公開前から豪華なキャストと設定で話題になっていたNetflix映画『ソウル・バイブス』。
さっそく、『ソウル・バイブス』を見た感想、見どころ解説、キャスト、韓国での評価、OSTをネタバレなしでお伝えします!
原題は『ソウル大作戦』だよ
『ソウル・バイブス』あらすじと作品情報
公開 / 時間 / 年齢制限 | 2022 / 140分 / 16+ |
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原題 | 서울대작전(ソウル大作戦) |
監督 | ムン・ヒョンソン |
出演 | ユ・アイン、コ・ギョンピョ、イ・キュヒョン、パク・ジュヒョン、オン・ソンウ、ムン・ソリ、キム・ソンギュン、オ・ジョンセ、チョン・ウンイン、ソン・ミノ |
あらすじ | 全世界が熱狂するオリンピックを控えた1988年ソウル。 アメリカンドリームを夢見る上渓洞(サンゲドン)のシュプリームチームは、拒否できない提案を受けて、VIPの裏金捜査作戦に投入される。 最高のドリフターであるドンウク(ユ・アイン)、スパイDJ ウサム(コ・ギョンピョ)、人間ナビゲーターのボクナム(イ・キュヒョン)、バイクに乗る変身の鬼才ユンヒ(パク・ジュヒョン)、上渓洞のマクガイバー、ジュンギ(オン・ソンウ)、彼らがVIPの秘密資金を積んでソウルを疾走する― |
『ソウル・バイブス』感想:ネタバレなし
レトロでスタイリッシュな軽いノリで、どんどん話が展開していくスピード感。
豪華なキャストに喜びつつ、「まさかこの調子で終わりじゃないよね…」とだんだん思い始めた頃、突然ノワールに反転した時のゾッとする末恐ろしさがすごい!
さすが韓国映画。こうでなくっちゃ。
と思ったのもつかの間、最終的にはポップなノリでコミカルに終結。
個人的には、あのままノワールでいってほしかったけど、全体的にテンポよく、あの時代の空気感や音楽、レトロな感性を楽しめるスタイリッシュな映画っていう感じでした。
これはこれで見て楽しめます。
時は1988年、韓国では長年の軍事政権から解放されて民主化宣言を発表、年々拡大していく経済成長の勢いにのり、ソウルオリンピック開催、そして海外旅行の自由化へと、あの時代の開放的で自由な熱気を感じられるのがこの映画。
実際には、車を改造してレースするアクション映画ではあるんですが、正直そこまですごいアクションには感じられず…、
私にとってはポップでレトロなグラフィック、ファッション、音楽、小物、そういった感覚的なもので楽しめました。
Netflix制作とあって、またまた豪華キャストがたまりませんが、ユ・アインは相変わらず自分のものにしていたし、脇を固めるベテラン俳優、特にカン社長を演じたムン・ソリがよかったです。
ストーリーは予定調和的で、ちょっと浅い印象ではあるので、がっつり映画に没入して感情をゆさぶられたい、深い映画が見たいという人には向いていません。
この時代を楽しむスタイリッシュな映画として、軽い気持ちで見たい時におすすめです。
それでいて、実はわかる人にはわかる歴史上の実在人物・事件を風刺していたり、ノワール反転があったりするところは、さすが韓国映画でした。
- 韓国のトレンド「ニュートロ」を感じたい人
- ファッション・音楽、車・メカ好き
- 韓国映画を気軽に楽しみたい人
目で楽しめるよ~
見どころ解説
レトロでシティポップな今の感性「ニュートロ」
韓国で2018~2019年頃から、今でも一つのトレンドとして定着した感がある「ニュートロ」。
「ニュー」と「レトロ」を掛け合わせた造語で、ただのレトロではなく、今の感覚で昔のものを再解釈、主に10代~30代の若者(MZ世代)を中心に、音楽・ファッション・グラフィック・インテリア・カフェなどなど、すっかりカルチャーとなりました。
そのはしりと言われているのが、『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』でもおなじみのIU(アイユー)のこの曲。
