ、チョン・ヨビン、チャ・スンウォン、パク・ホサン、イ・ギヨン |
あらすじ | 敵対組織からボス以上に一目置かれているテグ(オム・テグ)。 ある日、テグの唯一の家族である姉と姪が殺される。仇を打ち、身を隠すためにチェジュ島に向かったテグは、そこでチェヨン(チョン・ヨビン)に出会う。 |
『楽園の夜』感想:ネタバレなし
これぞ映画、これぞ韓国ノワール。
おもしろいかどうかというより、この空気感が好きかどうか。
暴力が好きなわけではないですが、そこにはなにか美学が感じられて、久々に映画らしい独特な空気を味わって満足しました。
それにしても…
血だらけの残虐なノワールにもかかわらず、全体の印象として”海のさざ波のような穏やかさ”は何だろう。
監督がなぜこのタイトルにしたのか―
「楽園は誰もが楽しめる美しい場所、でも夜は何も見えなくて楽しめない。それはテグとチェヨンも同じだ」
青く薄暗い色の静寂…でもそこには哀しさ、虚しさがただよい、主人公である孤独な男と女が死を覚悟している心境、楽園の美しさも感じられない冷めた感情そのものなのかもしれない。
韓国の沖縄にあたるチェジュ島の美しい背景だからこそ、これでもかと殴り、蹴り、刺し、血まみれになる残虐さと対比される皮肉さ。
この映画で初めてオム・テグを知ったんですが、声といい存在自体がもうノワールのために生まれてきたよう。
あのボソボソとした声は不思議と吸引力があって忘れられません。
それに『ヴィンチェンツォ』で知名度急上昇のチョン・ヨビンも、ドラマとは全く違うたたずまいで、キモがすわった女ノワールがカッコいい。
ありがちな孤独な男女がくっつくんじゃなくて、適度に距離があるのもよかったです。
そして個人的には『花遊記(ファユキ)』などのコメディの印象が強いチャ・スンウォン、めちゃくちゃ筋金入りのヤクザでその凄み、カリスマがハンパないです。
ヤン社長を演じたパク・ホサンは『刑務所のルールブック』で口足らずの憎めない役が印象的でしたが、ここではボスであり、でも状況によって化けの皮がはがれてくる表情がなんともよかったです。
他のベテラン俳優も含め、役者のメリハリきいた熱演が光ってました。
独特な迫力ある暴力シーンがよくもこんなに考えられるもんだと感心しつつ、やっぱり何かどんでん返し的な展開があるのは、さすが『新しい世界』の監督。
それにネタバレになるので言えませんが、「普通の映画ではありえない!ここまでしないでしょー」とかあって、ちょっとびっくりしましたが、これもラストのためにもよかったのかも。
韓国での評価
評価(10点満点): 6.85点
好評 |
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不評 |
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思ったより評価が低くて残念…
人によって好き嫌いが激しいのかも…
知っておくといい韓国情報
予備知識なしに見ても充分楽しめますが、知っていたらもっと映画がわかる韓国情報です。
ムルフェ(水刺身)
これはチェジュ島ではないですが、海の観光地として有名なソクチョで食べたムルフェ。
簡単にいえば、アワビや刺身が入った冷たいスープです。
氷も入っているので暑い夏には大人気。
ムルフェとは、ムル=水、フェ=刺身と名前の通り、刺身に氷水とコチュジャン(唐辛子味噌)、キュウリ、梨などを加え、ニンニク、青ネギなどの薬味を入れていただく料理。
出典:ムルフェ
チェジュ島ならそのおいしさはなおさら!
主人公のいろんな想いがつまったムルフェ、きっと映画で見たら食べたくなりますよ~
焼酎ハルラサン
ムルフェといっしょに、いやそれ以上に映画に登場したのがチェジュ島の焼酎”ハルラサン”。
ハルラサンはチェジュ島のど真ん中にある山の名前(しかも韓国で一番高い山)で、ユネスコ世界遺産にも登録されています。
そのハルラサンの新鮮な水をつかって作られた焼酎が”ハルラサン”です。
ラベルに書かれた数字はアルコール度数。映画みたいに普通はあんなに飲めないよ~
最後に:これから『楽園の夜』を見る方へ
韓国ノワールといえば真っ先に名前がでてくる『新しい世界』の監督作品だけに、同じような作品を期待してしまいがちですが、
これはこれで、ノワール美学がありながらもまた違ったよさがあります。
何より主人公として女性がいるのがどう変わってくるのか。
ぜひ見てみてくださいね!
主人公がどうなるのか、ラストをお楽しみに~!