まずこの映画をすすめる前に言っておかなければなりません。
すごい刺激的..というか普通のエロティックさではなく、型破りなエロスがありつつも、ストーリーが絶品。
『オールド・ボーイ』で世界に衝撃を与えたパク・チャヌク監督の作品だといったら伝わるでしょうか。
それでは、『お嬢さん』の感想をネタバレなしでお伝えします!
『お嬢さん』あらすじと作品情報
公開 / 時間 / 年齢制限 | 2016 / 144分 / R18+ |
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監督 | パク・チャヌク |
原作 | サラ・ウォーターズ『荊の城』 |
原題 | 아가씨(お嬢さん) |
出演 | キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン |
簡単なあらすじ | 子供の頃、両親を失って莫大な財産を持っている秀子お嬢様(キム・ミニ)。 彼女のところへ新しいメイドがやってくるが、メイドの正体は、有名な女泥棒の娘でスリの少女スッキ(キム・テリ)。莫大な財産を手に入れるため、秀子を誘惑してお金を奪おうとする詐欺師である伯爵(ハ・ジョンウ)の策略だった。 伯爵とスッキは独自の方法で秀子の心を揺さぶろうとするが… お金と心を奪うために互いにだまされて欺き合うその結末は― |
- 第71回 英国アカデミー賞(外国語映画賞)
- 第69回 カンヌ国際映画祭(バルカン賞)
- 第53回 百想芸術大賞(映画大賞 パク・チャヌク)
- 第37回 青龍映画賞(主演女優賞 キム・ミニ、新人女優賞 キム・テリ、美術賞)
『お嬢さん』感想と見どころ:ネタバレなし
この映画はただのエロティックな映画ではありません。
なにより二転三転するストーリー展開が本当におもしろい!
『このミステリーがすごい!2005年版』の海外部門で第1位になったサラ・ウォーターズの『荊の城』が原作なので、そのおもしろさは保証付き。
当初サラ・ウォーターズは原作の表記を断っていたようですが、映画を見て気が変わり、5回も見るほど気に入ったそう。
しかも、舞台を19世紀のイギリスから日本統治時代の朝鮮へ置き換え、パク・チャヌク監督の世界観が炸裂しています。
日本独特なエロスを大噴出しつつ、格式ある美術やコメディでオブラート。
破格なエロティックな場面でも構図的によく考えられているので、汚らしくならず、芸術として昇華してしまっています。
特に入浴シーンは、五感を刺激させられる官能的な空気に息をのむほど。
秀子お嬢様を演じたキム・ミニは、青龍映画賞の主演女優賞など、この年多くの賞を受賞。
今や『ミスター・サンシャイン』『二十五、二十一』で有名なキム・テリは、この作品が長編映画のデビュー作で1,500人の中から選ばれたというから驚きです。(彼女も受賞多数)
ハ・ジョンウはもう言うまでもなく、実力も人気もあるモテモテ俳優。
正直、ちょっと目をそらしてしまう場面もありますが、そんな状況でも笑わせてくれるのがハ・ジョンウの魅力でもあります。
チョ・ジヌンの変態っぷりもすごかった笑
おもしろさ | 二転、三転するストーリー展開、その見せ方に感服 |
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露出度 | +++ いろんな種類のエロやシーンが多いです |
見どころ | ・二転、三転するストーリー展開 ・豪華絢爛で和洋折衷な美術・衣装、日本的様式美、日本的エロス ・女優、俳優の演技力、体当たりの演技 |
※あくまで私の評価です。(普通が星3つ基準)
おもしろくて刺激的、しかもかなりエロスな映画を見たい時
突出した映像美を堪能
特筆すべきは舞台美術。
リュ・ソンヒ美術監督がカンヌ映画祭で韓国人として初めてバルカン賞(最も優れた美術、音響、撮影などに贈られる技術賞)を受賞したように、韓国映画の中でも最上級のセット美術が見られます。
和洋とりまぜた美術が豪華絢爛ですばらしく、日本的な様式美も斬新だし、パク・チャヌク監督はもちろん、そのアイデアを具現化したリュ・ソンヒ監督の造詣の深さに感心してしまうほど。
特に写真の書斎は和洋折衷、書庫は英国の図書館風でギリシャのコロシアムのような階段に畳が続き、秀子が朗読する場所は床の間の花のようなイメージ、そして畳のところに日本庭園を表現したんだそう。
衣装や小道具など、全てこだわって選ばれたのがわかるよ
- 和洋折衷の屋敷は日本の重要文化財である六華苑がロケ地(ただし、外観はCG合成、内部はセット)
- 精神病院は韓国の西大門刑務所
原作小説と映画の違い
原作と映画は舞台だけでなく結末も違います。
原作は19世紀のヴィクトリア朝のロンドンが舞台。
この産業革命でできた労働者階級と古典的な貴族たちが同時に存在した葛藤と跳躍の時代を、韓国に置きかえて、1930年代の日本統治時代、身分制があり親日派という一種の貴族がいた時代を選んだとのこと。
原作も映画も3部に分かれていますが、『お嬢さん』では原作部分にあたるのは1部のみで、残りの2~3部はパク・チャヌク監督の創作。監督が原作を読んで「こうなってほしい」と見たいものを作ったとのこと。
各部によって視点が変わり、どんでん返しがあるのが原作と映画に共通する魅力ですが、『お嬢さん』では支配・搾取されてきたエロスからの解放とその享楽が醍醐味で、爽快感が味わえます。
サラ・ウォーターズが気に入るのも納得
最後に:パク・チャヌク監督のエロス表現
『お嬢さん』はかなり露出が多く、エロティックな内容で話題になりましたが、
パク・チャヌク監督作品はただエロティックなだけではなく、それは何かを表現するためのものであり、見せ方も構図など考えられているんですよね。
監督がヴァンパイアを描いた『渇き』もすごくエロティックで斬新なんですが、本能的な欲望が性行為と吸血で重なっています。
逆に、監督の最新作『別れる決心』は全く露出がないのにエロスを感じるのもすごい!
ぜひ他のパク・チャヌク監督作品も楽しんでくださいね。
刺激的なものが多いけど、おもしろいよ~