『ソウルの春』なぜ韓国で熱狂したのか? 日本公開 8/23

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』感想&原作比較:女性よ、凛として声をあげよう

『82年生まれ、キム・ジヨン』スチールカット
出典:NAVER영화:82년생 김지영

ずっと見たいと思っていたこの映画、『82年生まれ、キム・ジヨン』をようやく見ました!

すぐ見なかったのは、まずは韓国で社会現象にもなった原作のベストセラーを読んでから見たかったからです。

実際に読むまでにかなり時間がたっちゃいましたが、結果、小説も読んでよかったです。

この記事では、映画を見た感想だけでなく、小説との違い知っておくといい韓国情報をお伝えします!

パンダ夫人

日本でも話題になったよね

この記事を書いた人

韓国在住10年。ほぼ毎日韓国ドラマ、映画三昧です。特に作品性が高く、メタファーや伏線、隠れネタがあるものが大好物。映画をテーマに卒論執筆、映画・ドラマのエキストラ経験あり。

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パンダ夫人
目次

『82年生まれ、キム・ジヨン』あらすじと作品情報

『82年生まれ、キム・ジヨン』スチールカット
出典:NAVER영화:82년생 김지영
公開 / 時間 / 年齢制限2019 / 118分 / G
原題82년생 김지영(82年生まれ、キム・ジヨン)
監督キム・ドヨン
出演チョン・ユミ、コン・ユ、キム・ミギョン
あらすじ1982年の春生まれであるジヨン(チョン・ユミ)。

時々どこかに閉じ込められたような苦しさを感じることもあるけど、夫デヒョン(コン・ユ)とかわいらしい娘、 そしていつも会えなくても、家族がジヨンにとって心の支えになっている。

でもいつからか、まるで別人になったかのように話すジヨン。

夫は妻が傷つくのが怖くて、そのことを打ち明けることもできず、ジヨンは、夫にいつも「大丈夫」と笑って見せるが…

『82年生まれ、キム・ジヨン』感想:ネタバレなし

泣きました。本を読んだ時も。

ごく普通のよくある会話、場面に思えても、女性だったらそこに痛いほどの共感を覚えてしまう―そんな映画です。

私は原作を読んでいたので、映画ではどう表現されるのか期待して見たんですが、やっぱり小説と映画では役割的にちょっと違いますね。

映画では演技力ある俳優たちのおかげで、感情的にゆさぶられたり、痛いほど共感できるシーンを目の当たりにしましたが、女性として生きることについて深く考えさせられたのは原作の方でした。

原作は、精神科の担当医がカウンセリングをした内容を記録する形で、ジヨンが生まれてから学校へ行き、就職、結婚し、子育てするまでに経験したことが順を追って書かれているので、女性が生きていく上での全般的な話になっています。

また、原作は小説ではあるのものの、実際の統計やニュース、事件などに裏付けされています

主人公のジヨンという名前も、82年生まれで一番多かった名前だそう。キムも韓国で一番多い名字ですね。

『82年生まれ、キム・ジヨン』スチールカット
出典:NAVER영화:82년생 김지영

日本も韓国も状況がよく似ていて、私も原作のキム・ジヨンの話を読みながら、自分の話が鮮明によみがえり、忘れていた昔のことを思い出しました

自分が学生の頃はそういうものだと思っていたけど、今思えば名簿をはじめ、なぜ何でも男子から始まってたのかとか、満員電車で痴漢にあったことや、就職活動が大変だったこと、父や母に言われた言葉…。

ある会社では女性が毎日お茶を入れ、同期の男性社員と給料も違うなど…。

その頃はよくわからず、そういうものかと受け入れていたけど、今思えばやっぱりおかしかった。

今は10~20代の頃と比べたら、図太くなって?いろいろ言えるようになったけど、それでもまだ言いたくても我慢していたり、言わないで黙っていることはないだろうか?

