容赦ない暴力に、救いのない結末。社会の闇と人間の狂気をえぐりだした究極の暗黒美──それが韓国ノワール。
思わず目を逸らしてしまうのに、どうしてこんなに惹かれちゃうんでしょう!?
その中でもノワール好き必見の歴代レジェンド作品を集めました!
- 私が実際に鑑賞しておもしろかった映画の中から、
- 韓国での評価が高い順にランキング
※韓国シェアNo.1の検索エンジンNAVERの数値
番外編も含め、ここで紹介している21作品中18本が韓国で「青少年観覧禁止」に指定されているので、耐性のない方はご注意ください。
(日本は同じ21作品中6本がG「全ての年齢層」になってるけど、大丈夫!?)
12位:悪魔を見た

公開 / 時間 / 年齢制限 | 2010 / 144分 / R18+ |
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原題 | 악마를 보았다(悪魔を見た) |
監督 | キム・ジウン |
出演 | イ・ビョンホン、チェ・ミンシク |
あらすじ | 婚約者を残虐に殺害された国家情報院の警護要員スヒョン(イ・ビョンホン)は、最も大切な人を守れなかったという自責感と怒りから、復讐を決意。 スヒョンは連続殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)が犯人であることを知ると、死ぬほどの苦痛を与えては逃がすことを繰り返し、凄惨な報復を始めるのだが― |
これぞ残虐の極み…
ここまでやるか?ってほど、いくところまでいっちゃってる映画なので、良い子のみなさんにはおすすめできず…
最初の20分だけでもうクライマックスじゃないかくらいな衝撃で、これで一息つけるのかと思ったら、それからどんどんエスカレート。中だるみ一切なし。
突発的な暴力、吹きだす血しぶき、見てるだけで痛みを感じる描写につい目をそらしてしまいつつも、怖いもの見たさなのかなんなのか、なぜか画面に引きつけられてしまう吸引力。

先が読めるようで読めない展開がよく、とことん容赦ない韓国映画の中でも、これは究極の究極。
チェ・ミンシクの狂気とイ・ビョンホンの狂気、哀しみは演技以上で、まさにタイトルどおり「悪魔を見た」です。
暴力はもちろん、性的にもハードなので、耐性がない人はやめておきましょう。
唯一の救いは、グロい肉体部分が偽物だとわかること。(そうじゃなかったらトラウマ)
心して見るべき作品。

台本は『新しき世界』のパク・フンジョン監督が書いたものだよ
韓国での評価(10点満点) |
8.06点(投票 14,078人) |
共感が多いコメント |
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- 第47回 百想芸術大賞(映画大賞 イ・ビョンホン)
- 第31回 青龍映画賞(撮影賞、照明賞、音楽賞)
- 第47回 大鐘賞映画祭(照明賞)
11位:毒戦 BELIEVER


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2018 / 123分 / PG12 |
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原題 | 독전(毒戦) |
監督 | イ・ヘヨン |
出演 | チョ・ジヌン、リュ・ジュンヨル、キム・ジュヒョク、チャ・スンウォン、パク・ヘジュン |
あらすじ | 長い間麻薬組織のボス「イ先生」を追跡してきた刑事ウォノ(チョ・ジヌン)の前に、麻薬工場の爆発事故現場から生存者ラク(リュ・ジュンヨル)が発見される。 組織に見捨てられた彼の助けを借りて、アジア麻薬市場の大物チン・ハリム(キム・ジュヒョク)に接触を図り、潜入捜査を進めていくが… |
『毒戦』というタイトルさながら、毒のある狂ったキャラクターが次々と登場。
そして韓国ノワールらしい残虐さ、多種多様な武器、アクションもあり、ノワール好きにはたまらない。
それに、この俳優たちの演技がいっちゃっててすごい…
潜入捜査をする刑事がここまでするか!?実際こんなに演技できる!?なんて思いつつ、そこは映画、息つく暇なく見せてくれる潜入シーンがおもしろく、想定外のハプニングでさらに吸引力倍増。


ただ、個人的には謎の麻薬王「イ先生」がなんとなく最初からわかってしまったので、最後までわからなかったらもっとおもしろかったのになーと。(たぶん感のいい人はわかっちゃう)
そしてラストシーンは賛否両論ありますが、私的にはこういう終わり方も好きなので◎。
正直、ストーリー的にはそこまで熱くなれませんでしたが、なんといっても強烈なキャラ、韓国らしいノワールを見るだけでも価値あり。
本作はジョニー・トー監督の『ドラッグ・ウォー 毒戦(2012)』のリメイクですが、原作はハードな香港ノワールでクライマックスの銃撃戦はあっけにとられるほどの破壊力。韓国ノワールと比べて見るのもおもしろいです。
そして、『毒戦 BELIEVER 2』がNetflixで配信され、1の謎のラストシーンに至るまでの空白のストーリーが展開するので、最後どうなったのかハッキリわかります。
正直、2は監督、脚本、主要俳優が変わってしまったので、ちょっと残念な面もありますが、強烈な演技や、ストーリーを見届けたい人にはおすすめ。



「イ先生」だと思っていた人は違ってたというのが2で判明…
韓国での評価(10点満点) |
8.42点(投票 4,870人) |
共感が多いコメント |
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- 第39回 青龍映画賞(助演男優賞 キム・ジュヒョク、音楽賞)
- 第55回 大鐘賞(助演男優賞 キム・ジュヒョク、助演女優賞 チン・ソヨン、特別賞 キム・ジュヒョク)
- 第55回 百想芸術大賞(助演男優賞 キム・ジュヒョク)
10位:悪人伝