ちょうど映画の設定でもある1988年頃のヒット曲、ソバンチャの『ゆうべの話』(ダウンタウンのカバー曲『オジャパメン』で知られてるかも)をリバイバルしたもので、オリジナル曲は本編でもOSTとして使われています。
ノリといい、グラフィックといい、まさにこの映画の感覚そのもの。
この「ニュートロ」の感覚で、1988年ソウルのファッション、音楽、街並みを楽しめるのがこの映画の醍醐味。
昔のソウル駅、南大門、ハンガン、イテウォンはこうだったんだ~とかわかるし、テハンノの一番大きな映画館だった大韓劇場には、ジョン・ウー監督の『영운본색:男たちの挽歌(1986/1987)』と『첩혈쌍웅:狼 男たちの挽歌・最終章(1989)』をミックスしたタイトルの映画『쌍웅본색』のポスターが貼ってありました。
ちょうど韓国では1988年にマクドナルドの一号店ができ、コーラ、ビバリーヒルズ、エア・ジョーダン3、そしてあの米ドラマ「ナイトライダー」なども出てきて、韓国でなくとも、その時代を生きていた人なら「そうそう、あの時代はそうだった」と懐かしめます。
ナイトライダーのオマージュ
韓国でも大人気だった米ドラマ「ナイトライダー」の韓国タイトルは『電撃Z作戦』。
実はこの映画の原題は『ソウル大作戦』で、タイトルから言っても「ナイトライダー」がモチーフになっています。
「ナイトライダー」のあるセリフが本編の核心となるモットーになっているだけでなく、キットのラジコン?も登場、それに車を改造して戦える車にしていくんですよね。
(とはいっても、すごい武器はないんだけど…)
現代自動車がソウルオリンピックでVIP送迎車として使ったという「初代グレンジャー」をはじめ、ソナタ、ポニー、起亜自動車のブリサ、コンコード、プライド、大宇自動車のルマンなどなど、当時の韓国車がカスタマイズされて登場します。
その他、当時のバイクやトラック、BMW、ポルシェ、ベンツ、シボレーカマロなどの外車まで、次々と出てくるクラシックカーに、車好き、メカ好きならたまらないはず。(車種を書ききれないほどです…)
歴史上の実人物・事件の風刺
知らなくてもストーリーに何の問題もないのですが、知ってる人が見れば、「あのことね」とわかるので、小ネタとして知っておくとおもしろいです。
ちなみに映画ではあだ名や別名が使われています。
韓国人なら誰でもわかるよ
元大統領 全斗煥(チョン・ドゥファン)
軍人出身の元将軍だったので、「将軍様」と呼ばれたり、特徴的な外見のことを言われていたのが、第11・12代の大統領だった全斗煥(チョン・ドゥファン)です。
クーデターにより政権を手に入れ、任期中は、なんといっても映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』で描かれた1980年の光州事件(軍がデモに参加していた学生・市民を多数虐殺した事件)や、
『1987、ある闘いの真実』で描かれた学生運動家拷問致死事件から6月民主抗争に至る1987年の民主化闘争があり、ソウルオリンピック前の1988年2月に退任。
江原道の百潭寺で隠遁生活を送っていましたが、不正蓄財と民主化運動弾圧の罪で逮捕・投獄されました。
オリンピック誘致や経済成長、スポーツ・文化の発展などの功績があったとしても、韓国ではほぼ全否定されており、映画のラストシーンで国民の感情がどんなものかわかります…。
映画『タクシー運転手』の黄色いタクシー、大学で学生が警察に検問されてたりとか、横断幕に「先輩が帰ってこないです」とか、光州事件や民主化闘争を想起させられる場面もあるよ
詐欺師 張玲子(チャン・ヨンジャ)
ムン・ソリ演じるカン会長は、「韓国建国後、最大規模の金融詐欺事件」で知られる張玲子(チャン・ヨンジャ)。
美貌と知性の持ち主で、家族や親戚関係がいろいろと複雑でありながら、華やかな人脈をもっており、不動産・私債市場では大物として知られていたそう。
当時、大統領だった全斗煥(チョン・ドゥファン)の親戚ということで、(実際には、遠い親戚?全斗煥の妻の叔父イ・ギュグァンの義妹だったんですが…)
