実はこのドラマ、最初はかなり暗くて、見るのも辛いです。
でも!
韓国では人生ドラマ(一生モノの最高の作品)と言われてじわじわ人気上昇、今でも根強いファンがとても多いんです。
「最初の4~5話、いや前半はとにかくガマン!」なんですが、最後にはなぜ人生ドラマと言われるのか心に染みこむはず。
なにせあのパウロ・コエーリョも人間描写が素晴らしい!と脚本、演出、俳優たちを絶賛した作品なんです。
私もあまりの暗さにずっと見るのをためらっていましたが、ついに『マイディアミスター 私のおじさん』を見た感想と見どころをお伝えします!
最初はすごい暗いから覚悟して見てね
韓国のゴールデングローブ賞とも言われる第55回百想芸術大賞にて3冠
TV部門
- ドラマ作品賞:「マイディアミスター 私のおじさん」
- 脚本賞:パク・ヘヨン
- 人気賞:イ・ジウン(IU)
その他授賞式でも多数受賞
『マイディアミスター 私のおじさん』あらすじと作品情報
放送局 / 放送日 | tvN / 2018.03.21. ~ 2018.05.17. |
---|---|
最高視聴率 | 7.4% |
話数 / 年齢制限 | 16話 / 16+ |
原題 | 나의 아저씨(私のおじさん) |
脚本 | パク・ヘヨン |
監督 | キム・ウォンソク |
キャスト | イ・ソンギュン、イ・ジウン(IU)、パク・ホサン、ソン・セビョク、イ・ジア、チャン・ギヨン、キム・ヨンミン |
簡単なあらすじ | 人生が辛くても耐えながら生きてきた40代の男性と、今までなんとか生きてきた21歳の女性が、お互いを通して癒されていくヒューマンドラマ |
演出は、『トキメキ☆成均館スキャンダル』、『ミセン-未生-』、『シグナル』、『アスダル年代記』のキム・ウォンソク監督。
では、さっそく感想だよ!
『マイディアミスター 私のおじさん』感想:ネタバレなし
とにかく最初はガマンだ!と聞いてはいたものの、ホントに暗いし見ているのもツラい…
(演じた俳優たちも、深夜シーンが多く、話があまりにも暗いので感情や体力の消耗も激しかったよう)
こっちまで陰鬱になり、7話でジアンが初めて笑うまで、演じたIU(アイユー)が本当に嫌いになるところでした笑
サスペンス的な要素が動き出し、おもしろくなってきた頃には、もう次を見ずにはいられません。
そしてだんだん人間味が出てきて、今まで自分を縛り付けていた糸が1本1本ほどけていくように、ゆっくり少しずつ心がほどけていくんです。
1人で感情を殺して耐えていたジアンの心が、おじさんの言葉でほぐれていく。
ジアンが胸の内にしまい込んでいた感情があふれ出した時には、もうこっちも涙が…。
そして温かいんですよね。おじさんたちが。
世間的にはダメダメかもしれないけど、もがきながらも家族や仲間を想って誠実に生きている。
特に最後は涙で心を洗い、声をあげて感情を出し、また一歩踏み出していく。
生きづらい世の中や理不尽な社会は変わらないけど、人生に行き詰まっても「たいしたことない」と前に進める勇気をくれるドラマ。
正直、華々しい展開があるわけでもなく、多くのドラマにあるような特別な主人公でもなく、本当に普通の人たちが繰り広げる話なので、地味といえば地味。
でもそれがリアルで、心に染みます。
どんな人にもそれぞれの事情があって、人知れぬ苦労がある。
そんな他人に知られたくない恥部や、押し殺してきた自分の気持ちも、このドラマを通していやされ、浄化されていく感じ。
うまく言い表せないけど、どんな状況であっても肩ひじ張らずに幸せになる生き方、生きる力をそっと教えてくれたようなドラマでした。
なぜこれだけ多くの人の心を掴むのか納得。
視線や表情、一言一言に感情がのってて、描写がとてもうまく、丁寧だし、地味な作品だけど演じるキャストも最高、OSTも最高。
もし1人でツラさに耐えてる人がいたら、ぜひ見てほしいドラマです。
最終回はきっと100%の人が涙するはず
鑑賞ポイントと秘話
IUの衝撃的な演技力の裏にある生い立ち
韓国で”国民の妹”と言われていたほど愛されているIUは、歌唱力も抜群の国民的歌姫であり、作詞作曲プロデュースも手掛けるシンガーソングライター。
それだけでもすごいのに、演技もうまい!!!