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2019 / 110分 / G |
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原題 | 악인전(悪人伝) |
監督 | イ・ウォンテ |
出演 | マ・ドンソク、キム・ムヨル、キム・ソンギュ |
あらすじ | ある夜、連続殺人犯の標的になり、めった刺しにされて生き返ったヤクザのボス、チャン・ドンス(マ・ドンソク)。 一方、犯人を血眼になって追う強行犯捜査課の狂犬、チョン・テソク刑事(キム・ムヨル)。 妥協できない二人が、連続殺人犯を捕まえるために手を組む。ターゲットは一つ、ルールも一つ。先に捕まえた者が奴を好きにできる! |
正直、『犯罪都市』を先に見ていたせいか、ヤクザのボスでもマ・ドンソクが怖くなく、それどころか優しくいい人に思えてしまう副作用あり笑
でも圧倒的に強い暴力アクションはすごい!
ナイフでザクザクめった刺し、全面血みどろにもかかわらず、意外とグロテスクではないので、女性でも大丈夫かも。(韓国では青少年観覧不可なのに、日本ではG:全観客OKっていいのか!?)
それに「ヤクザ vs 刑事」の話は数多くあるけど、そこへ「連続殺人犯」が加わり三つ巴、ヤクザと刑事が協力して捜査するなんて今までになかった展開。(もちろん衝突しつつ笑)
そこへヤクザ同士の勢力争い、警察内の管轄争いも加わり、連続殺人犯も次から次へと実行し、あれやこれやとテンポよく進んでいくのであっという間。
暴力シーンは多々あれど、どれ一つ似たものがなく、見飽きない。これぞヤクザの世界っていう俯瞰ショットや狭い路地でのカーチェイスも加わって、見どころ満載。


ラストは「意外と穏便な方法で終わるのね…」なんて思っていたらとんでもない!最後の最後、悪いマ・ドンソクのキメ顔に「ううぉー」と興奮してしまうほど、この終わり方よかったです。
冒頭、この映画が「実話を基にしたフィクション」だと表示されていますが、2005年に起きた天安連続殺人事件がモチーフとなっています。車をぶつける手法や忠清南道の犬舎のオーナーを殺害したことなどは一致しているものの、実際の犯人は4人組で、金銭を狙った連続殺人犯でした。
また、劇中に登場した暴力団組織の成人娯楽室事業も、同年に起きた「海物語」事件がモチーフ。(賭博禁止の韓国で、日本のパチンコ「海物語」を改造して賭博機を作った)
実は刑事を演じたキム・ムヨルは、最初は連続殺人犯としてキャスティングされていたんですが、監督と制作陣の意向により刑事役に変更になったんだそう。このマ・ドンソクとキム・ムヨルの共演は『犯罪都市4』でも見られますよ~!



殺人犯を演じたキム・ソンギュもよかった(マブリーと張り合えるほど強い設定は不思議だったけど)
韓国での評価(10点満点) |
8.53点(投票 2,109人) |
共感が多いコメント |
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9位:悪いやつら


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2012 / 133分 / G |
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原題 | 범죄와의 전쟁 : 나쁜놈들 전성시대(犯罪との戦争:悪いやつら全盛時代) |
監督 | ユン・ジョンビン |
出演 | チェ・ミンシク、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、マ・ドンソク、クァク・ドウォン、キム・ソンギュン |
あらすじ | 1982年、釜山。解雇の危機に陥った税関職員イクヒョン(チェ・ミンシク)は、パトロール中に摘発したヒロポンを日本へ密輸するため、釜山最大の組織の若きボス、ヒョンベ(ハ・ジョンウ)と手を組む。 イクヒョンは卓越した臨機応変さと独特の親和性でヒョンベの信頼を得ることに成功し、喧嘩ではナンバーワンであるヒョンベと釜山を占領し始め、悪党の全盛期が幕を開ける。 しかし、1990年、ノ・テウ大統領が「犯罪との戦争」を宣言すると、2人の間にも亀裂が入るようになっていく― |
怖い人たちが並んで歩くポスターやBGMの印象が強烈なこの作品、バリバリのノワールだと思いきや、ヒューマンドラマのような異色のノワール。
チェ・ミンシク演じるイクヒョンが、なんとか生き延びるためにあの手この手でコネを使い、ヤクザ世界にも関わるものの、ヤクザになる腕力や根性があるわけでもなく、どっちつかずでうまく世を渡っていくんです。
ラストシーンでのイクヒョンを見れば、今までいろんなことがあっても家族を守るために必死に生き延びてきた一代記を見てきたような感慨深さ。
それにしても、韓国では血縁、地縁、学縁の人脈が強く、出身地や出身校、特に強いのは家族関係で、遠い親戚であっても縁があるとわかると絶対的な味方に早変わり!
加えて、儒教的な上下関係を重視しているのがよく出ていて笑えます。


とはいえ、ノワールはノワール。
筋が通った根っからのヤクザ演じるハ・ジョンウのセクシーさにやられる人も多く、その部下演じるキム・ソンギュンはこれがデビュー作。若きチョ・ジヌンも、検事のクァク・ドウォンも、安定した味ある演技が見られ、なんといっても必見はマ・ドンソク。
細くて弱いマ・ドンソクが見られる貴重な作品。(どうやって今の体になったのか…)
あの時代の釜山の雰囲気をよく出しているBGMが秀逸で、いろいろと見どころ多い作品。
韓国での評価(10点満点) |
8.67点(投票 8,035人) |
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- 第33回 青龍映画賞(主演男優賞 チェ・ミンシク、音楽賞、脚本賞、人気スター賞 ハ・ジョンウ)
- 第48回 百想芸術大賞(映画大賞、映画男優新人演技賞 キム・ソンギュン)
8位:最後まで行く


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2014 / 111分 / G |
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原題 | 끝까지 간다(最後まで行く) |
監督 | キム・ソンフン |
出演 | イ・ソンギュン、チョ・ジヌン、チョン・マンシク、シン・ジョングン、パク・ボゴム |
あらすじ | 母の葬儀の日、急な連絡を受けて警察署に向かった刑事コ・ゴンス(イ・ソンギュン)。 妻からは離婚を言い渡され、突然の内偵調査まで始まり、ストレスで爆発寸前のゴンスは、誤って人を轢く事故を起こしてしまう。 後戻りできない状況で、どうにかしなければならないゴンスは、誰にも見つからない場所、母の棺の中に死体を隠すのだが… その死体はゴンスが担当することになった殺人犯のものだった― |
主人公のイ・ソンギュン、相手となるチョ・ジヌンのタイマン勝負がハンパない!
邦題『最後まで行く』は直訳で、原題はもっと「行くところまで行ってやる」「とことんやってやる」というニュアンスが強いんですが、まさにその通り。
ハラハラさせられるサスペンスでありつつも、素手で戦う真っ向勝負が見もので、特に便器に頭を突っ込む場面は韓国ノワールそのもの!
泥臭く、力でねじ伏せる感じがすごい…。


