2022年カンヌ映画祭の監督賞受賞で、一気に脚光を浴びた作品。
アカデミー賞では最終ノミネートに残らなかったものの、韓国で最も権威のある映画賞で7冠をとるなど、最近では最も注目された韓国映画です。
しかも、パク・チャヌク監督の今までのイメージとは違う、また新しい恋愛サスペンス。
ではどんな作品なのか、ネタバレなしで感想、見どころ、韓国での評価をお伝えします!
- カンヌ映画祭(監督賞)
- 青龍映画賞(最優秀作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞、脚本賞、音楽賞、人気スター賞)
- 大鐘賞映画祭(作品賞、主演男優賞、脚本賞)
- 百想芸術大賞(映画部門 大賞、女性最優秀演技賞、監督賞)
『別れる決心』あらすじと作品情報
公開 / 時間 / 年齢制限 | 2022 / 138分 / G |
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原題 | 헤어질 결심(別れる決心) |
監督 | パク・チャヌク |
出演 | パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ、パク・ヨンウ |
あらすじ | 山の頂上で墜落した男の変死事件。 担当刑事のヘジュン(パク・ヘイル)は、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)と出会う。 夫が死んでも特に動揺する様子もないソレに、ヘジュンは尋問や張り込み捜査をしながら、彼女への関心がどんどん大きくなっていくが… |
『別れる決心』感想:ネタバレなし
パク・チャヌク監督といえば、『オールド・ボーイ』『お嬢さん』など過激で衝撃的なイメージですよね。
そこへ『ラスト、コーション』でセンセーショナルなデビューをしたタン・ウェイが主演となれば、これはものすごい刺激的な映画なんじゃないかと思う人も多いはず。
が、今までの監督作品のような刺激や露出はありません。
逆に、露出がなくても存在するエロス、奇抜なアングルと雰囲気が醸しだす独特な作風がおもしろい!
特によかったのが、刑事を演じたパク・ヘイル。
彼の作品はいくつか見ていますが、なんだか今までの演技と違う。
ちょっと奇妙というか…
もちろん役のためですが、なんかぼーっとして心あらず、かと思うと急に取りつかれたように目を見開く―
不眠症に悩みつつ、事件も未解決、霧が立ち込める場所に、主題歌も『霧』、ぼわーっと青白く、クラゲがゆ~らゆら。
特に映画序盤はまるで彼のモノローグのようで、事件を追うつもりが美しい容疑者の魅力にひかれてのまれていく、その心理描写が幻覚のようでもあり、演出が秀逸。
なので、「刑事と容疑者」、「サスペンス」といった言葉から想起する雰囲気とは全く違う毛色の作品であり、パク・チャヌク監督だからと過去作品のような期待をしていると肩透かしをくらうことになります。
男女の間で、口にしなくても2人だけが感じとれる空気の変化ってありますよね?
それを楽しむのがこの映画。
息づかい。視線。匂い。まとった空気。
そういった意味では、とても大人な映画です。
監督曰く、
「周りの人に『(今作は)大人の話だ』と言うと、『ということは露出も多くて、強い映画なんだね』という反応があった。その時に気づいた。逆を行かなければならないと。大人の話であるだけに、強烈に吹き荒れるものより、密かに隠された感情に集中する映画を作るために、刺激的な要素を少なくしなければならないと思った結果だ」と伝え、公開を待ちわびる人々の好奇心を刺激した。
出典:映画「別れる決心」メディア試写会インタビュー
実はところどころに性的なものを感じさせるものもあって、派手な露出がなくても、いや、ないからこそエロティックなのかも。
見どころ解説
愛してると言わずに愛してると言えるのか?
監督と共同で脚本を書いているチョン・ソギョンさん曰く、「愛の告白ほど大変で嫌なものはない、”愛してる”という言葉を使ってしまえばそれで終わってしまうから」と。
それでこの映画は、「愛してる」という言葉を使わないロマンスにしようと。
どんなことを言えば「愛してる」と言わずに愛してると言えるのか?
この映画は「愛してる」と言わずに、深い愛を表現した映画なのです。
また、パク・チャヌク監督はインタビューで、自分が恋愛映画を見る時は退屈になるので、緊張感がなくならないように愛の関係に疑いが介入すれば、もっとドラマチックになるんじゃないかと考えたそう。
そんな2人がシナリオを書いた本作は、どんな恋愛映画になるでしょう?
ぜひ、どうやって愛を表現しているのか見てみてください。
刑事と容疑者だったら疑わざるをえないよね
ちょっと変わった刑事像
パク・チャヌク監督は脚本を書く前から、パク・ヘイルのような刑事をイメージしていたそう。
ちなみにパク・ヘイル自身は意外と一度も刑事役をしたことがなく、どんな俳優でも一度はするような典型的な刑事像ではないことが気に入ったんだとか。
監督はスウェーデンの推理小説『マルティン・ベックシリーズ』の刑事から発想を得たそうですよ。
全く仕事に理解を示そうとしない奥さんにブチブチ言われながらも、寝食を忘れるほど事件にのめり込む。非常に人間臭いヒーローは数多の名探偵名刑事とは一味も二味も違う。超人では無いのですね。一応名刑事で通ってはいるようだが、それは粘り強いことと同義のように思える。
出典:マルティン・ベック=シリーズ雑感
ヘジュンの机の上にもマルティン・ベックシリーズが積んであるよ
クスッと笑えるユーモア
パク・チャヌク監督と言えば、どうしても刺激的なイメージがあるせいか、笑いとは無縁のようですが、実はクスッという笑いがちょこちょこあります。
(でも、あくまでクスッ。笑いそびれる可能性も…)
あのオヤジギャグみたいなの監督が考えたのかな?…なんて別の意味でちょっとおもしろかったりします。(実際にそうらしい笑)
演出にもいろんな遊びがあるよ!
韓国での評価
観客数:189万人
評価(10点満点):観客 8.96点、記者・評論家 8.71点、ネチズン 8.64点
総じてけっこういい評価です。
好評 |
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不評 |
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映画やセリフが詩的だったせいか、コメントも詩的な表現が多かったよ
最後に:『別れる決心』の深い魅力
脚本を書いたチョン・ソギョンさんが映画を見て、「この脚本を自分が書いたのか?」と本人が驚くほど、感情が入った演技と雄大な景色で映画らしい品格がある作品になっています。
さらに『別れる決心』には、緻密に計算された対比や暗示があって、知れば知るほどおもしろくなるんです!
本作を鑑賞したら、こちらもぜひ!
わかるともっとおもしろいよ!