実はこの『エクストリーム・ジョブ』、韓国の歴代興行収入1位を記録、観客数1600万人を超えた大ヒット作!
アカデミー賞で4冠、カンヌでパルム・ドールを受賞した『パラサイト 半地下の家族』も大ヒットしたものの、韓国では『エクストリーム・ジョブ』の記録まではいきませんでした。
(もちろん趣向が全然違うので、数字だけで比較するのはナンセンスですが…)
映画好きな人や評論家ほど好きであろう『パラサイト 半地下の家族』に対して、大衆的なコメディである『エクストリーム・ジョブ』は気楽に誰でも楽しめます。
この記事では、感想だけでなく、これから見る人のために鑑賞ポイントと知っておくともっと映画が楽しめる韓国情報もあるので、ぜひチェックしてくださいね!
『エクストリーム・ジョブ』あらすじと作品情報
公開 / 時間 / 年齢制限 | 2019 / 111分 / PG12 |
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原題 | 극한직업(極限職業) |
監督 | イ・ビョンホン(俳優とはまた別) |
出演 | リュ・スンリョン、イ・ハニ、チン・ソンギュ、イ・ドンフィ |
あらすじ | 昼夜を問わず走りまわるも実績はなく、ついに解体の危機を迎える麻薬捜査班。もう後がないコ班長は、国際犯罪組織の国内麻薬密輸情報を入手し、ジャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンの4人のチームメンバーと一緒に潜伏捜査に乗り出す。 24時間監視のために犯罪組織のアジト前にあるチキン家を買収し、偽装営業をするようになるが、予想外に絶対味覚を持ったマ刑事の隠れた才能でチキン屋は一躍グルメ店として口コミが出始める… |
日本のキャッチコピー”揚げる大捜査線”っていうのもおもしろいね
『エクストリーム・ジョブ』感想:ネタバレなし
とりあえず笑えます!
なんだかジャブみたいな小刻みな笑いがずっと続くような感じ。テンポがよくて、最初からひきこまれちゃいました。
出演は『7番房の奇跡』や『キングダム』のリュ・スンリョンをはじめ、演技幅が広い個性際立つ名優たち。脇役もクセのある俳優たちばかりで、真面目な顔しててもなんだか笑えます。
特に「麻薬捜査班」のメンバー5人がそれぞれ個性的で魅力全開でした。普通は主人公だけにスポットライトがあたることが多いですが、この映画はメンバーそれぞれに見せどころがあってバランスよかったです。
映画全編を通してコントのような掛け合いがおもしろく、どんどんおかしい方向にはまっていく状況がおもしろさを倍増!
韓国人ならみんな大好きな”チキン”(フライドチキン)だったり、街やお店の風景だったり、昇給や上下関係だったり、なんとも平均的な韓国らしさがギュっと詰まってます。
ちなみに映画のタイトルがカタカナ英語になると、変にかっこいい感じになっちゃいますが、原題『극한직업:極限職業』の方が雰囲気出てますね。
ひとまずこの映画を見ると韓国人の国民食”チキン”がすごく食べたくなることまちがいなし!
私も映画見て食べたよ~
おもしろさ | |
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チキン食べたさ | |
成分 | 笑い65% アクション30% ロマンス5% |
- おもしろい映画を見たい人、笑いたい人、気楽に映画を見たい人
- 韓国映画をはじめて見る人
韓国での評価
観客数は公開から15日で1,000万人突破!最終的に1,626万人までいきました。
評価は10点満点で、平均9.2点の超高評価。ただし、記者・評論家は平均6.8点。
好評 | ・久しぶりに本物のコメディ映画を見た ・2時間ずっと笑いながら見た ・ひたすら韓国式のおもしろい映画 ・続編をつくってほしい、また見たい ・キャラクターができあがっていて、掛け合いもよく、悪役たちの表情や方言、悪口も印象的でよかった |
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不評 | ・笑いのつぼが自分には合わない ・無理に笑わせようとあがいてる感じ ・自分が薄情で冷静なのか?全然笑えない ・どこで笑わせるか予想できる感じ ・幼稚だ |
特に印象的なコメント抜粋↓↓↓
- 笑えて泣きながら見たのは初めて。飲み物は気をつけないといけない。飲んだら吹き出す。
- 韓国映画の中で歴代級だった。クククとずっと笑ったので、映画館を出る時、お腹がすごい痛かったこと以外は全部よかった。
- みんなおもしろそうだったけど、自分はおもしろくなかった。映画館でみんな大笑いしてずっと笑ってるけど、自分はただ失笑。観客がずっと笑ってるので、なぜか自分も笑わないといけないような感じになったけど、笑えなかった。
人によるけど、圧倒的に好評が多かったよ
鑑賞ポイント5つ
『エクストリーム・ジョブ』の鑑賞ポイントをお伝えします。ネタバレはありません。
コントのような掛け合い
この映画、会話がおもしろいんです!
韓国映画やドラマが好きな人だったらわかると思いますが、韓国では욕(ヨク:悪口、ののしり)がすごく多いんです。
でもこの「ヨク」は日本語の悪口とはちょっと感覚が違くて、文章じゃなくて、なんというか「バ〇」「アホ」みたいな掛け声というか。
その種類が日本とは比較にならないほど多くて、ケンカする時や相手を罵倒する時はもちろん、親しい間柄で愛情表現に使われたりもして、映画やドラマなどではコミカルでテンポのいい会話には欠かせない、潤滑油のような感じ。
「ヨク」も方言や言い方でも感じ方が違うし、会話のあちこちに韓国人ならみんな知ってるチェーン店や、車のメーカー、テレビ番組だったり、あるある!みたいなのが出てくるんですが、こういうおもしろさを翻訳で伝えるのは本当に苦労しそうです。
字幕翻訳する人は大変だなあ
とはいえ、もし芸人でいったらリアクションギャクや体を張ったギャクっぽいのも全部含まれてるので、わかりやすく笑えますよ!