イ・ソンギュン(『パラサイト 半地下の家族』の社長役)のイライラや焦り、やらかしちゃった情けない感じはピカイチで、どうしようもない奴なんだけど憎めない。
対するチョ・ジヌンはふてぶてしく、狙った獲物は逃さない恐ろしい人物で、ドラマ『シグナル』で誠実で人情味ある警察官を演じた同じ俳優とは思えないほどの変化ぶり。
最初からいきなり展開が早くて「えっ!?」といきなり始まるし、この2人の攻防がどんどん展開されていくので、すぐに没入すること間違いなし。
主人公も悪い奴なんですが、それをまた隠ぺいしちゃうような同僚もなんだか情や身内に弱い韓国らしさが出てて、ちょこっとコミカルなところもいい塩梅。
余談ですが、韓国ではポスターがB級ブラックコメディっぽく、内容と合ってないと不評でした…。(でも興行は成功)



フランス、中国、フィリピンに続き、日本でもリメイク(岡田准一&綾野剛主演)されたよね
韓国での評価(10点満点) |
8.83点(投票 3,211人) |
共感が多いコメント |
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- 第51回 大鐘賞映画祭(監督賞、撮影賞、照明賞)
- 第35回 青龍映画賞(助演男優賞 チョ・ジヌン、脚本賞、編集賞)
- 第51回 百想芸術大賞(映画監督賞、映画男優最優秀演技賞 イ・ソンギュン、チョ・ジヌン)
7位:甘い人生


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2005 / 120分 / R15+ |
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原題 | 달콤한 인생(甘い人生) |
監督 | キム・ジウン |
出演 | イ・ビョンホン、キム・ヨンチョル、シン・ミナ、ファン・ジョンミン |
あらすじ | ソウルにある高級ホテルを任されているソヌ(イ・ビョンホン)は、ルールを破った者は理由を問わず処罰するカン社長(キム・ヨンチョル)の絶大な信頼を得ていた。 そんな冷酷なボスであるカン社長には、人には言えない秘密があった。その若い愛人ヒス(シン・ミナ)に他の男がいるのではないかと疑いを抱いたカン社長は、ソヌに彼女を監視し、それが事実であれば処分するよう命じるのだが―。 |
古い作品だからと侮ることなかれ。
『箪笥』『悪魔を見た』のキム・ジウン監督作品で、現在は4Kデジタル化されているので、鮮明に楽しめるし、なにより今見てもおもしろい!
ノワールものにありがちなバイオレンスの連続ではなく、緩急ついたストーリーがよく、それでいてバイオレンスも尖ってて、絵的にすごい。
(ネタバレになるので詳細は伏せますが、あんな場面やこんな場面、CGなしに撮影しちゃうって狂気じゃないかと…)
若きイ・ビョンホンのアクションはキレッキレ、でもやられちゃってる場面も見どころあって、初めて知る感情に心揺らぐ哀愁をモノローグで包みこんだ、ノワール好きなら一度は見るべき傑作。


ノワールでありながら、タイトルどおり人生を感じさせる奥深さがあって、ムリなく笑える場面まである、時間を忘れて没頭できる作品。
他にも、若きファン・ジョンミンやチン・グ、オ・ダルス、シン・ミナ、神話のエリックなど、今でも活躍している俳優たちがホイホイ出てくるのも楽しめます。
韓国での評価(10点満点) |
8.83点(投票 6,912人) |
共感が多いコメント |
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- 第42回 百想芸術大賞(映画男優最優秀演技賞 イ・ビョンホン)
- 第26回 青龍映画賞(撮影賞)
- 第42回 大鐘賞映画祭(助演男優賞 ファン・ジョンミン)
6位:新しき世界


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2013 / 134分 / PG12 |
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原題 | 신세계(新世界) |
監督 | パク・フンジョン |
出演 | イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン、パク・ソンウン |
あらすじ | 国内最大の犯罪組織「ゴールドムーン」に潜入捜査でもぐりこんでいたイ・ジャソン(イ・ジョンジェ)は、グループ2番手で実権者であるチョン・チョン(ファン・ジョンミン)の右腕となっていた。 ゴールドムーンの会長が事故で急死して後継者争いが勃発、警察庁捜査企画課のカン課長(チェ・ミンシク)は後継者選びに直接介入する「新世界プロジェクト」をジャソンに命じるのだが… |
韓国ノワールの最高峰、いや、韓国映画の中でも屈指の傑作。
とても有名な作品なので、見たことある人も多いはず。
でも何度見ても、この雰囲気、アクション、人間ドラマがたまらない!
初めて見た時は、潜入捜査がバレるんじゃないかと心臓バクバク、見てるこっちが冷や汗かいて超緊張…笑
イ・ジョンジェ、ファン・ジョンミン、パク・ソンウンの演技はシビれるし、エレベーター内でのナイフめった刺しアクションはもう伝説。(血のりですべって予定どおりに動けなかったのが逆にリアルで、本物のヤクザも称賛したんだとか)
他にも死ぬ前の一服など、名シーンも多々。


実はこの作品、監督の構想は3部作で(まさに『インファナル・アフェア』)、この作品は2番目のストーリーだそう。
この作品で成功した俳優たちはさらに多忙になり、スケジュールを合わせるのも難しく、今まで続編の話がでていながらもう10年も経ってしまいましたが、2023年になって監督は続編を作ることを公表。
いつになるかはわかりませんが、過去の話か、未来の話か楽しみに待ちたいと思います。
ちなみにこの『新しき世界』には、マ・ドンソクとリュ・スンボムの未公開となったエピローグ映像があって、観客数300万人突破した記念で公開されました。
もし未来の話になるなら、この2人が登場するかも!?