原作の”あとがき”には、日本の読者へ向けて著者がこんな言葉を書いています。

女として生きること。それにともなう挫折、疲労、恐怖感。とても平凡でよくあることだけれど、本来は、それらを当然のことのように受け入れてしまってはいけないのです

勉強したくてもできなかった母たちが娘たちを大学に行かせてくれたように、今度は私たちが次の娘世代のために、何より自分のために一人ひとりがぞれぞれの場で声をあげる時なんだと感じました。

おかしいことはおかしいと、したいことはしたいと。

『82年生まれ、キム・ジヨン』スチールカット
出典:NAVER영화:82년생 김지영

原作はジヨンの経験を淡々とつづり、1冊丸ごと女性を取り巻く環境について問題提起していましたが、映画では出口が見えず、ただ耐えていたジヨンが少し変わって、未来のジヨンが少しだけ見られます

映画では小説のように細かい事例をたくさんあげられないので、どうしてもエピソードが絞られてしまい説明や深みが足りない感がありますが、小説にはない一筋の希望の光を与えてくれました

また、ジヨンの母を演じたキム・ミギョンや、特に夫を演じたコン・ユは、小説では淡々と書かれていた人物に感情的に血を通わせて、小説とはまた違う厚みがでていました。

『82年生まれ、キム・ジヨン』スチールカット
出典:NAVER영화:82년생 김지영

映画だけ見てもそれなりに感じるところはありますが、やっぱり原作を読んでいた方が映画のセリフの背景までよくわかります

ぜひ原作と映画、両方セットで鑑賞するのがおすすめです!

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パンダ夫人

原作では精神科のカウンセラーは男性で、最後にえっ?という”おち”にびっくり

予告編について補足

正直なところ予告編やキャッチコピーはオリジナルの韓国の方がよかったです。

日本の予告編はスケールが大きい感動物語のようになってしまって、メッセージもなんだかしっくりこないんですよね…

何よりこの話はジヨンの話であると同時に、映画を見たり、本を読んだあなたの話でもあって、まだ進行中なんです。

字幕はないんですが、韓国版の予告編で雰囲気が伝わればうれしいです。

韓国のキャラクター予告編↓

前半:妻ジヨン編

したいことがたくさんありました。

世界一周を夢見て
就職できたのがうれしくて
誰かに会ってときめいてたあの時

でも、今私はちゃんとやりきっているんでしょうか?

「おまえが、ときどき別人になる」

みんなが知っているけど、誰も知らなかった
82年生まれ、キム・ジヨン

後半:夫デヒョン編

全部知ってると思ってました。

みんなこうやって生きてるんだと
他の人のように僕たちも
これもまあ、あたりまえのことだと

「ジヨン、ジヨンだよな?」

でも、なぜもっと早くわからなかったんでしょうか?

あなたと私の物語
82年生まれ、キム・ジヨン

パンダ夫人

コン・ユが別人になった妻を見てうろたえたり、うろたえる夫を好演しているよ

韓国での評価

観客数 367万人

評価は10点満点で、観客9.1点と高評価、記者・評論家は6.8点。

記者たちの評価は低めですが、観客は70%以上が女性で、かなりの共感を得ています。

好評
  • こんな映画を作ってくれてありがとうございます。そして、すべてのキム・ジヨンに感謝、愛しています。ぜひ見てください
  • 見もしない人が評価テロ(悪評を書く)に来るほどすごい映画です是非見てください
  • 考えさせられる映画。世界の多くのキム・ジヨンが共感できる映画
  • 本を読んで多くのことを考えさせられたので、映画が公開されて嬉しい!
  • 私は男性ですが、私も男友達も泣いて出てきました。キム・ジヨンさんを応援します!
  • 心が痛いです。母のことをすごく思い出しました
  • 誇張されたところは全然なく、ストーリーの構成がしっかりしたいい映画でした
不評
  • 男性も女性もそれぞれの場所で苦しみがあるが、それを男性、女性で分けて見なければならないという映画に問題がある
  • 大韓民国の少子化に大きな貢献をしている映画
  • フェミニストが占領した~
  • これは何がしたい映画なんだ?男が女の奴隷になれってことか?
  • コン・ユとチョン・ユミは好きな俳優なのに、どうしてこんな映画を撮ったのか
評価、口コミ出典:NAVER영화:82년생 김지영