映画を見た後に振り返ると、映画全編がコントみたいです。
大人が真剣に遊んで作った映画って感じ
どんどんおかしい方向にはまっていくストーリー
「あらすじ」からわかりますが、チーム解散の危機に直面しているところへ、麻薬組織の情報を入手。犯罪組織のアジト前で張り込み捜査を続けるためにチキン屋を運営することに。
昼はチキン屋、夜は張り込み捜査。
ところが、チキン屋が思わぬ大繁盛!….
「なんで商売がうまくいくんだ~~~!!!」
その後の展開もまた…
本人たちは真剣なのがおかしい
俳優たちの表情
中心となる「麻薬班」のメンバーだけでなく、悪役やちょい役で出てくる人たちも合わせてみんな、すごい真面目なんだけどちょっとおマヌケ、なんだか憎めない面々。
どの俳優も他の作品では全くの別人、すごい怖い役だったり、とてもじゃないけど笑うなんてありえない作品にも出てたりするんですが、この映画ではすっかりコミカルになっちゃってます。
誰もがおもしろかったんですが、それにしてもリュ・スンリョンには脱帽です。
体でぶつかり合うアクション
アクションって言っても、かっこいいアクションっていうよりは、泥臭いアクションとでも言えばいいでしょうか。
ちょっとカッコ悪いけど、体と体でぶつかっていくアクションです。
道具に頼らず、体で張り合って長時間見せるってあまりないんじゃないでしょうか。
女同士が一番怖いかも~
効果音・BGM
チキンのお店だけあって、鶏の鳴き声がいろんな場面でうまく使われています。
チキン屋で油で揚げる音などの効果音や、チキン屋のキャッチコピー、BGMも場面によって違う音楽を短く使ってて多種多様なんだけど、どれも効果的でテンポいい感じ。
特に印象的だったのは鶏の鳴き声とチキン屋のキャッチコピー。
これは頭から離れなくなっちゃいました。
キャッチコピーは日本では短く意訳されてるね(予告編)
さらに韓国らしさに欠かせないのが、トロット音楽。
トロットは韓国の演歌ですが、日本の演歌のようにしんみりした感じじゃなくて、リズム感があって踊れるノリノリの曲。
テクノなのかEDMなのかよくわからないけれど、ビート音が独特で、私なんかはこの音だけでなんとも笑いが込み上げちゃいます。
トロットのビートだけでノリがよくなっちゃうよ
他にもハワイアンや『男たちの挽歌』の曲が使われてたりするんですが、これまた絶妙にマッチして笑えてしまうんです。
知っておくといい韓国情報4つ
予備知識なしに見ても充分楽しめますが、知っていたらもっと映画がわかる韓国情報です。
ヌンチゲーム
韓国語で”눈치(ヌンチ)”という言葉は、「機転、勘、センス、空気を読む」というような意味で、このヌンチを使って、学校や飲み会など、どこでもできる遊びがあります。
スタートしたら1から順番に数字を言っていく。(1人1回)
他の人と同時に言ったり、一番最後まで残ったら負け。
→人と重ならないように、早く数字を言って抜けなければならない
人数が多ければ多いほど難しいゲームですが、大人も子どもも楽しめます。
アイドルがやってるのを見たことある人もいるかも
有名なチキンのチェーン店
韓国人の国民食”チキン”(フライドチキン)のフランチャイズ店はたくさんありますが、ユニークなゆえに誰でも知っているのが『호식이 두마리치킨:ホシギ2羽チキン』。
名前からもわかりやすいですが、業界初「一羽の価格で2羽のチキン」を提供するフランチャイズです。
会話の中でサラッとこの名前が出てくるんですが、説明すると長くなるので意訳されるかもしれませんね。
チキンの種類
チキンには大きく分けて2つの種類があります。
写真左:基本的な「フライド/オリジナル」→塩やマスタードソースをつけて食べる
写真右:甘辛いソースをからめた「ヤンニョム」→ソースの種類もたくさんあり
お店でももちろん食べられますが、韓国は出前文化が発達しているので、注文すればだいたい30分以内には持ってきてくれます。
時々チキンがすごく食べたくなるよ
スウォン王カルビチム
ソウルから車・電車で約1時間のところにある水原(スウォン)は、水原カルビで有名です。
韓国では大きいものに“왕:王”という単語をよくつけるんですが(例:すごく大きいサイズの餃子を”王餃子”というように)、中でも水原は王カルビチム(大きいカルビの煮込み)で名が知られています。
これもおいしそう~
有名な告発番組
2012~2017年までチャンネルAで製作されていた『食べ物 Xファイル』という番組がありました。
消費者が知らない食べ物についての隠された真実や裏面を告発する番組で、
この番組に告発されるとその店や業界などがかなり大きな打撃を受けるほど影響を与えていましたが、専門家から見ると内容がかなり誇張されていたり、造作が疑われることもあり番組終了となりました。
※映画『パラサイト 半地下の家族』で韓国情報として紹介した「台湾カステラ」もこの番組が告発して大打撃を受け、あっという間に消えてしまいました。
最後に:金曜日の夜にぴったりな『エクストリーム・ジョブ』
一言でまとめると、とにかくおもしろいので見てください!
何も考えず、こういう楽しい映画を見ることこそ娯楽ですよね。
仕事から解き放たれる金曜日の夜におすすめの映画です。
気分がアップするよ~