友情出演で名前が出ていたのに、どこに登場したのかわからない人も多かったはず
韓国での評価(10点満点) |
8.94点(投票 21,981人) |
共感が多いコメント |
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- 第34回 青龍映画賞(主演男優賞 ファン・ジョンミン)
- 第50回 大鐘賞映画祭(音楽賞)
5位:オールド・ボーイ


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2003 / 120分 / R18+ |
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原題 | 올드보이(オールドボーイ) |
監督 | パク・チャヌク |
出演 | チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン |
あらすじ | 酒好きでおしゃべり好きのオ・デス(チェ・ミンシク)は、ある日、泥酔して帰宅途中に何者かに拉致され、理由もわからぬまま15年間監禁される。 犯人は一体誰なのかー なぜ監禁されたのかー |
クエンティン・タランティーノも絶賛し、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した傑作。
『復讐者に憐みを』『親切なクムジャさん』とともにパク・チャヌク監督の“復讐3部作”でもあり、『オールド・ボーイ』はその中の2作目。
なんといってもチェ・ミンシクの狂気、怪演がインパクトありすぎて、残像が脳裏に焼きついて消えないんですよ。
そして壮絶すぎる復讐内容に、20年前に初めて見た時には衝撃的すぎて「もう2度と見ない」なんて心に決めてた作品です笑


でも今となってわかることは、ただ刺激的なだけの映画じゃなく、実はギリシャ神話のモチーフを使って、もっと深い人間の感情を描いていたんです。
ただ見ても十分すぎるほどに感情を揺さぶられますが、さらに監督が意図したことがわかるとおもしろさ倍増、一種の嫌悪感も消え、なぜ傑作たるか納得しました。


世界中の監督からオマージュされている廊下でのワンテイクアクションや、俳優たちの演技、美しく心に残るサウンドトラック、残酷さの中にちょこっと小さな笑いも入ってたりと、見どころ満載ですが、
韓国映画、とくにノワールに慣れていない方は精神的ダメージを受ける可能性もあるので、ご注意を。
韓国での評価(10点満点) |
9.05点(投票 7,235人) |
共感が多いコメント |
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- 第57回 カンヌ国際映画祭(グランプリ)
- 第41回 大鐘賞映画祭(監督賞、主演男優賞 チェ・ミンシク、編集賞、照明賞、音楽賞)
- 第40回 百想芸術大賞(映画監督賞、映画男優最優秀演技賞 チェ・ミンシク、映画女優新人演技賞 ユン・ジンソ)
- 第24回 青龍映画賞(監督賞、主演男優賞 チェ・ミンシク、助演女優賞 カン・ヘジョン)
4位:インサイダーズ / 内部者たち


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2015 / 130分 / R15+ |
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原題 | 내부자들(内部者たち) |
監督 | ウ・ミンホ |
出演 | イ・ビョンホン、チョ・スンウ、ペク・ユンシク、イ・ギョンヨン、キム・ホンパ、ペ・ソンウ、チョ・ジェユン、イエル、チョ・ウジン、キム・デミョン |
あらすじ | 有力な大統領候補(イ・ギョンヨン)と財閥会長(キム・ホンパ)、彼らを助けるヤクザ、アン・サング(イ・ビョンホン)。 裏取引を仕掛けたのは、韓国の世論を動かす有名論説委員イ・ガンヒ(ペク・ユンシク)。 アン・サングは、彼らの裏金ファイルを入手し、より大きな成功を企てるが失墜。 一方、裏金捜査をしてきた検事ウ・ジャンフン(チョ・スンウ)は、裏金摘発の大チャンスをつかむが、アン・サングにファイルを横取りされ捜査は打ち切り、責任を負い降格される。 欲望、裏切り、復讐… 果たして最後に生き残るのは誰なのか― |
この作品を初めて見た時は、衝撃的すぎて軽くショック…
社会の裏側、闇の描き方がグロすぎて。
夜の接待は気色悪いし、暴力は残虐すぎる…(決して家族と見てはいけません)
政治家、財閥企業、マスコミ、検事、チンピラ、職業は何であれ、どこもやってることはヤクザと同じ。
これがリアルすぎて(劇中に繰り広げられることが、韓国で起きたいくつかの実事件と似てるらしい)、「よくこんな映画作れたよな…」と思っちゃうほど見せてくれるのが、まさに韓国ノワールなのです。


登場人物が多く、最初はちょっと誰が誰だか混乱しますが、どの人物も韓国映画・ドラマで顔なじみの実力派ばかり。
中でも、スーツ姿から長髪のチンピラまでどんな姿も様になるイ・ビョンホン、ただの正義だけじゃなく欲望と反骨精神でのし上がろうとする検事のチョ・スンウが魅力的で、策士のイ・ガンヒを演じたペク・ユンシクのいやらしさ、ふてぶてしさもピカイチ。
そんな濃いキャラの人物たちの欲望が渦巻き、裏切り、復讐と最後までどうなるかわからないエンディングも見どころ。
衝撃的なシーンも多々ありつつ、話がどんどん展開していくので没入すること間違いなし。
当時、韓国男子がこの映画に熱狂した男もホレる男たちの骨太ノワール。



韓国にはディレクターズカット版『内部者たち:ザ・オリジナル』の3時間バージョンもあるよ!
韓国での評価(10点満点) |
9.06点(投票 11,268人) |
共感が多いコメント |
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- 第53回 大鐘賞映画祭(最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞 イ・ビョンホン、企画賞)
- 第37回 青龍映画賞(最優秀作品賞、主演男優賞 イ・ビョンホン)
- 第52回 百想芸術大賞(映画男優最優秀演技賞 イ・ビョンホン)
3位:チェイサー


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2008 / 123分 / R15+ |
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原題 | 추격자(追撃者) |
監督 | ナ・ホンジン |
出演 | キム・ユンソク、ハ・ジョンウ |
あらすじ | 元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)が経営する風俗店の女性たちが次々と失踪する中、怪しい電話番号の客を追っていたジュンホは偶然ヨンミン(ハ・ジョンウ)と遭遇する。 服についた血を見て犯人だと直感したジュンホは、逃げるヨンミンを追撃、なんとか捕まえるのだが… (この映画は2003-2004に発生したソウル20人連続殺人事件を基に脚色されています) |
『哭声/コクソン』のナ・ホンジン監督の長編デビュー作にして、キム・ユンソク、ハ・ジョンウの知名度を一気に引き上げたヒット作。
命がけで逃げつつ息切れ、吐き気、走りながらスッ転んでも起き上がって逃げるなど、追跡シーンの緊迫感、疾走感が見もの。(本当に転んでNGにするところだったそう)
最初から「ちょ、ちょっと、それでする気?」と見てるだけでも痛く、目をそらしてしまう暴力描写があり、この先どうなっちゃうのかと思いきや、序盤で犯人が捕まり、あっさり自白。
「えっ??」
と拍子抜けしたのも束の間、まだ最後の最後まで先が読めない…
サスペンススリラーとはいえ、その暴力描写やわずかな希望も容赦なくぶち砕いてしまう結末はまさに韓国ノワール。