この原作自体が韓国でフェミニストの物議をかもしたので、残念ながら不評については映画自体の評価というよりフェミニストに対する反発が多かったです。

パンダ夫人

残念…

知っておくといい韓国情報

予備知識なしに見ても充分楽しめますが、知っていたらもっと映画がわかる韓国情報です。

韓国社会に問題提起した原作

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原作は韓国で2016年に出版、100万部以上のベストセラーとなり、社会にも大きな影響を与えました。

当時少女時代のスヨンやBTSのRMなど、アイドルをはじめとする芸能人も話題にするほどでしたが、一方でRed Velvetのアイリーンがこの本を読んだことに反発した一部ファンが、彼女の写真を燃やしたり、グッズを破損した様子の動画をアップして問題にもなりました。

多くの女性の共感を得ているこの小説、これを読んだり、支持する芸能人は”フェミニスト”というレッテルをつけられて一部批判されてしまう傾向にありますが、

フェミニストって何でしょう?

そんなニュースを聞く度に、小説や映画のメッセージとフェミニストという言葉、大衆が感じているイメージと違う気がしてモヤモヤします。

フェミニストと聞くと、何か女性だけを優遇しようとしたり、男性より女性に価値をおくようなイメージがありますが、男性を嫌ったり差別したりするものでは全然なくて、実際には「女性だから」とか性別が理由で何かをさせられたり、できなかったりすることをなくそうってことですよね?

でも、残念ながら言葉から連想されるイメージがまだ強いようです。

韓国では若い男性を中心に同作品への嫌悪感が強く、映画のレビューサイトでは公開前から不当に低い点数をつけて評価の星を落とす「評点テロ」が横行した。インターネット上には出演した俳優への悪口が書き込まれた。

なぜ若い男性はキム・ジヨンを嫌うのか。1990年生まれの男子学生に聞いてみると「80年代生まれならともかく、僕らの世代は男が優遇されているなんて全く感じない。むしろ逆じゃないかといいたい」と即答した。

出典:「82年生まれ、キム・ジヨン」が映す韓国社会の葛藤

韓国では男性は兵役の義務があったり、そもそも若者も就職が大変で、恋愛、結婚、出産をあきらめていたり(”三放世代=3つを放棄しなければいけない世代”と言われる)、そんな先行き不安な状況にあります。

また、韓国は儒教による男女観が何百年と続いてきた社会でもあるわけで、いろいろと複雑な問題です。

男性にも男性という縛りがあり、女性にも女性という縛りがまだありますが、個人が性別の縛りから解放されて、したいことができるように応援するのが本来の”フェミニスト”の目的で、何せ女性が男性と同じスタートラインに立てず、縛りが多かったため”フェミニスト”って言葉ができたんじゃないかなあ…(個人的考え)

パンダ夫人

ジェンダーフリーとか違う言葉だったら誤解がないのかも?

とにかく、この小説が韓国社会に問題を投げかけたのはまちがいありません。

韓国人女性がストレスを一番感じること

それはお正月とお盆です。

映画にもそんなシーンがでてきますが、日本もけっこう似ているんじゃないでしょうか。

最後に:男性にも見てほしい『82年生まれ、キム・ジヨン』

正直、男性からしたらあまり見たくない内容かもしれません。

パンダ夫

僕もそうだったけど、誘われて見たよ

”フェミニスト”とか何だか仰々しい形容詞をつけられてしまうことが多い映画ですが、特別な話ではなくて、女性だったら普通によくある話を取り上げただけなんですよね。

あなたの奥さんやお母さんがどうやって感じてきたか、そしてあなたの娘も将来経験するかもしれません。

男性にとっても、女性にとっても、普通だと思っていたことをもう一度ふりかえるいい機会になるので、ぜひ興味のある方は見てほしいです。

また、原作のダイジェスト版のストーリーブックは0円ですぐ見られるので、さっと見たい人におすすめです。

パンダ夫人

韓国と日本の女性に関する統計やコメントがけっこう突き刺さるよ

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