特にこの『マイディアミスター 私のおじさん』では、コン・ユも「IUの演技がうますぎて衝撃的だった」と話すほどの演技力。
『プロデューサー』『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』『ホテルデルーナ』などで見せてきた華やかさは全くなく、本当に地味で自分の殻にこもったイ・ジアンそのものでした。
ジアンの設定が特殊ではあるものの、この感情を演じられるIUはいったいどんな経験をしてきたんだろうと思うほど。
実はIUも貧しさで苦労し、祖母と暮らしていた過去があるんです。(IUがある番組で話した話)
母親が保証人になっていたがために、逃げた親戚の借金を背負うことになり、家も差し押さえられ、一家バラバラに。両親と離れ、祖母と暮らすことになったんですが、約1年間ゴキブリがよく出る一間の部屋で、ジャガイモで食事をしのいでいたそう。
その後、他の親戚の家で世話になって暮らすようになったある夜、酒を飲んで帰ってきた親戚がIUと弟、祖母が寝ているのを見て、「まだいるのか」「誰でも芸能人になれると思ってんのか」「子供が勉強もしないで歌ばかり歌いやがって」「こいつが歌手になる前に俺が百万長者になるわ」などの暴言をIUは寝たふりをして聞き、必ず成功してみせると心に誓ったとのこと。
それから20回以上ものオーディションを受け続けるも不合格。やっと練習生になった後にも詐欺にあってしまう。お金を出せばトレーニングをしてテレビ出演させてくれるという言葉を信じて送ったお金は、祖母がアクセサリーを売ってなんとか準備したものだったそう…。
そんな試練を乗り越えて、15歳で正式デビュー。
こうした境遇が『マイディアミスター 私のおじさん』のイ・ジアンとけっこう重なっているんですよね。
しかも、IUは演技をする時は本名のイ・ジウンで活動しているんですが、演じた役名もイ・ジアンと似ているのもあり、自然と自分の過去も投影して、経験が演技に生かされているはず。(きっとイヤでも思い出しちゃうよ…)
そんなIUだからこそ最終回の祖母との演技ができるんですよね。
それにしても本当に歌手になり、今でも大活躍しているIUは、才能はもちろんだけど努力家ですごい!!
しかも自分が苦労した経験から、経済的に困難な人たち、災害や事故の被害者たちに多くの寄付をしているので、韓国では”寄付天使”とも呼ばれています。
IUはホントにすごいなあ
血縁・地縁・学縁が強い リアルな韓国の人間模様
私は韓国に住んでいるんですが、韓国人の夫がドンフンと同じように男三兄弟のせいか(性格は違うけど)、本当にこの家族のやり取りの細かいところまで超リアルなのにビックリ!!
息子をいつも心配したり、おかずをたくさん作ってくれたりする義母もそっくりだし、結婚後も夫の実家によく集まることが居心地悪いドンフンの妻の気持ちもちょっとわかります…。
それに家族の絆がすごく、おせっかいなほどにお互い干渉するようなところがあるんですが、それも愛情ゆえ。
出身地や出身校などの人脈も強く、儒教社会のせいか先輩後輩などの上下もはっきりしていますが、一度その輪の中に入ったら何があっても味方になってくれるようなところがあるんです。
ドンフンの地元、後渓(フゲ)の人たちの温かさにいやされた人も多いと思いますが、ホントあんな感じ。
夫の友達や同僚たちに一度会っただけでも、私が日本人だろうが何だろうが、夫の妻というだけで「何かあったら言ってくれ」ともう味方になってくれるんです。
ドンフンがひどく殴られたのを見て、理由も相手もわからずに仕返しをしようとしたり、ドンフンの部下というだけでジアンを輪の中に入れてくれたように。
多少の誇張はあったとしても(いやあんまりないかも…?実際に大声あげたり、ケンカしたりするのを見てビビることがあるし…)、
そうした韓国ならではの情の深い人間関係がよく描かれていて、演じる俳優たちの演技力も相まってとてもよかったです。
豪華で実力派の名キャスト
IUの演技力もさながら、このドラマに登場するキャストは実力派ばかりで、その後も多くのヒット作に恵まれて大出世しているんです!