当時あまり知られていなかったハ・ジョンウの演技が上手すぎて、本物のサイコパスと思われて避けられたり、イメージダウンしたという逸話があるほど。
キム・ユンソクとハ・ジョンウの演技とは思えない格闘シーンもすごく、この2人は監督2作目の『哀しき獣(2010)』で役が変わっても追撃しあう仲。(2作目はさらに血だらけでグロい)
個人的には、監督作品の中では『哭声/コクソン』の方が好きですが、デビュー作にして随所に名場面がある秀作。
あと、韓国あるあるの無能な警察にイライラしますが、実はこの映画のベースとなっている事件でも実際にそうだったようで、韓国警察はこの事件を契機に組織を完全に変え、CCTVも広域に設置、今の韓国の治安が完成したんだとか。



事件をそのまま再現したものじゃないけど、犯人を追撃した主人公のモデルは実在するんだって
韓国での評価(10点満点) |
9.09点(投票 17,125人) |
共感が多いコメント |
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- 第29回 青龍映画賞(主演男優賞 キム・ユンソク)
- 第45回 大鐘賞映画祭(最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞 キム・ユンソク、撮影賞、企画賞、人気男優賞 キム・ユンソク)
- 第44回 百想芸術大賞(映画大賞、映画新人監督賞)
2位:アジョシ


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2010 / 119分 / R15+ |
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原題 | 아저씨(アジョシ) |
監督 | イ・ジョンボム |
出演 | ウォンビン、キム・セロン、キム・ヒウォン、キム・ソンオ |
あらすじ | 不幸な事件で妻を失い、ひっそりと質屋を営み孤独に暮らしていた元特殊要員テシク(ウォンビン)。 訪ねてくる人といえば、質屋に物を預けに来る人と隣の家の女の子ソミだけ(キム・セロン)。 世間から取り残されてしまったソミと一緒に過ごす時間が多くなり、テシクとソミは、互いに心を開いていく。 そんなある日、ソミが突然消えた。麻薬事件に関わっていたソミの母親と一緒に拉致されたソミの行方を追って、テシクは1人乗り込んでいく― |
ウォンビン、ウォンビン、ウォンビン!!!
韓国ドラマや映画で見慣れた顔ぶれも多いんですが、もうウォンビンしか目に入りません。
アジョシとは韓国語で”おじさん”の意味ですが、どうやっても若いウォンビンに”おじさん”は変な感じですよね。
でも子供目線で大人の男性にはみんな”アジョシ”と呼ぶから仕方ない。
それにしてもウォンビンの鋭く鍛え抜かれたアクション、カリスマがすごくて惚れ惚れしちゃう。しかも美しい!
女性はもちろんですが、韓国男子でウォンビンがバリカンで頭を刈る場面を知らない人はいないです。
男もホレる肉体美、まさに憧れ。


本当に闇の闇、かなりエグい内容なんですが、とにかくウォンビンが微動だにせず1人で悪党を始末していくアクションは見る価値あり。
元特殊要員らしく、瞬時に急所を突く連続技!
ふと、隣の家の子にここまで命を懸けられるのか?と一瞬頭をよぎるものの、ウォンビンのあの目が全て納得させてしまうんです。
しかも泣ける…
ポン・ジュノ監督の『母なる証明(2009)』で純粋無垢な知的障害のある青年役を演じた人にはとても思えないんですが、どちらの映画でもウォンビンの澄んだ目にやられました…



ウォンビン、早く復帰して~
韓国での評価(10点満点) |
9.26点(投票 29,605人) |
共感が多いコメント |
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- 第47回 大鐘賞映画祭(主演男優賞 ウォンビン、人気男優賞 ウォンビン、編集賞、映像技術賞)
- 第31回 青龍映画賞(人気スター賞 ウォンビン、韓国映画最多観客賞、技術賞)
- 第47回 百想芸術大賞(映画作品賞)
1位:犯罪都市


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2017 / 121分 / G |
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原題 | 범죄도시(犯罪都市) |
監督 | カン・ユンソン |
出演 | マ・ドンソク 、ユン・ゲサン、チョ・ジェユン、チェ・グィファ、チン・ソンギュ |
あらすじ | 1990年代から中国同胞はソウルに定着してチャイナタウンを作り、中国の朝鮮族の暴力団も流入して同じ出身地の者たちが集まった組織が乱立した。 2004年、衿川(クムチョン)警察の刑事マ・ソクド(マ・ドンソク)は、そんな彼らの事件を仲裁し、治安を守っていたが、ある日、中国でも悪名高い黒竜組が現れ、チャイナタウンに危機が訪れる… (この映画は2004年衿川(クムチョン)警察の「朝鮮族暴力団組織一掃作戦」の実話を基にしたフィクションです) |
韓国ノワールを語るなら絶対見てほしい作品。
その残虐さ、バイオレンスがハンパなく、今まで見てきたノワール映画がかすんでしまうほどの強烈さ。
(韓国では青少年観覧不可なのに、日本ではG:全観客OKっていいのか!?)
予告編は音楽のせいか明るく感じますが、だんだん笑いがサーっとひいて尋常じゃない狂気と暴力に見るのも息が止まるほど。
拳、斧、ナイフ、鉄棒、血、肉片…(無言)
まさに死闘。
それでいて、プッと笑えるところがあるのが不思議。
考えてみたら銃も全く使わず、体を張った闘いの連続なのに全然飽きない。
いや、おもしろい!!!(残虐なの苦手なんだけど)


これもマ・ドンソクがいるからこそ。(こう見えても刑事です)
最初の登場シーンから、その肩幅の広さ、ダイナマイトのような平手打ちに圧倒。
思わず笑ってしまうほどの桁違いの力の強さ。(ほんとにこんなの見たことない!)