中央情報部の次長を務めた夫イ・チョルヒとともに資金圧迫に苦しんでいた建設業者に接近、「特殊資金だから絶対秘密にして」と現金を貸す代わりに、その2~9倍に達する約束手形を受けとり、割引して現金化したのをまた別の会社に貸したり、株式に投資するなどの手法で詐欺行為をして逮捕されました。
受け取った手形は7,111億ウォン、合計6,404億ウォンに達する巨額の資金を手に入れました。当時、経歴10年の教師の給料が25万ウォン(約2万5千円)だった頃の話です。
↓韓国テレビ局の特集ですが、当時のニュース映像が見られます
実はこの事件の後も、出所するたびに詐欺事件を起こし、最近では第4次チャン・ヨンジャ事件なるものまであり、2018年12月21日、出所3年ぶりにまた6億ウォン台の詐欺で拘束され、2022年1月に出所したばかりだそう。
ムン・ソリの髪型もそっくりだね
上渓洞(サンゲドン)の強制立ち退き
ソウルオリンピック開催のため、都市景観をよくするという名目で貧しい集落だった上渓洞(サンゲドン)は住民が強制立ち退きを強いられました。
映画では、上渓洞がドンウクたちの地元であり、海外から帰ってきてみたら、「何もなくなってた…」とちょっとコミカルな展開のように感じられますが、実際にはそこに生活をかけた住民たちの抵抗と闘争があったのです。
それを記録したドキュメンタリー作品がキム・ドンウォン監督の『上渓洞オリンピック(1988)』で、監督は撤去される人々とともに生活しながら撮影したそうです。
上渓洞撤去民共同体は200余名の借家人と、彼らと生活をともにしてきた神父や修道女、大学生らで構成され、1年以上も闘っていた。
出典:韓国のコミッティド・ドキュメンタリーの15年
MBC「カメラ出撃」のニュース映像
これは風刺というより小ネタですが、
当時の梨泰院(イテウォン)は無法地帯だったようで…、酔っぱらってケンカする人たちの様子を伝えた当時のMBCのニュース番組の映像を、映画でも主人公たちが再現しています。
けっこうそのまま再現されてるよ
『ソウル・バイブス』のキャスト
ドンウク役(ユ・アイン)
ユ・アインは、映画『声もなく(2020)』でセリフが全くない役を15kg増量して演じ、「青龍映画賞」の主演男優賞、「百想芸術大賞」の男性最優秀賞を受賞。
今回は、見た目からもこの時とは全くの別人でした笑
その他、『#生きている(2020)』『バーニング 劇場版(2018)』、『王の運命-歴史を変えた八日間-(2015)』、『ベテラン(2015)』、ドラマでは『地獄が呼んでいる(2021)』、『六龍が飛ぶ(2015-2016)』、『トキメキ☆成均館スキャンダル(2010)』など多様なキャラクターを演じています。
ドラマ『シカゴ・タイプライター(2017)』でも、コ・ギョンピョとも共演したね
ウサム役(コ・ギョンピョ)
何もしなくてもシティボーイ的な雰囲気のあるコ・ギョンピョ。
ドラマ『応答せよ1988(2015)』でも、この映画と同じ1988年を舞台に演じています。
カンヌ映画祭で「監督賞」を受賞したパク・チャヌク監督の新作『別れる決心』にも出演しているので乞うご期待。
その他、『D.P. -脱走兵追跡官-(2021)』、『プライバシー戦争(2020)』、『シカゴ・タイプライター(2017)』、『嫉妬の化身(2016)』、映画『コインロッカーの女(2015)』など。
ボクナム役(イ・キュヒョン)
多くの作品でいつも印象的なキャラクターを演じるイ・キュヒョン。
今回も方言使いつつコミカルに楽しませてくれました。
ドラマ『秘密の森(2017、2020)』、『刑務所のルールブック(2017-2018)』、『ハイバイ、ママ!(2020)』、『今、私たちの学校は…(2022)』など。
ユンヒ役(パク・ジュヒョン)
Netflixドラマ『人間レッスン(2020)』で「百想芸術大賞」で新人賞を受賞し、ブレイクしたパク・ジュヒョン。
今回も勝気で強い女子がピッタリはまってます。
その他、ドラマ『マウス(2021)』、『ゾンビ探偵(2020)』など、活躍の場をどんどん広げていますね。
ジュンギ役(オン・ソンウ)
『PRODUCE101 シーズン2』で結成されたWanna One出身のオン・ソンウです!