イ・ソンギュン
ジアンをほっておけずに見守ってくれるパク・ドンフンを演じたイ・ソンギュン。
特徴的な声なので韓国ではよくモノマネされていますが笑、今回はジアンがずっと声を聞くことになるので、この声のよさが活かされていましたよね。
ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族(2019)』では成功したIT企業の社長役でした。
パク・ホサン、ソン・セビョク
ドンフンの兄を演じたパク・ホサン(写真左)はどの作品でも味がある役で印象に残ります。
個人的には『刑務所のルールブック(2017)』のイメージが強いんですが、『人間レッスン(2020)』、『ペントハウス3(2021)』、映画『楽園の夜(2021)』などひっぱりだこです。
ドンフンの弟を演じたソン・セビョク(写真右)は『母なる証明(2009)』など映画中心に活動していましたが、今回初めてのドラマ出演、その後『憑依 ~殺人鬼を追え~(2019)』では主演を演じています。
イ・ジア
ドンフンの妻を演じたイ・ジアは2020-2021年に韓国で大ブームになった『ペントハウス(2020-2021)』のまさに主人公で大活躍。
かなりドロドロで狂気なサスペンス復讐劇なんですが、舞台や衣装が洗練されていてシリーズ1~3まで高視聴率をキープ。
チャン・ギヨン
ジアンにお金の取り立てにくるイ・グァンイルを演じたチャン・ギヨン。
ソン・ヘギョの3年ぶりのドラマで話題になった『今、別れの途中です(2021-2022)』では相手役で主役を演じ、大出世!
その後、兵役で軍隊に入隊。
キム・ヨンミン
ドンフンの後輩で会社社長を演じたキム・ヨンミン。
みなさんご存知の『愛の不時着(2019-2020)』では北朝鮮で盗聴する役でしたね。
その他、韓国で大ブームになった『夫婦の世界(2020)』でも活躍し、一気に知名度アップしました。
クォン・ナラ、チョン・ヨンジュ
ドンフンの弟の映画のせいで傷を負った女優を演じたのがクォン・ナラ(写真左)。
ご存知『梨泰院クラス(2020)』でセロイの初恋相手でしたね。
もとはアイドルグループ”HELLOVENUS”の出身ですが、今は女優に転向、『不可殺(2021-2022)』でも主役を演じています。
ドンフンの兄の妻を演じたチョン・ヨンジュ(写真右)は現役のミュージカル俳優でありながら、個性的な役で『熱血司祭(2019)』や『ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です(2021)』など映画やドラマでも活躍中。
パク・ヘジュン
ドンフンの学生時代からの友達を演じたパク・ヘジュン。
韓国では『愛の不時着』や『梨泰院クラス』以上に一大センセーションを起こした『夫婦の世界(2020)』で強烈な主役を演じ、いまだに彼の顔を見ると反射的にその役が浮かんでしまうほどのインパクトでした。
(でも、ドラマによって演技が全く違うのがすごいところ)
オ・ナラ
後渓(フゲ)で飲み屋をやっているジョンヒを演じたのがオ・ナラ(手をあげてる女性)。
韓国で社会現象にもなった『SKYキャッスル(2018-2019)』で大ブレイク、これまた中毒性のあるドラマで見始めたら大変です…。
コ・ドゥシム
ドンフンの母を演じたコ・ドゥシムは数多くのドラマや映画で母親役を演じていますが、
ドンフンを演じたイ・ソンギュンが、亡くなった自分の母親を思い出したとインタビューで話していたように、本当にザ・韓国のお母さんって感じでした。
中でも印象的だったのが、日本ではあまり知られていませんが、韓国では2019年最高のドラマと言われる『椿の花咲く頃(2019)』
こちらも泣けます…。
まだ他にもいるけど書ききれないよ~
最後に:OSTも忘れられない『マイディアミスター 私のおじさん』
実はあの坂本龍一さんも『マイディアミスター 私のおじさん』がめちゃくちゃ好きで2巡したんだそう。
しかもラジオでこのドラマの象徴ともいえるOSTを「これを聴くと涙ちょちょぎれる」って紹介してくれたことがありました。
『Sondia / 어른 (Grown Ups)』
”一人疲れた一日の終わりに落とす涙 私はどこに向かっているのだろう”と始まる歌詞はドラマのジアンの心情そのもの。
ドラマを見た人なら坂本教授のように、聴いただけで反射でウルっときちゃうほどの力があって、本当にいいんですよ曲が。
まだドラマを見てない方はこのMVでかなり雰囲気がわかりますよ。
生きづらい時、やりきれない時はこのドラマ!