『エターナルズ』にスカウトされたのも納得の強さだよ
ヤクザを相手にする警察もある意味同類で、仲裁したり、地域の平穏を保つ様子がなかなかおもしろいんですが、残虐極まりない黒竜組の3人が登場することで、街が修羅場に。
あの死闘アクション、悲鳴、ゆがんだ顔はとても演技には見えず…
黒竜組のトップを演じたユン・ゲサンは元国民的アイドル、俳優に転向して初の悪役とは思えない肝の据わりっぷり。狂気ぶり。
他のメンバーも正直俳優というより本物のヤクザじゃないか…と思うほど。
2022年『犯罪都市2(犯罪都市 THE ROUNDUP)』はさらに大ヒットし韓国で観客1,269万人。2023年『犯罪都市3(The Roundup : No Way Out)』は1,068万人、2024年『犯罪都市4』は1,149万人と、これだけシリーズで大ヒットが続くのもすごい!



『犯罪都市3』は青木崇高、國村隼も登場!
韓国での評価(10点満点) |
9.28点(投票 11,875人) |
共感が多いコメント |
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- 第38回 青龍映画賞(助演男優賞 チン・ソンギュ)
- 第54回 百想芸術大賞(映画新人監督賞)
番外編:妥協なし&熱狂ファン的映画
ランキングには入らなかったものの、妥協なく作られた独創的で魅力ある作品を紹介します。
興行とは関係なく、熱狂的なファンがイベントを開催したり、グッツを作るほど愛されている作品もあります。
アシュラ


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2016 / 132分 / R15+ |
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原題 | 아수라(アシュラ) |
監督 | キム・ソンス |
出演 | チョン・ウソン、ファン・ジョンミン、チュ・ジフン、クァク・ドウォン |
あらすじ | 刑事ハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、末期癌である妻の治療費のため、悪徳市長パク・ソンベ(ファン・ジョンミン)の後始末を請け負っていた。 彼の弱みを握った検事のキム・チャイン(クァク・ドウォン)と検察捜査官(チョン・マンシク)は、ドギョンを脅迫して、パク・ソンベ市長の不正と犯罪容疑を探ろうとする。 利益と目的のためにドギョンを利用する検察と市長からドギョンは抜け出せるか― |
もう最初から暴力&暴言の連続。
市長、検察に挟まれる刑事(チョン・ウソン)という図ではあるけど、みんな極悪。みんなヤクザ。
韓国ノワール常連の面々、ファン・ジョンミンの悪徳市長、クァク・ドウォンの検事、チュ・ジフンの後輩刑事、チョン・マンシクの検察捜査官など、これぞノワールのシビれる演技。
ただ、息つく暇なく暴力が続き、暴、暴、暴と強すぎてかえって単調だった前半に比べ、後半から一気におもしろさ上昇。
これだけノワール映画がたくさんあっても、ヤク中演技や市長のお尻、ガラス食いなど、インパクトあるシーンに目が釘付け。
特に、終盤の葬儀場のシーンは圧巻の地獄絵図で、「あー、監督はこれが撮りたかったんだな」と感じる傑作シーン。まさに修羅場。
それにしても、韓国ノワールはなんでこんなに斧が似合うのか、「グサッ、グサッ、グサッ」っていう音が頭から消えない…
全編、血がドクドク流れて窒息しそうなくらいな出血量なので、苦手な方は要注意。
- 第37回 青龍映画賞(人気スター賞 チョン・ウソン、撮影照明賞)
名もなき野良犬の輪舞


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2017 / 120分 / PG12 |
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原題 | 불한당:나쁜 놈들의 세상(不汗党:悪い奴らの世界) |
監督 | ビョン・ソンヒョン |
出演 | ソル・ギョング、イム・シワン、キム・ヒウォン、チョン・ヘジン、イ・ギョンヨン |
あらすじ | 犯罪組織のナンバーワンを狙うジェホ(ソル・ギョング)は、怖いもの知らずの新入りヒョンス(イム・シワン)に刑務所で出会い、固い絆を深めていく。 出所後、共に権力を握るために意気投合する中、新たな事実が明らかになり状況が変わっていく… |
こちらも『アシュラ』に負けず熱狂的ファンがいる作品。
監督が若いせいか、確かにゴリゴリのノワールでありながら、どこかスタイリッシュで躍動感のある映像が斬新。
オープニングとエンディングのタイトルカットや、刑務所の食事シーンに『最後の晩餐』の構図を持ってきたりするおもしろさに加え、ノワール好きが満足する残虐シーン、銃撃戦、肉弾戦の見せ方など見どころ満載。しかも少し笑いあり。
「えっ???急に?」
「えっ、それ今言っちゃうの?」
とか、不意を突かれる急展開もあり、テンポよく進むので目が離せません。
なんといってもこの映画最大のユニークさは、ソル・ギョング、イム・シワンの兄弟愛ならぬ、それ以上の男同士のロマンス。
ピタッと合ったスーツ姿がセクシーで、アクションもキレッキレ。
ストーリー上はそこまで表面化しませんが、ネクタイを直してあげる仕草や、韓国語のセリフでは恋人・夫婦間での呼び方で相手を呼んだりと、お互いをどれだけ信頼して惹かれあっているかがわかります。
結末も含め、全体的に骨太なノワールでありながら、映像やロマンスも楽しめる独特な作品。
- 第38回 青龍映画賞(人気スター賞 ソル・ギョング、撮影照明賞)
- 第54回 大鐘賞映画祭(主演男優賞 ソル・ギョング)
楽園の夜


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2021 / 131分 / R18+ |
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原題 | 낙원의 밤(楽園の夜) |
監督 | パク・フンジョン |
出演 | オム・テグ、チョン・ヨビン、チャ・スンウォン、パク・ホサン、イ・ギヨン |
あらすじ | 敵対組織からボス以上に一目置かれているテグ(オム・テグ)。 ある日、テグの唯一の家族である姉と姪が殺される。仇を打ち、身を隠すためにチェジュ島に向かったテグは、そこでチェヨン(チョン・ヨビン)に出会う。 |
『新しき世界』『The Witch/魔女』『生き残る為の3つの取引き』のパク・フンジョン監督だけに、韓国では期待値が高かった分、好き嫌いが分かれた作品。
それも出血多量にもかかわらず、対比するような映像美と全編を通して漂う静けさゆえ。
青く薄暗い色の静寂は、主人公である孤独な男と女が死を覚悟している心境、楽園の美しさも感じない冷めた感情そのもの。
韓国の沖縄にあたるチェジュ島だからこそ、これでもかと殴り、蹴り、刺し、血まみれになる残虐さと対比される美しい背景にシビれます。
声といい存在自体ノワールのために生まれてきたようなオム・テグ、『ヴィンチェンツォ』で知名度アップしたチョン・ヨビンのキモのすわり方がハンパなく、男女主人公がくっつくんじゃなくて、適度に距離があるのも◎
凄みとカリスマでギラギラしてるチャ・スンウォン、ヤン社長(パク・ホサン)の化けの皮がはがれていく表情など、俳優のメリハリきいた熱演が光ってます。
全体的に静的な印象でも、迫力あるバイオレンス、魅せるアクションは期待を裏切らず、ラストの爽快感は最高。