アイドルからここ数年ですっかり俳優になりましたが、今回のコミカルでちょっとおバカっぽい?エネルギッシュな役もすごくよかったです。
ドラマ『十八の瞬間(2019)』、『場合の数(2020)』、『力の強い女 カン・ナムスン(2023)』、映画『Life Is Beautiful(2022)』など。
カン会長役(ムン・ソリ)
映画『ペパーミント・キャンディー(2000)』、『オアシス(2002)』から始まり、最近では『三姉妹(2020)』で共同プロデューサーをしながら主演を演じ、「青龍映画賞」の主演女優賞を受賞。
デビューから多くの受賞作品のある名優ムン・ソリですが、今回の映画でも存在感と、時代の空気を醸し出していてよかったです。
その他、映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬(2018)』、『お嬢さん(2016)』など。
イ室長役(キム・ソンギュン)
この方もめちゃくちゃインパクトあるキャラクターを作り上げるキム・ソンギュン。
今回ももうスタイルからしてハマってました。
ドラマ『応答せよ1994,1988』、『熱血司祭(2019)』、『D.P. -脱走兵追跡官-(2021)』、『麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜(2016)』、映画『悪いやつら(2012)』、『ゴールデンスランバー(2018)』、『奈落のマイホーム(2021)』など。
コ・ギョンピョと『D.P. -脱走兵追跡官-』でも共演してるね
アン検事役(オ・ジョンセ)
この方もクセがあって、一度見たら忘れられなくなる俳優さん、オ・ジョンセ。
ドラマ『椿の花咲く頃(2019)』、『サイコだけど大丈夫(2020)』で「百想芸術大賞」の男性助演賞を2年連続で受賞している実力派。
今回もコミカルでちゃらけたキャラでありながら、しっかり演技も見せてくれます。
その他、ドラマでは『ストーブリーグ(2019-2020)』、『模範刑事(2020)』、映画では『スウィング・キッズ(2018)』、『エクストリーム・ジョブ(2019)』、『ザ・コール(2020)』など。
部長検事役(チョン・ウンイン)
ドラマ『君の声が聞こえる(2013)』で強烈な悪役を演じたので、悪役のイメージが強かったんですが、どんな役もしっかりと脇でしめてくれるチョン・ウンイン。
今回は登場場面は少なかったんですが、安定感がありますね。
ドラマ『飛べ、小川の竜(2020-2021)』、『99億の女(2019-2020)』、『補佐官(2019)』、『刑務所のルールブック(2017-2018)』、映画では『ベテラン(2015)』『最も普通の恋愛(2019)』など。
『刑務所のルールブック』でイ・キュヒョンとも共演したね
カルチ役(ソン・ミノ)
YGのアイドルグループWINNERのメンバーでありながら、ソロでも活躍しているラッパー。バラエティやアーティストとしても活躍しています。
今回、この映画がデビュー作となるソン・ミノですが、メイン予告編にも使われているOSTにも参加しています。(詳細は後述)
あだ名のカルチとは韓国語で魚の「タチウオ」のこと。
韓国では日常的によく食べられているんですが、細長い魚のようにひょろっとした体形から「カルチ」ってつけられたんでしょうね笑
韓国での評価
評価(10点満点): 4.87点
かなり辛口です…。
好評 |
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不評 |
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韓国の評価はかなり厳しいけど、娯楽用として見ればそこまで悪くないよ
最後に:『ソウル・バイブス』OSTはソン・ミノ
韓国では、演技に対して辛口評価が多かったソン・ミノですが、Dynamic DuoのGAEKOと共に参加したOST『CITY+++』の評判はとてもいいです。
聞いてるうちに、身体が動いてきちゃいますね。
さすが本業。がんばれミノ!