北野武監督『ソナチネ』のオマージュ満載だよ


無頼漢 渇いた罪


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2015 / 118分 / G |
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原題 | 무뢰한(無頼漢) |
監督 | オ・スンウク |
出演 | チョン・ドヨン、キム・ナムギル、パク・ソンウン、クァク・ドウォン |
あらすじ | 犯人を捕まえるためなら、どんな手段でも使う刑事チョン・ジェゴン(キム・ナムギル)は、人を殺して潜伏しているパク・ジュンギル(パク・ソンウン)を追っているが、唯一の糸口は恋人であるキム・ヘギョン(チョン・ドヨン)。 ジェゴンは正体を隠したままヘギョンが働いている店へ営業常務として入り込む。 が、ヘギョンのそばで過ごしているうちに、ジェゴンの心が揺れ始める… |
これだけのキャストにもかかわらず、日本ではあまり知られていない作品。
韓国でもあまり観客数が伸びませんでしたが、映画好きが好むような映画で、知る人ぞ知る名品。
もうこの世界観、映画の色というか、夜明けの青白く霞んだ色のようなトーンがともかくいいんです!
セリフやアクションがてんこ盛りの韓国ノワールとは違い、この『無頼漢』はマイナスの美学というか、余計なものがありません。
そこへ紅一点の衣装がよく映える。
ノワールでありながら、刑事が調査対象の女に惹かれていくメロドラマでもあり、余白が多く解釈は見た人の感覚にまかせられているため、好き嫌いは分かれますが、好きな人はもう一度見たくなること必至。
主人公のキム・ナムギルはいい感じに力が抜けてるし、カンヌで主演女優賞を受賞しているチョン・ドヨンの演技もすごくよく、パク・チャヌク監督が「『無頼漢』でのチョン・ドヨンの演技は、私が見た彼女の演技の中で一番良かった」と評価するほど。
特にラストシーンの余韻がよく、妙に魅力ある作品。



この作品は本来パク・チャヌク監督が企画していたものなんだって
- 第52回 百想芸術大賞(映画女優最優秀演技賞 チョン・ドヨン)


ハイヒールの男


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2003 / 132分 / PG12 |
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原題 | 하이힐(ハイヒール) |
監督 | チャン・ジン |
出演 | チャ・スンウォン、オ・ジョンセ、イ・ソム、コ・ギョンピョ |
あらすじ | 一人でも組織に乗り込み、サイボーグのような戦闘能力と強さを持つ刑事ジウク(チャ・スンウォン)は、警察はもちろん、犯罪組織の間でも伝説的な存在だった。 でもジウクには誰にも言えない「女になりたいという願望」があった… |
チャ・スンウォンすごすぎる!
男も惚れる猛獣のような強さと鍛えられた肉体は、実は女になりたい気持ちを殺すためだったとは。
コメディと勘違いされがちですが、とんでもない!
「ノワール×トランスジェンダー」と異色の組み合わせながら、アクションは本格派ノワールとして見ごたえ十分。
チャ・スンウォンの身さばきやスピード、集団アクションや武器のユニークさ、どのシーンも新鮮でおもしろく、名役者も多数。
それにチャ・スンウォンが男としても、女としても、ものすごくセクシー。
戦闘中の鋭い目つきはもちろん、化粧した自分に恍惚とする表情はなんともいえず、指先の仕草や雰囲気もあれは女だった。
ラストのやるせなさに、実際にこういう人がいるのかも…と。



チャ・スンウォン、実はモデル出身だよ
番外編:女版ノワール映画
ノワールというとまさに男社会ですが、女の方がもっと強かったりして…
悪女/AKUJO


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2017 / 123分 / R15+ |
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原題 | 악녀(悪女) |
監督 | チョン・ビョンギル |
出演 | キム・オクビン、シン・ハギュン、ソン・ジュン、キム・ソヒョン |
あらすじ | 幼い頃から殺し屋として育てられたソクヒ(キム・オクビン)は、育ての親であるジュンサン(シン・ハギュン)と結婚、しかし、ジュンサンは敵対組織に殺害され、ソクヒは復讐でその組織を壊滅させる。 その後、拘束された彼女は国家秘密組織にスカウトされ、新しい人生を送るチャンスを得るのだが… |
これはすごい!いや、凄すぎる!!
ノワール映画がわんさかある韓国映画の中でも、これだけインパクトある新鮮な作品があるなんて。「いくらなんでも女が1人で乗り込むなんて無理でしょ…」と思っても、キム・オクビンの鬼のような気迫に納得。
映画冒頭から息つく暇ないアクションの連続、カメラが主人公目線で、これはワンカット???
その迫力と新しさに最初から圧倒されつつ、これだけのアクションをこなすキム・オクビンがすごすぎる。しかも、難易度高いアクションシーンの90%以上を代役なしで本人が直接演じたとのことで、今まで見たことない絵を女性がこなしてるカッコよさ。
― ウェディングドレス着てライフル構える姿
― 車のボンネット上で運転する姿
― バスに飛び乗る姿
そして、彼女の血まみれの顔クローズアップ。
どれも絵になって脳裏から消えない。
キム・オクビンとシン・ソンギュンはパク・チャヌク監督の『渇き(2009)』でも共演してますが、なんというか狂気の役柄をも飲み込んでしまう憑依系の俳優。
ストーリーはさておき、その迫力とオーラに畏怖するほどのアクションは一見の価値あり。



監督がアクションスクール出身だから、今までにないアクションが見られるよ
『ジョン・ウィック』のチャド・スタヘルスキ監督は3作目パラベラムでこの映画を参考にしたとインタビューで語っています。特に夜の高速道路で繰り広げられるオートバイの剣闘シーン。監督は『悪女』のオートバイシーンをチームと一緒に何十回も繰り返して研究したそうで、”クソ素晴らしい”と絶賛。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』でも監督が『悪女』からインスピレーションを受けた部分もあるといい、チョン・ビョンギル監督に直接会ったことも。
- 第38回 青龍映画賞(技術賞)
- 第54回 大鐘賞映画祭(撮影賞、技術賞)
The Witch/魔女


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2018 / 125分 / R15+ |
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原題 | 마녀(魔女) |
監督 | パク・フンジョン |
出演 | キム・ダミ、チョ・ミンス、チェ・ウシク、コ・ミンシ、パク・ヒスン |
あらすじ | 10年前、事故で謎の施設から一人で脱出した後、すべての記憶を失ったジャユン(キム・ダミ)。 年齢も名前も知らない自分を拾って育ててくれた老夫婦のおかげで、元気で明るい女子高生に成長する。 ジャユンは苦しい家計を助けるために賞金付きのオーディション番組に出演、手品を披露した放送直後から謎の人物たちが彼女の前に現れはじめる― |
キム・ダミ恐るべし。
日本では『梨泰院クラス』で有名ですが、韓国で彼女の名を知らしめたのがこの作品。
前半はなんの変哲もない女子高校生だったのが、覚醒した瞬間、目を疑う変貌っぷりに目を奪われること間違いなし。
表情、声、アクション、その場の空気まで彼女が支配して、とても新人とは思えない肝の据わった演技がすごい。
前半はあまり動きがないものの、後半のアクションシーンは今までにないスピードと力、テンポでグイグイ引き込まれますが、圧倒的強さと超能力的なものも相まって、個人的にはそこまで入り込めず…
とはいえ、サイコを演じる彼女の演技、新鮮なアクションは好評で、何より『新しき世界』のパク・フンジョン監督が作った、女子高生主演のノワール映画なので、ぜひ一度ご鑑賞あれ。



続編『THE WITCH/魔女 ―増殖―』もあるよ!
- 第39回 青龍映画賞(新人女優賞 キム・ダミ)
- 第55回 大鐘賞映画祭(新人女優賞 キム・ダミ)
藁にもすがる獣たち


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2020 / 108分 / G |
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原題 | 지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들(藁にもすがる獣たち) |
監督 | キム・ヨンフン |
出演 | チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、ユン・ヨジョン、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム |
あらすじ | 失踪した恋人のせいでサラ金の借金を抱え、一発逆転を夢見るテヨン(チョン・ウソン)。アルバイトで家族の生計を支えるジュンマン(ペ・ソンウ)。過去を消し去り、新しい人生を送るために他人のものを欲しがるヨンヒ(チョン・ドヨン)。 崖っぷちに追い込まれた彼らの前に大金が入ったカバンが現れ、最後のチャンスと信じて金を追いかける彼らは、人生を変えることができる最後の一打を計画する。 |
闇に関わる男たちの中で生き抜く女がスゴい!!
豪華キャストが勢ぞろい、しかもノワール常連の面々がいるにも関わらず、一番キモがすわっていて、残虐なのはチョン・ドヨン演じる女社長。
カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞した実力派だけあって、いや、それ以上に本当にそのスジの人のようで、暴力シーンは自分がするのもされるのも、他のシーンが全てかすんでしまうほどの見ごたえ。
Netflix映画『キル・ボクスン(2023)』で、まさに彼女が殺し屋を演じたのですが、個人的にはそれよりも断然こっちの方がおすすめ。
『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョンも出演しています。
原作は日本の曽根圭介による同名の小説。
それにしても、韓国では青少年観覧不可なのに日本のレートはGでいいのか?



豪華キャストなのに、最終的に記憶に残るのはチョン・ドヨン…
- 第41回 青龍映画賞(編集賞)
コインロッカーの女


公開 / 時間 / 年齢制限 | 2015 / 110分 / R18+ |
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原題 | 차이나타운(チャイナタウン) |
監督 | ハン・ジュニ |
出演 | キム・ヘス、キム・ゴウン、オム・テグ、パク・ボゴム、コ・ギョンピョ |
あらすじ | 地下鉄のコインロッカー10番に捨てられ、「イリョン=10」(キム・ゴウン)と名付けられた子供は、チャイナタウンを支配するオモニ(キム・ヘス)に引き取られる。 金になることならどんな仕事も厭わないオモニは、イリョンに金の取り立てに向かわせるが、そこで逃げた男の息子ソッキョン(パク・ボゴム)と出会う― |
これぞまさに女版ノワール。
邦題は『コインロッカーの女』なので、イメージがちょっと違うんですが、原題は『チャイナタウン』。
チャイナタウンの暗黒街を支配するオモニ(ママ)に育てられたのが、コインロッカーに捨てられていたイリョン。
このオモニ演じるキム・ヘスがすごいんですよ!
他のドラマや映画で見せてくれる年齢不詳の美魔女っぷりとは正反対、ここでは髪も皮膚もガサガサ、中年太りで冷淡な支配者。
イリョン演じるキム・ゴウンも『トッケビ』などで見せてくれた無邪気な笑顔は全くなく、暗く憂鬱な闇社会の使いっぱしり。(演技の幅に感嘆…)
この2人の関係がこの映画のキモなんですが、なんとここにパク・ボゴムやコ・ギョンピョ、それに今や『楽園の夜』でノワール主演のオム・テグまで出てくるなんて!



キム・ヘスを知ってる人が見たら、やや衝撃…
- 第52回 百想芸術大賞(映画新人監督賞)
最後に:まだある見どころある韓国ノワール
韓国ノワール歴代ランキング、いかがでしたか?
実は惜しくも紹介しなかった作品がまだまだあります!(リンクは予告編)
- 『ただ悪より救いたまえ(2020)』
腕利き暗殺者ファン・ジョンミン vs イカれた殺し屋イ・ジョンジェ - 『V.I.P. 修羅の獣たち(2017)』
サイコで冷淡なイ・ジョンソク、そんなところまで見せなくても… - 『ファイ 悪魔に育てられた少年(2013)』
5人の凶悪犯(名キャストばかり)に育てられた少年ヨ・ジングの演技必見
今後、またいい作品が出てきたら随時追加していきます!



こんなに作品あるのにどれも特徴あっておもしろいのがすごいな

